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今年もドラゴン級を狙い撃ち!東京湾のテンヤタチウオ入門の手引き
2020年、東京湾で大ブームをとなった「テンタチ」こと専用のテンヤを使ったタチウオ釣り。
ルアーフィッシングにも通じるダイレクトな釣趣に加えて、東京湾ではこれまで想像もしなかった120cm超のドラゴン級が連発!
本場の関西や九州からも釣り人が参戦するほど釣果に沸き、ピーク時には「90cm以下はカウントしない」という船宿もあったほどの爆釣が続いた。
このため、2021年の釣果を心配する人も多かったが、梅雨明けの「夏タチ」とよばれるシーズンが始まると、テンビン釣りの釣果の上昇を追いかけるように、「テンタチ」の釣果も急上昇!
昨年ハマったテンヤファンたちは、いま胸をなでおろしている。
がまかつフィールドテスター・田中義博さんもその1人である。
テクニカルな釣りが大好きな田中さんは、単に釣果を追うだけでなく、釣行を重ねながら、東京湾ならではの「テンタチ」の理(ことわり)を探求してきた。
今回は、そんな田中さんがつかんだこの釣り入門の手引きを語ってもらおう。
解説 がまかつフィールドテスター・田中義博
写真・文 大山俊治
自分に合った「テンタチ」ロッドの選び方
テンヤを使ったタチウオ釣りは、サバやコノシロの短冊を使うテンビンの釣りとは違って、テンヤにくくりつけたイワシにアタックしてきたタチウオを、大きなフックで「掛け」にいく釣りだ。
ゆえに、アタリをとらえる繊細な穂先を持った9:1~8:2のカワハギ竿をひと回り頑丈にしたような調子の専用ロッドが使われる。
前述のように関東エリアの「テンタチ」は、実質的には昨年から始まったようなもので、しかも大型が釣れ盛ったことから、「テンヤはあくまで大型狙い」というポジションになっている。
これがテンヤオンリーで釣っている関西や九州との違いだ。
確かにその実績は、巨大なタチウオが釣れることで知られる鹿児島県の錦江湾に勝るとも劣らなかった。
一方で、現在でも単純に数を釣るなら、船宿から無料で支給されるサバやコノシロの短冊エサを使うテンビン仕掛けが圧倒的に有利な場面が多い。
「それでも多くの人がテンヤのタチウオにハマったのは、指2、3本(※タチウオは体高の幅でサイズを表現する。このサイズだと1mを超えることはない)という中小型を避けて100~130㎝の大型を狙い撃ちにできるからです。
私もこれまでの釣行で、数こそテンビンに及ばないものの、釣果の総重量がテンビンの人を超えることもありましたからね(笑)。
これが高価なイワシを使ってもテンヤで釣りたくなる一番の理由です」と田中義博さん。
2020年は、ブームに押されて東京湾でも多数のテンヤ専門の乗合船がスタートしたが、2021年はまだその域には達していない。
東京湾のタチウオ釣りは元々テンビン仕掛けが主流で、今も一部に専門船はあるものの、現在多くの船宿では、テンビンまたはジギングとの同船でテンヤ釣りを行うことになる。
「だから、テンヤを徹底的にやり込むのか1本のロッドでテンビンの釣りとの両狙いも考えるのかで、最善のロッドは違うものになってきますよね」と田中さんは言う。
大船団の中で釣るのが当たり前の東京湾では、タチウオの様相がコロコロ変わる。大型のホットゾーンといわれる三浦半島先端部の走水~猿島沖周辺では、あらゆる釣法が入り乱れて連日叩かれている。テンヤ釣り元年の2020年と2021年では、テンヤへのタチウオの反応は明らかに変わってきた。
「ロッドというのは先調子で曲がらないものほど、感度や操作性が高くなって、誘う~掛ける作業の精度が上がります。
その反面、曲がらない竿は魚の引きを吸収してくれないので、バレやすいことも確かです。
特にタチウオは掛かると水面に向かって泳ぐこともあり、120㎝超のドラゴン級は引きも強烈。
