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猪熊博之流五島グレの浅ダナ戦略。群がるエサ取りをかわし大型を狙う
寒グレの本格シーズンもいよいよ間近。
しかし、近年は水温の高い時期が長く、エサ取りや小型グレ、ゲストなどが次々に反応してくれるが、本命の良型、大型グレにたどり着きにくい状況であることは確か。
テレビ大阪系列で毎週土曜日朝6時50分から放送されている釣り番組「フィッシングDAYS」では、G杯争奪全日本がま磯(グレ)選手権の覇者である、がまかつテクニカルインストラクターの猪熊博之さん&久保野孝太郎さんが、シーズン初期の磯グレ攻略術を公開。
長崎県上五島の「黒母瀬のマナイタ」という磯で、中型グレ猛攻の中から見事に50㎝に迫る大型グレを引きずり出した圧巻のシーンを放送。
中でも猪熊さんの釣りを久保野さんが解説、逆に後半は久保野さんの釣りを猪熊さんが解説し、ともに達人の釣りを深掘りしていく内容となった。
舞台となった黒母瀬のマナイタでは、マキエに中型グレ、イサキ、その他さまざまな魚たちが集まり、タナを深くしても無意味な浅ダナオンリーの攻略となった。
そんな浅ダナでの猪熊流グレ攻略術を紹介してみたい。
目次
ロケの舞台となった黒母瀬のマナイタ。向こうに見えるのが黒母瀬
前半は久保野氏が猪熊氏の釣りを解説
浅ダナ攻略のためのキーワードは「正確さ」「フック」「ナチュラル」
今回の舞台となった上五島エリアではこの時期、グレがやや上ずり気味なことが多く、この釣り場に精通する猪熊さんは経験上、浅いタナでの釣りが圧倒的であることを認識しているという。
そこで、長いハリスにウキを入れた仕掛けで、基本となるウキ下は1~1.5ヒロに設定していた。
この仕掛けで狙うのは沖の潮目だ。
足元のマキエにはこれでもかとエサ取りたちが集まり、中には木っ端グレの姿も見える。
また、サラシから払い出す潮に乗ったマキエの先には、やはりグレが乱舞する。
グレの活性が高いのは良いことだが、見えるグレは30㎝前後で、狙いとなる40㎝超がどこで釣れるのか…といった具合。
30~35㎝のグレは良いペースで釣れ続いたが…
猪熊さんの狙いはまず、沖の潮目。
サラシから伸びる流れと、沖の潮がぶつかる典型的なヨレが発生していて「あそこしかないでしょ」と…。
当日、猪熊さんの口から出た攻略術の代表的なキーワードが、
・マキエとサシエの投入の正確さ
・鈎の種類による沈下速度の違い
・狙った潮筋から外れないナチュラルな流し込み
だった。
マキエとサシエの正確な投入こそが大型グレのポイントを作る
まず、最初のキーワードとなったのが、マキエとサシエの正確な投入術である。
その理由は…
「これだけ中型グレの活性が高い中では、適当なポイントチョイスで釣りをしていても、らちがあきません。中型グレの中から必ず大型グレが飛び出してくるピンポイントがあるはずなんです。そこを正確に攻め続けることが大型グレを引き出す近道ですね」と猪熊さん。
実は猪熊さんの仕掛け投入やマキエ打ちの正確さには昔から定評がある。
正確にマキエを打ち、しっかりと同調できる場所へ仕掛けを打ち込む。
そして、ピンポイントで良型、大型グレを引きずり出す。
正確な仕掛け投入がまず第一歩
マキエを打つポイントもしっかりと意識して同じ場所へ
自分の決めたピンポイントにマキエを打った時、海中をよく観察すると浅いタナへ踊り出してくるグレの姿が見えることがある。
見えるグレの動きをよく見て、少しでも大型のグレが出てくるタイミングと位置を素早く見極める。
狙うポイントは潮のヨレであったり、潮筋であったりと変化のあるところ。
マキエを同じ場所に打ち、仕掛けをその右、左など決めて投入することで、それぞれの反応を探り、少しでもエサが残ったり、中型グレが食ってこない場所をピンで探し出せればしめたもの。
その判断から導き出した答えに合わせるためには、マキエ、仕掛け投入もより正確さが求められる。
ちなみに、今回猪熊さんが使用していた竿は、この秋12年の時を経て発売された「がま磯アテンダーⅢ」の1.25号5.3mだったが、この竿については「仕掛けの投入時には、胴に乗る調子とは思えない張りがある」と話す。
もちろん、魚を掛ければ、がまかつの磯竿の伝統でもあるしっかり曲がり込んで粘る胴調子で、魚を怒らせることなくじわりと曲がり込んで浮かせてくれる。
がまかつ渾身ニューロッド「がま磯 アテンダーⅢ」のラインアップ
口太グレ対応号数としては、1.25~1.7号がある
猪熊さんにとっても正確な仕掛け投入には強い味方となっているようだ。
魚が見えない場合には、釣っていく時にマキエに対しての仕掛けの投入位置をきっちりと認識して、その投入ごとの反応を見ながら徐々に投入するべきピンポイントを探す。
そのためにはマキエ、仕掛けの正確な投入が必要なのだ。
小鈎を基本とする猪熊さんも時には大鈎を使う
2つめのキーワードは「フック」、つまり「鈎」である。
