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シーズン初期の秋磯攻略。久保野孝太郎流磯グレ釣果倍増計画
初めての磯でグレ釣りをスタートする時、アナタはどんな仕掛け、タナで始めますか?
グレが食ってくるに至る道筋を遠回りすれば釣果を得るまでに時間がかかるし、近道をすればヒットまでの時間が短く、その先の作戦を実行もできる。
テレビ大阪系列で毎週土曜日朝6時50分から放送されている釣り番組「フィッシングDAYS」では、G杯争奪全日本がま磯(グレ)選手権の覇者である、がまかつテクニカルインストラクターの猪熊博之さん&久保野孝太郎さんが、シーズン初期の磯グレ攻略術を公開。
長崎県上五島の「黒母瀬のマナイタ」で収録された今回の模様は2週連続で放送され、1回目は前編として猪熊博之さんのグレ攻略術に焦点を当てたが、後編となる今回は、久保野孝太郎さんの釣りを紹介。
舞台となった黒母瀬のマナイタでは、マキ餌に30~40cmの中型グレ、イサキ、その他さまざまな魚たちが集まる状況。
そんな中で久保野さんがとった作戦は…。
目次
自分の定番から始めるグレ釣りのメリットとは?
11月初旬、長崎県宮之浦から出船して、約30分で到着したのは「黒母瀬のマナイタ」。
すぐ隣には「黒母瀬灯台」が立つ大きな磯があり、これが黒母瀬。
マナイタは黒母瀬の東隣にある低い磯である。
ロケの舞台となった黒母瀬のマナイタ。向こうに見えるのが黒母瀬
潮通しがよくグレの濃さには定評がある。
サイズ的には35㎝前後が中心となり、中に40㎝以上が混じってくる実績場だ。
猪熊さんが先に竿出しして、30~40㎝のグレの中から、見事に45㎝超の大型口太グレのキャッチに成功しているのを見ながら釣りを解説していた久保野さんが、猪熊さんより1時間ほど遅れて釣りをスタート。
今回久保野さんが使用したロッドが「がま磯 アテンダーⅢ」1.25号 5m
番組の中では久保野さんの釣りを、猪熊さんがレポートし解説するという展開となった。
久保野さんのスタートタックルは竿が「がま磯 アテンダーⅢ」1.25号5.0mに、道糸、ハリスとも1.5号、鈎には「セレクトグレ」5号をセットし、ウキ下2ヒロ。
仕掛けにはオモリを打たない。
「実は初めての釣り場を含めて、ほとんどの場合、僕はこの仕掛けでスタートします」と久保野さん。
その理由として「使い慣れた組み合わせの仕掛けを使うことで、その時々の状況が明確に分かります。前情報はいろいろと聞きますが、その通りにするのではなく、まずは自分の中で情報がゼロの状態から、慣れた仕掛けを通して伝わってくる状況の分析をすることから始めるんです」と言う。
つまり、同じ仕掛けセッティングなら潮の強さや速さ、グレを含む海中の魚の状況などがかなり効率的に分かる。
定番の仕掛けを使うことで海の状況判断が効率的におこなえる
久保野さんは、自分の定番を持つこと、その定番を使い込むことで状況判断の指標として、そこから状況に合わせた組み立てをしていくことを推奨している。
突然の尾長グレ登場!バラさないための変更点
久保野さんの釣座では右手からサラシが伸び、沖の方を通る潮に引かれていく。
沖の潮とサラシから伸びる払い出しで、30mほど沖にはきれいな潮目が出ている。
本来なら、この潮目狙いがメインとなるところだが、まずは足元に撒いたマキ餌の状況をじっくりと観察する。
足元にはエサ取りに混じって、中型グレの姿もある。
が、中にかなり大型のグレも出てきているのを発見した。
「本来なら沖の潮目狙いになるんですが、案外手前で良型グレがヒットするパターンも多いので、まずは近場を狙ってみます」とサラシの脇に仕掛けを投入した。
すぐにヒットしたのは見えている30㎝級の中型口太グレ。
何投かしたが、マキ餌を撒くほどに30㎝級のグレが乱舞し、なかなか時折見える大型グレにエサが届かない模様。
30㎝級の中型グレがここではアベレージより小さい
そこで徐々に沖の「メインポイント」へ仕掛けを近づけていく。
サラシの先に仕掛けを投入し、そのさらに沖にあるヨレへと流し込む。
すると、ウキがスーッと入って「がま磯 アテンダーⅢ」が大きく曲がった。
が、すぐにバラシ。
ハリスがチモトから切れていた。
「尾長グレですね。尾長グレが回っているとなると対処が必要ですね」と言う久保野さんだが、実はすでに海からいくつかの情報を得ていた。
それが、仕掛けがなじむかなじまないか…の速い段階でのアタリが出たことで、設定したウキ下よりも浅いタナで、しかもまずまずの尾長グレが餌を拾っているということ。
「ここで尾長グレ対策として、簡単にできるのがウキ下を浅くすることと、鈎の種類を変えることです」と言う。
具体的には「セレクトグレ」5号から、6号へのサイズアップ。
もしくは鈎の号数は同じとして尾長対応の鈎でもある「TKO」に変更する方法もある。
久保野さんが取ったのは前者で「セレクトグレ」6号へと変更し、ウキ下は1ヒロ半弱と極端に浅くした。
この変更は見事に正解となり、次にウキが入って仕留めたのは40㎝弱の尾長グレだった。
「がま磯 アテンダーⅢ」1.25号を曲げ込む
良型グレが登場
35~40㎝の良型グレ乱舞の中から45㎝超を引き出す
マキ餌が効いてくると、35~40㎝のグレが沸いてきた。