獲ることを重視するなら、ある程度曲がるロッドのほうがいいでしょう。
好みや技量の差、体格の違いもあるので正解は1つじゃないけれど、硬い竿ほど慣れるのには時間がかかると思いますよ」と田中さん。
2020年からこれまでのところ、田中さんは(取材によるメーカーからのオーダーもあって)、2シリーズの専用竿とLTロッドで「テンタチ」を狙ってきた経緯がある。
これを踏まえて、まずは「東京湾の釣り」を踏まえたロッドセレクトを聞いてみよう。
「専用ロッドの購入を考えているなら、がまかつ/タチウオテンヤMSシリーズがイチ押しです。
タチウオの名手である三石忍さんが徹底的に作り込んだだけに、私もスムーズになじむことができました。
誘い掛ける要素とドラゴン級がきても安心してファイトできる要素がバランスよくまとまっているので、この釣りに初めて挑戦する人にもおすすめです。
東京湾で主流の40&50号のテンヤを指定する船ならM-180、潮流や糸の立ち方、他者とのオマツリの不安がない時、40号を中心に30号のテンヤも使用でき、タチウオの食いがスローな時にはML-180がいいでしょうね。
余裕があれば、極先調子でパワーのあるMH-175も併用すれば、ロッドのパワーを使い分けることで、テンヤの見せ方を変えることもできますよ」
【がまかつ/タチウオテンヤMSシリーズ】シリーズの旗艦となるM-180、テンビンの釣りや軽量テンヤに最適なML-180、極先調子で誘いと掛けを極めるMH-175の3モデルがラインナップ。高強度で高感度な「スーパートップ」にスパイラルガイドを配した穂先~穂持ちは、ジャーク後の「止め」が決まる至高のバランスで、道具に一家言あるタチウオ船の船長たちも絶賛の完成度を誇る。頁トップのドラゴン級も含め、田中さんもこのロッドで多数の120cm超を仕留めている。
次いで田中さんが推薦してくれたのは、LTロッドの「ライブラⅡMH180」だった。
この選択には東京湾ならではの事情がある。
タチウオ船でテンビンやジギングと同船でテンヤをやる時には、釣座が(たとえばミヨシ周辺とか)船長の指示で決められ釣法の変更が不可の船もあれば、道糸さえ指定以下の太さであれば、テンビンもテンヤも自由にできる船もあるのだ。
「後者の船なら、周りであがるタチウオのサイズを見ながら2つの釣法を使い分けられるので、ライブラⅡのMH180ですね。
7:3調子でありながら、穂持ち~バット部のパワーが十二分にあるので、50号のテンヤを使っても8:2調子に近い使い方ができるんです。
テンビン仕掛けで60・80号のオモリを使ってもいい仕事をしてくれるから、“テンビンで釣りながらテンヤも楽しみたい ”という人にはピッタリです。
大型が掛かれば7:3調子で曲がり込むので、専用竿よりも大型とのやり取りが格段に楽でバラシが減りますよ」
2021年の田中さんは、MH180をテンヤ専用としてタチウオ船に常備して、(もちろん技術の差もあるが)専用竿の釣り人に負けない釣果をしっかり出しているので安心だ。
「ライブラⅡMH180」で1m超とファイト中の田中さん。ミドルクラスのロッドでありながら、高度な目感度と手感度を融合。7:3調子でありながら50号のテンヤでは8:2調子に近い操作ができるうえに、大型が掛かればご覧の通りに曲がり込み、バラシのリスクを大幅に軽減してくれる。
がまかつには、先日リリースされた専用竿として「がま船タチウオテンヤSRチタン」というシリーズもある。
このシリーズも取材の中で使ってもらったので、田中さんのインプレッションを聞いてみよう。
「チタン製のティップを採用した超硬調のロッドですね。
超高感度で操作性に特化したマニア向けの設定。
一言でいえば、ほぼ曲がりません(笑)。
テンヤでは掛かりにくい指2~3本のタチウオでも掛けられるので、使い込めばテンビンに匹敵する数釣りも可能ですね。