ロケ当日、猪熊さんのスタート鈎は「A1・TKO」の5号。
鈎先の角度や軸の太さなど、ちょうどバランスのよい鈎だが、アタリがあるのにヒットしてこない場合には「掛りすぎ口太」などの鈎先の角度が大きく刺さり込みやすい鈎に替える。
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また、サイズも4号に落とすことで、よりグレが吸い込みやすくなるので、ヒット率の向上につながる。
その話からは小鈎が万能でおすすめのようだが、ちょっと違うらしい。
「私も比較的小鈎を使うことが多いんですが、それだと小鈎一辺倒になる。アタリがあるのに乗らない…とか、そんな時に小鈎へ小鈎へとなると、どんどん小鈎ばかりになるんですが、そこで、大きめの鈎に替えた途端、良型グレがヒットするのはよくあるんです」と猪熊さん。
鈎の変更による違いは、食い込みだけではない。
大きさや種類を変えれば当然、鈎自体の沈下速度も変わる。
ということは、サシエの沈下速度にも大きな影響を与えることになる。
「そんな少しの自重の違いで、そこまで食いに影響が出るかな…」と思われる人も多いと思うが、沈下速度の違いはそのままマキエに対してグレが出てくるタイミングにも合ったり、合わなかったりする。
アタリがあるのに乗らない場合、エサ取りだけではなくグレであることも多い
ほんのちょっとした沈下速度の違いが、自然なサシエの動きを演出し、違和感なくグレに食わせることができるほか、マキエに対して反応して浅いタナへと出てくるグレに、「どこで食わせるか」という変化をもたらせ、組み立ての中で大型グレへと近づければよいのだ。
マキエとサシエがズレないナチュラルな流し込みが重要
浅ダナ攻略のラストは「ナチュラル」。
何がナチュラルなのかというと、サシエの自然な流し込みを表す言葉として猪熊さんが使う。
猪熊さんの釣りは、仕掛け投入後、道糸をあまり張らない。
特に仕掛けがなじんだら道糸をやや緩めるように調整する。
それはせっかく正確にマキエを打ち、計算したピンポイントに仕掛けを投入したにも関わらず、道糸を引いてしまうとサシエが狙いたいポイントからズレるから。
そこで、ラインをフカせることで抵抗をなくし、潮の流れに自然と流し込みながらマキエとサシエを同調させる。
仕掛けがなじんだら、あまり張りを作らず流し込むのが猪熊流
タナが深いほど仕掛けがなじむまでに時間がかかり、それまでに道糸が海水面の流れに影響を受けることが考えられるのだが、今回のようにタナが浅い場合は比較的仕掛けなじみのタイミングも早いからやりやすいはず。
特に手前にサラシなどがあって、道糸が取られるような場合には、張りを作ってしまうと、流れの影響で勝手に仕掛けが引っ張られてしまう。
そのために、ウキ&仕掛けに影響が出ないよう、かなり道糸をフカせる。
ただし、アタリがあってアワセに入る際は、道糸がフケている分、大きくアワせる必要が出てくる。
糸がフケている分、アワセは大きく強く
猪熊さんは基本的にウキ止めを付けない全遊動式の仕掛けだが、仕掛けを沈めていく際もタナは意識しておくことも重要で、自然な流し込みではあるのだが、自分のエサが現在どの程度のタナにあるのか…を意識しながら釣ること。
今回紹介した3つのポイントを実践することで大きなメリットも生まれる。
それは「再現性」。
正確なマキエ・仕掛け投入で、自分が現在攻めているポイントの状況を理解し、鈎の種類で沈下速度やグレの喰いをはかる。
さらに自然に流し込める状態を作ることで、潮に対して常に同じように攻めることができる。
それらを意識しながら釣っていると、いざ大型グレが釣れたパターンが多角的に見えてくる。
そうなると、続けて大型グレが釣れる可能性が高くなるということだ。
浅ダナでも中型グレが連発する中、ピンポイントを攻めて見事大型グレを引きずり出した
●交通:長崎自動車道の武雄JCTから西九州自動車道に入り、佐々ICから国道204号で平戸方面へ。
平戸大橋入口から平戸大橋を渡り国道383号、県道19号を経て宮之浦へ。
問い合わせ:丸銀釣りセンター(TEL:0950・29・1006)
(文・写真/松村計吾)
※当日の様子は、youtubeフィッシングDAYS「フカセのレジェンドが競演 長崎上五島で良型グレ」https://youtu.be/MTLt6zPLWucで視聴できる。
「フカセのレジェンドが競演 長崎上五島で良型グレ」
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ライター紹介
松村計吾
大学で水産無脊椎動物の研究を経て、釣り出版社に入社後、30年以上釣り雑誌や釣り情報紙の編集を手掛ける。取材などで釣りの現場に出ることはもちろん、休日などのプライベートでも常に釣りシーンにハマっている。得意な釣りは船のテンヤタチウオ、カワハギ、エギング、イカメタルなどだが、日本全国を飛び回りあらゆる釣りを経験。ちなみの甲子園の年間シートも所持。甲子園でのビール消費量も球界一とか・・・。