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これだけは知っておきたい海上釣り堀でタイやブリを釣るためのベーシックテクニック
ファミリー、ベテランを問わず大人気なのが、海上釣り堀。
マダイとブリを中心に、高級魚が身近なフィールドで高確率で釣れる一方、ひとたびスレてしまえば、ベテランでも攻略するのが困難なほど難易度が上がる奥深さをあわせもつフィールド。
そんな海上釣り堀にどっぷりはまって、かれこれ20年という大ベテランのがまかつフィールドテスター・林に海上釣り堀の攻略法を解説してもらおう。
目次
林賢治
投げ釣り、磯釣りの名手ながら、海上釣り堀の奥深さに魅せられて通い続け20年以上になる。
繊細な釣りが得意で、林が生み出した海上釣り堀の攻略法は数多い。
がまかつ、マルキユーフィールドテスター。
深い水深が海上釣り堀の攻略の難易度をあげている
「ベーシックというものが確かにありますが、季節や釣り堀ごとのクセ、魚種ごとの攻略法など、突き詰めればキリがないほど複雑です。すべてを1度で紹介するのは難しいですが、これさえ知っていれば海上釣り堀の中級者以上になれるというベーシックを紹介します」
海上釣堀の水深は、岸釣りにしては全般的に水深が深い。
特に今回訪れたフィッシングランド日向(ひるが)はかなり深めのエリアで、水深10mよりも深く、中には15m前後のエリアもある。
そんな中で魚の釣りやすい層はどのように絞ったらいいのだろうか?
「水温の高い夏は釣りやすいというか、絞りやすいですよ。魚は底にいます。宙層、上層の水温が暑すぎるので、水温の低い底に溜まっているんですよ。春は魚のタナが3mとか、上の水が温まりやすいので上のほうで釣れます。まだ、絞りやすいですね。難しいのは水温がちょうどいい時期です。秋になると水深15mある場所で、魚が8mで食ったりするとタナを絞りにくい」
釣り場に着いて真っ先にやることは、タナを取ること。
林は、自分の立つ目の前のネット際と竿の真下になる沖。
そして、この日は貸し切りマスであったため、両サイドのタナも測っていた。
「こういったカウンター付きのリールで、それぞれの水深を測り、頭に入れておきます」
底近辺は、魚がスレてきた時に釣れる最後のタナになるのだが、底は網目のネットになっているので、適当に攻めるとハリがネットに掛かったり、網目を抜けて仕掛けが外に出たり、根掛かりした仕掛けに絡んだりとろくなことがない。
「この釣り座は、手前が10.8m、沖が14.1mです。沖を攻める場合、だいたい11mから50㎝、1m刻みでタナを深くしていきますが、いよいよとなれば14m、つまり底から10㎝上までは攻めます」
ただし、厳密には14.1mではないと林は言う。
「リールの機種によって、このカウンターの作りが違うので、純粋な14.1mではないかもしれない。ですので、自分の持っているリールで必ず底取りをする必要があります」
ミャク釣り用の2本で底を取った後に、青物のタックルでも底取りを行う。
こちらはスピニングリールなので、カウンター機能はない。
「2つのウキ止め糸をセットしてありますが、上側は水深とちょうどの深さにしておいて、ウキに近い側が攻めたい場所のタナにセットします」
タイは底付近だが、ブリ・ワラサは底から1m程度上を狙う。
「エサが泳ぎ回るので、すり鉢状の釣り堀では底ギリギリでアジを泳がせるというのは現実的ではないです。根掛かりしたり、ネットの目を潜り抜けたりしやすい。それにタイよりも青物は浮いている傾向があります」
青物タックルに用いられるPEラインは、ウキ止め糸が滑りやすく、釣りをしている最中に動いてしまうこともあるので、たまに水深を測り直すことも必要となる。
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たとえ青物を釣りたくとも、朝一はタイを釣りきる
取材のオーダーは青物とタイを釣ること。
タイはともかく、青物を確実に釣るというのは、かなりハードルが高い。
開始と同時に青物を狙うかと思いきや、林が手にしたのはミャク釣り仕掛け用の竿。
タイをはじめ、イサキやシマアジを狙う繊細な竿だ。
「マダイの活性が高いうちは、マダイを釣りきってしまいます。マダイがおとなしくならないと、青物は口を使いづらいんですよ」
エサはダンゴエサ。
茶色と黄色の2種類を用意している。
まずは茶色。
「マダイストロングの茶色は、黄色よりも少し硬く比重も重いです。ですので、ハリに付けやすくて早く沈みます。その分、早い攻めが可能です」
まず、活性の高い朝のマダイを少しでも早く、1尾でも多く釣る。
タナに到達するや、穂先が揺れ、強いアワセとともにファイトが始まった。
本日のファーストフィッシュである。
手早く取り込み、次の1投。
「朝の時合いがある釣り堀は、できるだけ手返しよく朝の時合いで数を伸ばしておきます」
茶色のダンゴエサ2粒を手に取り1つにまとめ、涙型に成形しハリ付けしている。次々とマダイを仕留める林。
ハリの上20㎝に1号のオモリを打ち、ウキも何も付けないシンプルなミャク釣り仕掛け。
その1号のオモリを1.5号に替える。
アタリの出方から高活性と判断し、さらなる早い攻めを試す。
だが、アタリが遠のく。
「オモリは軽くするほど、フォールスピードがゆっくりになります。
0.5号やオモリを使わないノーシンカーまでやりますが、活性が高い時間帯は、そこまでやる必要はないです。むしろ、少しでも早くタナに到達させたほうがいい。ただ、1.5号は嫌われていますね」
オモリを1号に戻す。
ここで糸をリールには巻き込まず、長く出しておいて、沖に手で投げるという動作を繰り出す林。
何か意味があるのだろうか?