ただ、当然のことながら、ドラゴン級がきた時のやり取りの難易度は非常に高くなるので、テンヤの釣りにかなり慣れた人でないと難しいでしょうね」
つまりは、テンヤのみで釣る関西の市場を意識した「鬼掛け仕様」ということだ。
最小限の操作でアワセが効くので、掛け損じた時のフォローやテンヤを動かすこと自体は、こうしたロッドが楽なのである。
このように「タチウオテンヤで釣る」といってもロッドの選択はいろいろある。
自分の嗜好や地域のスタイルにあわせて最適な1本を選びたい。
「鬼掛け」の関西仕様を関東でテスト。関西仕様であるタチウオテンヤSRチタンの船上テストを敢行。指3本級のついばむようなアタリも掛けにいける感度と操作性は凄かった。「個人的な見解ですけど、関東で使うなら、ティップが少しだけ曲がる“乗せアワセ”がいいかな?」と田中さん。
【がま船 タチウオテンヤSRチタン】全長1.75mで穂先までキンキンの「掛けアワセ」と9.5:0.5の極先調子「巻きアワセ」の2モデル。「テクノチタントップソリッドⅡ」の採用で究極の感度と操作性を追求。最小限の操作でアワセが効く「鬼掛け仕様」。自重はともに120g。適合負荷各20~50号となる。
がまかつ がま船 タチウオテンヤ SR チタン 掛けアワセ 1.75m (並継 2ピース)
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タックルバランスとテンヤのセッティング
「テンタチ」の道糸は関西ではPE2号が相場となっているが、大船団の中で釣る東京湾では、船を止め気味に流すこともあって田中さんはPE1.5号を愛用している。
これに、FGノットなどの摩擦系ノットで8~10号のフロロを1~2mつなぎ、強度の高いインターロック式のスナップスイベル#6~8を介してテンヤを接続する。
なお、摩擦系ノットが苦手な人は先糸を短め(取り込み時に跳ね込みやすい長さ)にして、スイベルを介して先糸を接続してもいい。
「用意するテンヤは、必ず船宿の指定号数に合わせてください。
現在、東京湾の主軸は40・50号で、指定のラインが細い一部の船や潮が緩い時に限って30号を使うというのが実情です」と田中さん。
リールは前記のラインが200m以上巻ける小型電動リールが有利。
メタルフレームで剛性が高いものなら、水深的には手巻きリールの出番も視野に入る。
「つねに手持ちで誘い続けるので、手巻きリールの軽さと感度は大きなメリットになります。
ただし、タチウオは掛かると水面に向かって急浮上する(大型は特にこのスピードが速い)こともあるので、総合的に見ると、不安定な船上でも常にテンションをキープしやすい電動リールのほうが安心ですね」とか。
なお、この釣りでは他の人が釣ったタチウオの歯が当たって、ラインの高切れもあるので、必ずスペアのリールを持ち込むか、100mぐらいの予備のラインを持参したい。
こうしたトラブルはお互い様なのを了解して乗船したい。
リールはシマノなら200~600番までの電動リールが総合的には有利。回収の速さとファイト時のテンションを一定にキープできるので、ドラゴン級がヒットしても安心感が違う。手巻きリールなら、フレームがメタル製の剛性の高いモデルで、巻き上げトルクが高い=巻長60㎝前後のギア比を選びたい。なお、細かく誘うためにもハンドルは長めのダブルハンドルが使いやすい。
「テンヤは各社からさまざまな特性のものが出ていますが、これは使う人との相性があるので、最初はいろいろ試してみるといいですよ。
ただ、テンヤのカラーでタチウオの反応が大きく変わるので、最低でも、イワシカラーのシルバー(ナチュラル系)、赤金、ゼブラグローの3色ぐらいは用意しておいたほうがいいですよ。
ちなみに、関西ではフルグローが一番使われるそうですが、東京湾に関しては水色の違いなのか?
