【12】

アナタは数釣り派? それとも大物派? 大阪湾の船テンヤタチウオでサイズ釣り分け法があったゾ

松村計吾

2023年、大阪湾の船タチウオはとにかく魚影が濃く、数釣りのトップともなると、3ケタをゆうに超す好釣果が続いている。

手元で確認できる魚探を覗くと、画面には真っ赤な反応が出ていて、テンヤを落として誘うや否や、ゴツ、コツ、ガツガツと様々な反応が穂先を通して送られてくる。

タチウオ釣りが初めての入門者でも、アタリが多く楽しめるとあって船上は連日賑やかだ。

ただ、このタチウオ、数は非常に多いのだが、サイズに不満を覚えた人も多いのが今シーズンの特徴だろう。

簡単に釣れてくれるサイズは、体高(幅)が指2本や3本クラスが中心。

時には指4本以上の良型や、さらに大きなドラゴン級と呼ばれる大型も混じるので、中には良型・大型のタチウオも居るのだろうとは想像できるが、実際に掛かってくるのは小型が大半…という感じ。

さて、テレビ大阪系列で毎週土曜日朝6時50分から放送されている釣り番組「フィッシングDAYS」では、船のタチウオカワハギの名手として知られる、がまかつテクニカルインストラクターの三石忍さんと、大阪湾タチウオキングバトルで前人未到の2連覇を成し遂げた、がまかつフィールドテスターの中山武嘉さんが共演。

中山さんはもちろん、数を競う競技会で連覇を達成しているほど数釣りに長けているアングラーだ。

一方、マルチアングラーで知られる三石さんは数釣りにも、もちろん長けているのだが、それだけではない。

「中山君が得意の数釣りを披露するから、私は良型・大型狙いに徹してみます」と宣言。

今回、2人の釣りスタイルから、テンヤタチウオでサイズを釣り分ける方法を紹介してみたい。

【1】

次々に上がるテンヤタチウオは、大阪湾の人気釣法だ

【2】

三石忍さんと中山武嘉さん

基本はワンピッチジャークからの即掛けスタイル。中山流数釣りの法則

「僕の基本の誘いはワンピッチジャークです。スピーディーにタナを探っていき、エサ(テンヤ)を動かすことでタチウオにアピールして掛けていきます」とは中山さん。

そのために使用する竿は、がまかつ「タチウオテンヤMS 173H」だ。

シリーズ中、もっとも硬調で張りがあり、全長もしっかりとアクションさせやすい1.73mと短いタイプ。

近年、注目を集めるバイブレーション釣法にも最適な調子である。

【3】

アタリがあればどんどん掛けていくスタイルの中山さん

竿先で小さくキビキビとアクションさせながら、1回のシャクリにリールのハンドルを1回転させた後は、ピタリとステイ。

タチウオにエサを食う間を与える。

このメリハリでタチウオにスイッチを入れる。

リールを巻きながら竿を小さくシャープにしゃくることで、ストップ&ゴーではなく、テンヤにしっかりと動きを与えることを信条とする。

【4】

小さくシャープに竿でシャクリながら、リールのハンドルを巻く

アタリがあれば、とにかく即掛けを得意とする中山さんは「掛からなくても問題なしです。それよりも、アワセを入れること自体がアクションの1つなんですよ」と話す。

アタリがあってアワせると、テンヤが大きく素早く動く。

これも誘いである。

そんな中山さんのエサは、タチウオに取られにくいサンマの切り身がメインだ。

サンマの付け方にもこだわりがある。

長いサンマの切り身を2つ折りにしてテンヤに付けるのだが、その付け方は2通り。

【5】

サンマエサの付け方は2通り

1つはタチウオの活性が高い時用で、背(皮)を外向きにする折り方。

もう1つは活性が低い時に使う身を外向きにする折り方だ。

どちらもあまり太い状態にせず、やや細身でワイヤーでしっかりと巻くことでエサを取られにくくする。

どちらかといえば、食いに来たタチウオを即掛けするので、しっかりとエサを食わせる必要はないのである。

ただ、当日もあったのだが、波がある時には、アクション後のステイがしっかりと止まらないこともある。

そんな時には船の揺れを少しでも吸収してもらうよう、やや柔軟なタイプの穂先を使用する。

具体的には、波が出てきたタイミングで「H173」→「MH175」への変更が功を奏して、タチウオの入れ掛かりを演じてくれた。

【6】

当日使用したタチウオテンヤMSのH173&MH175

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アワせずに追わせて追わせて足の速い大型を待つ。三石流良型狙いの法則