「今は足元の壁や竿の真下にいる魚をひとしきり釣ったタイミングです。より広く仕掛けの入っていない場所の魚を連れてくるために、水深分の糸を出しておいてキャストすることで遠くの魚を連れてくることができます」
キャストした仕掛けは、カーブフォールする形で竿の真下までやってくる。
その分、遠くの魚にアピールし、おびき寄せることができる。
遠のいていたアタリが、また出始めた。
ウキ釣りとミャク釣りの違いとミャク釣りの優位性
林の仕掛けにはウキが付いていない。
少なくともタイを狙う場合には、ウキは使わないという。
その理由として、こまめにタナを微調整し、また、誘いやすく、送り込んだりする操作がしやすいためだ。
それゆえ、林は竿を動かしている時間が長い。
常に上下しているかのような印象を受ける。
例えば12mのタナを狙う場合には、11mまですばやく落とす。
この時、竿を立てておけば、立てた竿を1mゆっくり下げることで、スローフォールを演出できる。
「その落とし方も、スピードを調整したり、50㎝落として止め、食わなければもう50㎝落とすとか、ウキがないことで自在にコントロールできるわけです。使える技の種類が増えるというか」
ウキのメリットがあるとすれば、竿の長さよりも明らかに沖を探りたい場合にエサを沖に固定できることだろうか。
アタリがなければ、ゆっくりと誘いあげて落とし直す。
ひとつのタナで止めておく時間はせいぜい1分。
「海上釣堀の魚は、ともかく落ちてくるエサに敏感に反応します。その落ちてくるさまをいかように演出するかが、攻略の要(かなめ)であり、面白みでもあるんです。これがウキだとエサがひとつのタナに固定されてしまうので、ミャク釣りに比べてチャンスが少なくなります」
用意すべき釣りエサの種類とチェンジのタイミング
釣りあげたマダイが10尾を超えた頃、それまでの力強く竿先を引き込んでいたアタリではなく、ツツッという警戒しているような、触っただけのアタリが出た。
その瞬間を逃さずアワせたのだが、ロッドは空を切った。
「茶色のダンゴを見切られましたね。黄色のダンゴにしましょう」
できるだけできる限りダンゴで押し通す。
茶色で釣れるだけ釣りきって、次は黄色。
色、比重、触感が異なるダンゴを入れることでアタリが出る。
ところが、この日は黄色のダンゴに変更しても無反応であった。
再び茶色に戻し、シビアなアタリを乗せるも続かない。
林の持ち込んだエサは、練り餌2種類、むきエビ、ささみ、プチトマト、イワシ、魚の切り身、キビナゴ、イソメ、シラサエビ、テナガエビ、カタクチイワシと多彩。
青物の泳がせ用にアジ、サバ、ウグイも用意している。
技術ももちろん大事だが、用意するエサの種類も海上釣り堀においては強力な武器になる。
その中から次の一手に選んだのは、鳥のササミ。
「一番最高のエサはシラサエビ。アオイソメも有効。ようは活き餌が最高なんだけれども、最初からシラサエビを入れてしまうとダンゴでも十分に釣れる高活性の魚を釣ってしまうことになって、そのあとに打つ手がなくなってしまう」
このササミも、肉の筋切りで柔らかくして黄色の液体に浸けてある(つけ込みにこれだ!!ソフト【マルキユー】)。
「柔らかくすることで、食い込みがよくなる」
ダンゴで消えたアタリが復活し、再びマダイが連発し始めた。
もちろん朝ほどの勢いはない。
また、アタリが遠のくのも早い。
「シラサエビにチェンジして、さらに深追いしてもいいんですが、青物を狙ってみましょうか」
アジのヒレをカットし、泳ぐスピードとタナを制御する
青物の放流が行われる前に、青物を1尾釣っておきたい。
直近で実績が高かったという、死んだイワシの1尾掛けを投入する。
「アタらないなぁ」
エサを投入して、2分かそこいらしか経っていないにもかかわらず、林は見切りをつける。
「例えばアジを置き竿にして泳がせていて、1時間後に食ったとか、そういうことは起きづらい」
食う時はすぐに食うし、食わないまでも反応があるという。
食わないのであれば、何かがずれているので、待つのではなく、手を変える。
タナをいじるか、エサを替えるか、エサに工夫を施すか、仕掛けを換えるか。
林はアジの泳がせ釣りに切り換えた。
「生まれながらにしてフィッシュイーターなブリですが、常食しているのはペレットなわけです。そうすると本能でアジを追いかけ、食いつきはするんですが、食い慣れてはいない。どういうことが起きるかというと、追い切れなくて見切られてしまう」
アジの逃げるスピードが早すぎて追いきれない。
追いつけさえすれば、口を使うケースは意外に多い。