ハマる時はハマる程度なのが面白いですね」
テンヤのカラーは、ときにアタリを引き出す決定的なファクターになることもある。だから使用の各号数で最低3色は常備したい。東京湾では、基本的にはフックが大きめの「掛け仕様」のテンヤが多用されている。
エサは、生または冷凍のマイワシを使う。
船宿で購入できるケースもあるが、持参が前提の船もあるので要確認だ。
さらには、エサの質が明暗を分けることも少なくないので、田中さんは食用に販売されているイワシを購入して、各種のフォーミューラーで締め、加減を調整して使用している。
1日の使用量はアタリの数にもよるが、最低限で20尾。
40尾を持ち込んでもアタリが多い時はエサ切れになったこともあるというから、多めに用意しておきたい。
なお、東京湾ではレギュレーションにより、関西では多用されるサンマの使用は禁止されているので注意したい。
「イワシのサイズは季節や産地によってまちまちなので、大型のものは頭を落として調整します(バランスは写真参照)。
内臓は残せば集魚効果が期待できますが、付けた時のテンヤとの一体感のほうが重要なので、私は取り去ることが多いですね。
トリミングが必要な大きなイワシは、付けるのにはそれなりに時間がかかるので出船前に最低でも2、3個はテンヤにセットした状態で乗船するのがいいですよ」
なお、テンヤ釣りではエサの劣化は命取りになるので、田中さんも含めてベテランは魚用とは別に、エサ用のクーラーを持参することがセオリーとなっている。
イワシの「トリミング」に使用するので、よく切れるクッキングカッターは必携。イワシの脂は船に付くと落ちにくく滑って危険なので、エサを入れる大きなタッパーや、テンヤを仮置きするステンレストレーは、必ず持参して船を汚さないようにしよう。写真のように大きなイワシはあらかじめ、頭と内臓を取り除いた状態で乗船してもいい。
テンヤへのイワシの装着法
①イワシはテンヤのハリからこのぐらい尾が出るように、テンヤのサイズに合わせてカットして使う。
②腹部をカットして内臓を除去して、テンヤの軸に対してイワシを真っすぐに刺す。なお、腹部はテンヤの軸をイワシ身で隠せるように少しオフセット気味に切るといい。
③大きく太いイワシの切り口は必ずヘッドの断面に沿うようにカットし、隙間と段差をなくして、ヘッドとの一体感を上げる。
④付属のステン線で頭部を3、4回強めに巻いてから腹部は広く巻き、尾の部分で2回巻いて折り返し、余ったステン線はラインアイに通して軽く固定する。強く巻きすぎるとイワシが曲がるので、指を添えながら丁寧に巻く。
⑤巻きあがりはこんな感じになる。タチウオはイワシの腹部を狙ってくるので、主に頭の巻きで固定して、腹の部分にはなるべくステン線がかからないように仕上げたい。
⑥前から見てもイワシの肉がテンヤのヘッドからはみ出していないことも重要だ。肉がはみ出していると、潮流を受けてイワシがズレるばかりか、テンヤを動かした時やステイ中にも不自然な動きをして、アタリが激減するので注意。
⑦エサ用に加工された小型のイワシは頭を付けたままテンヤに装着する。エサ持ちは頭があるほうがいいが、食い込みは浅く、締めたもののほうがいい。
イワシは、右の「アミノリキッド」に付け込んでから、左の「旨〆ソルト」で締め具合を調整するとエサの劣化が抑えられる。写真のように、腹部の「エンガワ」が浮き出るぐらいが基本の締め具合。
誘いのパターンとタナ探りの基本
タチウオのテンヤには複数のラインアイがあり、ステイ中のテンヤの角度を変えられるものが多い。
水平~やや尻下がりぐらいが基本になる。
タチウオは下からエサを追ってくるので、「的」が一番大きく見えて無防備な水平姿勢が彼らの捕食を促すのである。
これが狡猾なドラゴン級を欺く「テンヤ」という釣具の特性なのである。
ただ、直近の東京湾では釣法の変化に伴って、これも変わりつつある。
