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9mの攻め幅に8.5mの操作性。北村憲一さんオススメの鮎竿8.8mの実力とは?
2023年のアユ釣りシーズンも終盤戦。
これからは、海産遡上アユを中心とした、後半型の河川が面白くなってくる時期だ。
すでにほぼ終盤となっている河川もあれば「まだまだこれからが面白くなってくる」と、10月まで十分に楽しめる河川もあって、ひと口に終盤戦…では片付けることはできない。
さて、アユ釣りでもっともアングラーが注目するのはやはり竿。
釣り場や自分に合った調子、長さのアユ竿が手にしっくりくれば、強い味方になるし、こなければ違和感のあるまま釣りを続けることにもなる。
アユ竿の長さでは、古くは9m、10mと長めの竿が流行した時代もあったが、現在は9m竿の支持者も多いながら、8.5mと短めの竿を愛用する人も多くなっている。
短めの竿が好まれる理由は、やはり軽さ。
それに軽さからくる操作性の高さだろう。
トーナメントなどの競技会はもちろん、通常の釣りでも繊細な攻め方が必要で、ガツーンと目印がぶっ飛ぶような激しいアタリを出してくれるアユが少なくなってきている近年。
オトリアユの繊細な操作と小さな反応をしっかりと識別するには、感度と操作性は重要なファクターである。
磯の大型尾長グレ釣りや、口太グレをメインとしたトーナメントなどでも活躍し、アユ釣りでもトーナメントで上位入賞常連者である、がまかつテクニカルインストラクターの北村憲一さんが愛用するのが8.8mという長さのアユ竿である。
今回はテレビ大阪系列で毎週土曜日の朝6時50分から放送されている釣り番組「フィッシングDAYS」のロケで、北村さんが高知・仁淀川のアユを8.8m竿で完全攻略するロケを敢行。
その中で、8.8mという中間サイズの竿を愛用するワケを説明してもらった。
近年、アユ釣りでは徐々に短い竿が好まれるようになってきた
仁淀ブルーで有名な高知県の一級河川だ
時代はショートながら、ほんの少し届かない…を克服する
「現在のアユ竿の主流といえば8.5mだと思うんです。もちろん9mクラスの竿を使用している人も数多くいます。古くはアユ竿といえば10mから9.5mそして9mへと短くなってきた歴史があります」と北村さんが話すように、アユ竿は年々短いタイプが好まれるようになってきた。
本来、他の釣りとは比べ物にならない長さであるアユ竿に関しては「軽量化」が業界の宿命であったかのように、競って軽量化が競われ、その結果、非常なまでの軽量化に成功してきた歴史がある。
長さを考えると、10mや9mでも十分に軽いのだが、その軽量化に慣れてきたアングラーにとっては、10mよりも9.5m、そして9mから8.5mといわば、50cm単位で短い竿を使うことによって、さらなる軽量竿の使用に慣れてきている感がある。
北村さん曰く「9mの竿を使っていて、8.5mを使い始めるとやはりその軽さ、そして軽さからくる操作性の高さゆえ、川幅が広いなど、少し長さ的に足りないシーンに出くわしても、9mには戻れない…というのが本音でしょうね」。
特に競技会などの場面では、竿を替えて仕掛けを張り替えるといった時間ロスは、致命的である。
「そんな場面でも9mクラスの攻め幅を持っている軽量な竿が欲しかったんです。ただ、8.5mクラスの軽さ、操作感は欲しい。そこで、考えたのが8.8mという中間サイズの竿です」と話す北村さん。
普通に8.8mというだけでは、逆に「帯に短したすきに長し」といったすべてが中途半端になってしまう危惧も出てくる。
8.8m竿を使う最大の目的としては「9m竿の攻め幅」と「8.5m竿の軽さと操作性の高さ」を両立させることで、いいとこ取りの竿を使えること。
そこで、竿交換などが容易にできない競技会をメインに考え、穂先周辺の軽量化を図り、持ち重り感を徹底的になくしたのが「がま鮎 競技 GTI Ⅱ 引抜早瀬」シリーズの8.8mだ。
がま鮎 競技 GTI Ⅱ
引抜早瀬8.8
アユ竿、特に競技会向けの竿としては、8.8mタイプで希望小売価格が17万円台と、かなりコストパフォーマンスに優れた竿だ。
重量も8.8mで208gと軽量化にも成功し「競技に取り組もうと考えている人にとっては最高の相棒になり得る竿」と北村さんも太鼓判を押す。
人為的プレッシャーが激高! 渇水の高知県・仁淀川で見た8.8m竿の実力
今回、番組ロケで訪れたのは高知県・仁淀川。
実は今季、四国の河川は釣況が芳しくない河川が多く、降雨量の少なさも手伝って、各河川ともに高水温に悩まされていた。
そんな中、唯一ともいえる釣果が出ていたのが仁淀川だった。
そんな状況はアユ釣り師全般に知れ渡り「他が釣れていないから」ということもあって、仁淀川には連日アユ釣り師が押し寄せていた。