グレ釣り師にとってはワクワクする入れ喰い必至の状況だが、久保野さんの狙いはさらに大型の45㎝以上、目標としては50㎝級を仕留めたい。
そこで、良型グレをエサ取り同様かわす作戦に出た。
それは撒かれたマキ餌に対するグレの動きをじっくりと観察し、仕掛けの投入タイミングなどを変えていく。
マキ餌を縦マキにすると、足元よりも沖、さらに沖へとグレの乱舞が見えるが、狙いはその先の一見グレが見えていないエリアだ。
ここで、仕掛け投入後に久保野さんは、やや道糸に張りを持たせて流し込む。
道糸をフカせる猪熊さんとは、対照的な釣りを展開。
張りを調整して仕掛けを流し込んでいく
その理由としては「尾長グレも混じってくるので、反応を的確に効率よく分かりたいから。そうすることで尾長グレに鈎を飲まれず口に掛かる率が上がる」からだ。
この時に気をつけているのが張りの強さであるという。
「道糸を張ることで小さな反応も分かりやすくなります。ただ、張りすぎると仕掛けを引っ張ってしまい、釣りたい筋からズレることになります。いわば張りの強さのせめぎあいになるわけです」と言うが、風、波、表面流に合わせた張りの感覚は長年の経験から来る部分も多いそうだ。
微妙な張り加減で少し、仕掛けを引き戻したり、流し込んだりと繰り返し、大型グレの登場を待つ。
意外に深いタナで釣る時には気遣うアングラーも多いのだが、それは今回のような浅いウキ下で釣る場合も同じで、道糸から鈎までの張りを意識して釣ることが重要だ。
そんな張り加減を調整しながら投入点をかえていくと、サシ餌の流し方にバリエーションが生まれ、大型グレに出会う確率も上がる。
それが実証されたかのように、沖を流していた久保野さんのウキがスパッと入って「アテンダーⅢ」が満月に曲がり込んだ。
ひときわ大きく曲げ込んで寄せにかかる
久保野さんのやり取りは優しく安定している。
まったく魚が暴れる様子がない。
「大きい魚ほど釣り人が慌てて隙ができます。そんな時こそポンピングで寄せずに、竿を曲げ込むことで一定のテンションをかけた状態で寄せるのが良いです」と久保野さん。
その理由は、ポンピングするとリールで道糸を巻き取る際にハンドルを速く巻かないといけなくなり、それがバタバタとして魚が嫌がって暴れることになるからだ。
竿の角度を保ったままジワリと寄せる
竿の角度を保ってジワリと寄せることで、魚を怒らせることなく寄せることができる。
実はその釣りこそ「アテンダーⅢ」の真骨頂で、操作性こそ先調子に近いのだが、魚が掛かればこれでもかというくらいに曲がり込んで魚を怒らせないやり取りができる。
足元に浮いてきたのは45㎝超えの大型口太グレだった。
47cmの口太グレをキャッチ
理屈が分かれば面白い鈎の形状や号数の意味を考えてみよう
この日の釣りを振り返って、久保野さんが常に意識していることをいくつか挙げてもらった。
それが前述の張りの調整であったり、突然の尾長グレ登場時に瞬時に変更した鈎の選択など。
「僕も最初はいろいろな鈎があってもほとんど同じに見えていましたね。4号、5号、6号などそう使い方に違いがないんじゃないか…とか、なぜ同じように見える数多くの種類の鈎が市販されているんだろうと思ったこともありました」と振り返る。
ただ、グレ釣りを奥深く知り、勉強していくうちに鈎の重要性にも気づいたという。
鈎の違いとしては、軸の太さ、形状、鈎先の形状、全体の形状など見る部分は数多くある。
それぞれの意味合いや理屈を知ることが重要なのだという。
軸の太さが変われば沈下速度も変わるし、号数が変わればそれでも沈下速度は変わりグレの喰い込みも変わる。
鈎先の形状によっても、飲み込まれたり口元に掛かったりと変化が生まれる。
その状況を自分なりに分析して、状況判断へとつなげていくことができれば釣果は倍増するという。
鈎の種類の理屈を知れば釣果は倍増する
「鈎を変えることで、バラシが激減したり、今まで餌が取られていた状況が一変して入れ喰いになる…などの状況はよくあることです。1つの鈎を使い続けるよりも、さらに状況に合った鈎を探し合わせていくことが重要ですね」と締めくくった。
●交通:長崎自動車道の武雄JCTから西九州自動車道に入り、佐々ICから国道204号で平戸方面へ。
平戸大橋入口から平戸大橋を渡り国道383号、県道19号を経て宮之浦へ。
問い合わせ:丸銀釣りセンター(TEL:0950・29・1006)
(文・写真/松村計吾)
※当日の様子は、youtubeフィッシングDAYS「レジェンド猪熊博之が解説 久保野孝太郎上五島グレ攻略」https://youtu.be/_QPBVbRRUYoで視聴できる。
「レジェンド猪熊博之が解説 久保野孝太郎上五島グレ攻略」
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ライター紹介
松村計吾
大学で水産無脊椎動物の研究を経て、釣り出版社に入社後、30年以上釣り雑誌や釣り情報紙の編集を手掛ける。取材などで釣りの現場に出ることはもちろん、休日などのプライベートでも常に釣りシーンにハマっている。得意な釣りは船のテンヤタチウオ、カワハギ、エギング、イカメタルなどだが、日本全国を飛び回りあらゆる釣りを経験。ちなみの甲子園の年間シートも所持。甲子園でのビール消費量も球界一とか・・・。