そこで、このアジの泳ぐスピードを制御する方法がある。
「尾ビレをカットします。そうすると上手に泳ぐことができなくなります。養殖の青物にはこれくらいがちょうどいい」
さらに裏技として、胸ビレをカットする方法もある。
これでアジの上下動も抑え、いよいよ逃げる範囲を狭めることができる。
「尾ビレは横方向の動き、胸ビレは上下方向の動き。スピードを抑えてもアジの逃げるほうが勝っている場合は、胸ビレをカットする。僕らがダルマと呼んでいる状態です」
アジを投入してすぐにウキがピコピコと動く。
「このウキの動きはアジが逃げているためにウキが動いている。これくらい激しくウキに反応が現れている場合は、アジに対して青物が反応している証拠です。食いそうですね」
ウキが時折動くのだが、勢いよく消し込むことはない。
「これは追いきれない感じですね。しかも、縦の動きというよりは、横方向のスピードについていけていない。胸ビレのカットではなく、泳ぎ回る距離を抑制する方法を試してみましょうか」
ウキを外し、サバの20㎝上にオモリをつけた。
アジの場合は5~8号のオモリを使う。
泳ぎの弱いウグイなら3号で十分。
「こうすることでオモリを中心に半径20㎝しか自由に動けなくなります」
タナは合っていて、活きアジに興味を示している。
追いはある。
だが、口を使わせられない。
その原因がアジの逃げる距離にあるところまで突き止めての一手である。
投入するや穂先が上下し、青物に追われていることが分かる。
その穂先が、ピンッと上に弾けた瞬間にズドッと絞り込む強烈なアタリ。
「ほら、食った」
上がってきたのは、カンパチだった。
その後もウグイやサバを試すが、ヒットまでは至らなかった。
「このまま青物を狙っても可能性は低いですね。こういう時は他の魚を釣ってマスの中の魚の活性を上げることによって、つられて青物の活性も上げるという方法があります」
釣れない時の必殺技、黄色いミニトマトとシラサエビ
全体の活性を上げるべくタイ狙いにチェンジ。
ミニトマトという意外なエサを投入した。
赤と黄色を用意していて、半分に割ってハリに刺す。
さすがに野菜は食わないのでは、と疑ってみていたのだが、穂先に動きがある。
確かに魚はトマトに興味があるようだ。
やがてトマトエサでタイが釣れる。
1尾、2尾、3尾。
アタリの感覚は空いているものの、確実に釣果が伸びる。
「トマトは他のエサでダメな時にもアタリが出るんですよ。黄色がいい日と赤がいい日があります。半分に割るのは、空気で浮くのを防ぐためです」
ミニトマトがひと段したところで、いよいよシラサエビを投入。
シラサエビ?
「あぁ、これはテナガエビですね。釣具屋さんが『林さん、大きいほうが好きでしょ』って入れてくれたんですよ。僕は大きいほうが好きです。テナガエビは積極的に使いますよ」
確かにシラサエビでもアタリが出て、釣果はあるものの、活き餌の威力としてはイマイチ。
「夏バテかな。シラサエビの殻の硬さを嫌っているような食い方ですね。シブいというか、アタリが細かい。食い込まないというか」
青物放流があったら逃さず青物を狙う
ここで青物の放流があった。
すかさず青物タックルに持ち替え、アジを投入した。
仕掛けがなじむやすぐにウキが消し込まれる。
「放流は最高のチャンス。これを逃すと青物は厳しくなる。確実に1尾は仕留めたいところ。マスに放流されたブリの数だけ釣るというのが1つの目標で、釣り損じた場合は貯金したと僕は呼んでいます」
が、この1尾で青物のアタリは途絶えた。
アオイソメ、短く切り房掛けにして臭いで誘うか、長さのシルエットで誘うか
満を持して、なのかアオイソメを投入する。
「アオイソメはそのまま長く付ける場合は動きでアピールして誘う場合ですね。そういう付け方もしますが、基本は、短くカットして房掛けにします。そのほうがエキスがたくさん出るので、アミノ酸に反応してバイトさせることができます」
このアオイソメにシマアジがバイトしてきた。
「最終手段としては、シラサエビのノーシンカーになるんですが、ノーシンカーで13m沈めるというのは現実的ではありません。そこで、どうするかというと、付けエサはシラサエビ、ハリスにダンゴエサを付ける。このダンゴエサで落としてやって、ダンゴが落ちると、ハリにシラサエビが付いた状態でタナに入れることができます」
これで食わなくなったら、いよいよ打つ手がなくなる。
「いえいえ、まだ引き出しの数はいくつかありますが、全部一度に紹介しても消化しきれないでしょうから。今回は、これくらいにしておきます」