もちろん各ポイントでの人為的プレッシャーも高くなり、多少は水位も安定しているとはいえ、雨が少ないゆえの渇水状態は否めない。
一筋縄ではいかない警戒心の高さを持つアユをどう攻略するのか…が焦点となった。
当日、北村さんがチョイスしたのは、仁淀川でも下流部に当たる通称「JR鉄橋下」。
JR土讃線の高架がある下流部は、鏡のような瀬肩から、白い泡のやや緩やかな瀬が続き、その下流はやや水深のある瀬の開きからトロ場へとつながる。
当日のポイント、通称JR鉄橋下
瀬部分で、川の流れは3つに分かれ、中央部がもっとも押しが強そうな流れとなっている。
北村さんは「狙いのメインは中央の流れと思います。その上流部からゆっくりと幅広く探っていきたいと思います」と瀬の上流に入って釣りをスタート。
ただ、仁淀川のアユは「朝寝坊さん」で釣れだしが遅いのは知られるところだ。
当日も瀬の上流部ではなかなか反応がなく、苦戦を強いられていた。
狙ったポイントを繊細に丹念に攻め続ける北村さん
徐々にポイントを下げていき、白い泡の中でオトリをピタリと静かに止めて待つ。
そんな安定したオトリ操作を強みにできるのが、8.8mの竿でもあるという。
川幅の広いこのポイントにおいても、警戒心の強いアユに対して比較的距離を置いてオトリを泳がせることができる。
これが9mクラスの攻め幅となっていた。
軽量化された穂先で、安定のオトリ操作ができるように
また、警戒心が強く追いが弱いアユに対して、オトリアユを狙った石の横や上でピタリと止めたり、やや引き気味に上げてみたり…と、狙った石、野アユへの正確なアプローチが見事に決まっていた。
構えた竿の安定感は、やや強い風が吹いてもまったくブレることがない感じだ。
また、オトリを送り込む際、ステイさせたり引き上げる際には、短さを微塵も感じさせないのが8.8mという長さなのだ…と実感した。
小鈎&短ハリスで警戒心の強い野アユを完全攻略
ほどなく目印に変化があり「掛かった」と思った瞬間にケラレが発生。
そして、同じポイントで1尾は掛けたものの、再びケラレ、そして空中バレ…。
朝日の中、ようやく1尾目が掛かったが…
「野アユの活性が低いのでかなり掛かりが悪いですね」と北村さんが状況に合わせる。
具体的には、普段はあまり使わない小鈎を選択。
それまでの「要R 6.5号」から、「MシステムEX 5号」へ変更。
当日使用した2タイプの掛け鈎
がまかつ(Gamakatsu) OP(ワンデイパック) G-HARD V2 MシステムEX マイクロ 3本錨 5号数 60159
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そしてもう1つはハリスの長さ。
「通常、掛け鈎はオトリの尻尾から指の幅で2、3本出します。今はこれでケラレや掛かっても口掛かりが多いようなので、絡みのよい軟らかいハリスで、長さとしてはオトリの尻尾とトントンか、長くても指の幅1本くらい出す程度にしました」と北村さん。
変更の理由としては、やはり警戒心が強く追いが弱いので、警戒心を解くために小鈎を使用する。
そして、攻撃力のあまり高くない野アユに対しては、オトリに絡みつくような当たり方に対処するためにハリスを短くした。
この変更で、次は反応があっても、しっかりと鈎掛かりしたのを確認するまで待ってから竿を立ててやり取りに入る…という作戦だ。
これがピタリとハマり、北村さんの入れ掛かり劇場が始まった。
パターンが決まり、入れ掛かりとなってきた
朝のうちは白い泡の中、そして日が高くなるにつれて、朝には反応がなかった瀬の上流エリアでもどんどん竿が曲がる。
入れ掛かりで北村さんに笑顔が戻った
8.8mの竿を使った繊細で丹念な攻めと、競技タイプならではの取り込みにかかる時間の短縮もあり、午前中だけで40尾近いアユを掛けていた。
●交通:高知自動車道いのICで降り、国道33号バイパスを西進。
天神ICで降りて突き当たりを右折し、県道36号を仁淀川沿いに上流へ。
※当日の様子は、youtubeフィッシングDAYS「清流で入れ掛かり 高知仁淀川 盛期のアユ」https://youtu.be/VWI2_-rhDqQで視聴できます。
(文・写真/松村計吾)
清流で入れ掛かり 高知仁淀川 盛期のアユ
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ライター紹介
松村計吾
大学で水産無脊椎動物の研究を経て、釣り出版社に入社後、30年以上釣り雑誌や釣り情報紙の編集を手掛ける。取材などで釣りの現場に出ることはもちろん、休日などのプライベートでも常に釣りシーンにハマっている。得意な釣りは船のテンヤタチウオ、カワハギ、エギング、イカメタルなどだが、日本全国を飛び回りあらゆる釣りを経験。ちなみの甲子園の年間シートも所持。甲子園でのビール消費量も球界一とか・・・。