当日、お世話になったのは大阪・泉佐野の上丸。

大型タチウオ狙いでは定評のある船で、船長は通常の魚探反応のみならず、独自の潮や群れの読みをして、大型タチウオを釣らせてくれる。

当日も「水深は107mで、50mラインから上の反応は無視やなあ…。ちょっと90mラインが熱そうやで~」とアナウンスが飛んだ。

実はこの50mラインから上は、小型タチウオが群れている反応なのだ。

タチウオ釣りなのに、タチウオの群れるタナを無視せよとは…。

が、このタナ狙いが実は正解で、90mラインを探っていた人に良型タチウオがヒットするシーンが続いた。

【7】

90mラインが熱い…と船長が言った時の魚探の映りがコレ

が、船長曰く「1日の釣りの中で、反応やポイントなどを見ながら、ある程度数釣りタイムと良型・大型タイムを分けて考えたほうがええね」。

つまり、大型タチウオの気配がないところで大型狙いは確率が低すぎるので、そんな場面では数釣りを楽しめばよい…ということだ。

そして、前述の「熱い反応」が出た時だった。

三石さんの釣り方を見ていると、竿でスーッとテンヤを持ち上げては竿を下げながらリールでラインを巻き取る動作を繰り返す。

その速度がかなり速いのには驚かされた。

【8】

速めのストレート引きで大型を狙う三石さん

上げてくる途中には、コツ、ゴツとタチウオが食いついてくるような反応が竿先に出るが、アワせずに避けるという感じ。

そして、アクションとしては中山さんのようなジャークを入れるようなダートアクションではなく、直線的な速いストレートアクションをメインとする。

アタリが遠ければ、軽く竿でしゃくりながら巻き上げることもあるが、基本はストレート。

「小型タチウオの群れの中ら少しでも良型を引きずり出そうと思えば、タチウオの遊泳力の差を利用します」

つまり、小型タチウオがテンヤ=エサを追うが、そこでは掛けにはいかない。

アワせなければヒット率が下がるのだが、そこが狙い目。

そして、速めの速度でテンヤを引き上げてくるのもミソである。

サイズの大きなタチウオほど、体長の大きさゆえ移動能力、遊泳力がある。

遊泳力のあるタチウオは、小型よりも距離を追うことも速く追うこともできる。

速い速度で追わせる理由はそこにある。

船長はまた別の見解として「アタリが続く時に、ずっと1尾のタチウオがエサを取りに来ていると思われがちやけど、実はテンヤを引き上げていると、入れ代わり立ち代わり違うタチウオがエサを食いに来る。そのうち、遊泳力のある大型タチウオがテンヤを見つけて食いにくる」との話もしていただいた。

ここで速度を緩めたりステイさせてエサを食わせて掛けるのが数釣りなら、テンヤを引き上げる速度を速くして、それでも食ってくるタチウオを掛けるのが良型・大型狙いである…といえる。

三石さんの大型狙いが的中。虎視眈々と118㎝(尻尾切れ!)

中山さんが派手なアクションで掛けまくるのをよそ目に、三石さんは静かに竿でスーッと誘い上げている。

どんどんと竿で上げては手巻きでリールのハンドルを巻いてくるが、速度を緩めたり、止めたりはしない。

そのうち、竿先にコツン、コツとタチウオの反応が出るが、そのまま無視して誘い上げてくる。

すると、さらに重々しく「タチウオテンヤMS」の柔軟な穂先が押さえ込まれた。

そのまま竿を突き上げると乗った。

が、竿が曲がり込んで動かない。

直後に浮きだしたが、これまでにヒットしたタチウオとは比較にならない重量感に「これ。ちょっと大きいと思いますよ」と三石さん。

巻き上げる途中に時折、抵抗する際のストロークが大物を物語っている。

水面に浮いてきたタチウオを見てびっくり。

ドラゴン級だ。

リーダーを持って船に上げたタチウオは、ゆうに120㎝を超えている…が、暴れる最中に尻尾の先が切れてしまった。

そのまま計測すると118cm。

尻尾が切れていなければ、確実に120㎝は超えていたであろう大物が登場した。

【9】

浮いた。デカい。リーダーを持って抜き上げる

【10】

どうです?堂々の風格。118㎝のドラゴン級タチウオが登場だ

ただ、それだけにはとどまらず、三石さんは次々に良型タチウオを掛けていく。

サイズにして90~100㎝といったところだろうか。

もちろん、どんどん掛ける中山さんに比べると、ヒットするペースはやや遅れるものの、この日、あちこちでヒットし、中山さんも数釣りをしているタチウオが全長70~80㎝であったことを考えると、全く別物の釣果である。

【11】

平均して三石さんの掛けるタチウオは良型だった

結果的に、アタリをもらいにいって掛ければ小型メインとなるが数が釣れる。

これは「アタリが多いほうが楽しい」と思う人向け、速い引き上げで軽い反応を無視して重量感が乗ったタチウオのみ掛けていくと良型狙い…という状況だった。

●交通=大阪市内方面からは阪神高速湾岸線の泉佐野北ICで下り、最初の信号を右折。

突き当たりを左折して「おさかなハウス」のすぐ先に乗船場への入口がある。

問い合わせ=上丸(TEL:090・8383・6633)

(文・写真/松村計吾)

※当日の様子は、youtubeフィッシングDAYS「数と型を釣り分ける 大阪湾テンヤタチウオ」https://youtu.be/-aFuW--BtAwで視聴できる。

数と型を釣り分ける 大阪湾テンヤタチウオ

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ライター紹介

松村計吾

松村計吾

大学で水産無脊椎動物の研究を経て、釣り出版社に入社後、30年以上釣り雑誌や釣り情報紙の編集を手掛ける。取材などで釣りの現場に出ることはもちろん、休日などのプライベートでも常に釣りシーンにハマっている。得意な釣りは船のテンヤタチウオ、カワハギ、エギング、イカメタルなどだが、日本全国を飛び回りあらゆる釣りを経験。ちなみの甲子園の年間シートも所持。甲子園でのビール消費量も球界一とか・・・。

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