「私はどのテンヤでも基本的には水平にして使っていますが、直近の東京湾では誘いの多様性から極端な尻下がりの状態での実績も高まりつつあるようです。
特にテンヤを動かしつつ即掛けにいく釣りでは、掛けるためのタイムラグを詰めるバトルモード=尻下がりの姿勢を多用する人が増えてきましたね」
このようにテンヤの姿勢が変わるだけでも釣果が大きく変わることがあるのが「テンタチ」の面白いところだ。
釣技の「引き出し」として必ず試してみよう。
テンヤのラインアイは水平~やや尻下がりになるポジションが基本だが、直近の東京湾では、誘いの多様性から極端な尻下がりの状態での実績も高まりつつある。
テンヤのセットが完了したら、まずは潮上に向かってテンヤをキャストして投入する。
これはオマツリを防ぐと同時に、カーブフォールの軌道でタチウオにアピールする面もある。
特にテンビンと同船で釣っている船では、必ずこれを習慣にしたい。
「ラインが立ったら、指示ダナがない場合はボトムまでテンヤを沈めて、根掛かりを回避するために2mぐらい巻きあげます。
指示ダナがある場合は、テンヤを沈めるのはその下限まで。
指示ダナの下までテンヤを下ろすと、テンヤはアピールが強烈なので群れが拡散してアタリが遠くなるので厳禁です」
投入は、アンダースローで必ず潮上に向かってキャスト。オマツリを防ぐと同時にカーブフォールの軌道でタチウオにアピールする効果もある。
ここからさまざまな誘いを駆使してアタリを引き出すのが基本だ。
「一番簡単なのは、デッドスローで巻き続けることです。
実は大型に限ると2020年はこれが一番釣れました。
ただ2021年はどうしたものか? ここまでのところでは全然ダメなようです。
ただ、今後はハマる局面もあるはずですから覚えておきたいですね。
巻く速度はシマノの電動リールなら速度表示で2~4が目安です」
もう1つの柱は、「ストップ&ゴー」や「ジャーク&ステイ」といった、小さく鋭く動かした後のステイで食わせの間を作る誘いだ。
「これは動かす距離や止める時間を変えることでバリエーションがあるので、2021年もデッドスローほどは反応が悪くないようです。
特にストップ&ゴーはロッドを固定したままリールの操作で誘うので、疲れにくいから私もこれを基準に探ることを基本としてきました。
ただ、今年の東京湾はそれだけでは攻略しきれないようです」
ロッドを水平に構えて固定し、ハンドルを1/2回転ぐらい「キュッ」と回して3~5秒ステイ。これが「ストップ&ゴー」。ハンドルを回すタイミングでロッドをシャクれば、「ジャーク&ステイ」となる。
そんな中から生まれてきたのが、「バイブレーション」と呼ばれる誘い方だ。
これは東京湾の某船宿や東京湾の先駆者が、アタリの出ない渋い時期を攻略する目的で考案したものが、ファンの間に定着した新しい誘いである。
「カワハギやマルイカの“叩き”のようにロッドを細かく叩きながら、テンヤにバイブレーションを加えつつ動かす釣り方で、ステイを挟むパターンと超スローで巻きあげながら動かし続ける2つのバリエーションがあります。
ものすごく疲れる誘い方ですけど、今年はこれが一番釣れていますね(苦笑)」
テンヤやテンビンで掛けそこなった時に、フォローで入れていた「シェイキング」がその起源のようだが、大中小のタチウオが中層で入り混じる2021年夏の展開の中、大型にアピールする一方で、小型を追い散らす効果があるのかもしれない。
かなり根性がいるが、実績は非常に高いので頑張って続けてみたい。
いずれの誘い方でも、手感度またはティップに現れる目感度で、タチウオのアタリが出るタナが見えてきたら、次の投入からはそのタナが誘いの起点になる。
タチウオに限らず魚は、上に誘い出すほど活性が上がり釣りやすくなる。
指示ダナの上限+3mぐらいまではリサーチして最もアタリが続き釣りやすい「スウィートスポット」を探り出そう。
(上)ロッドを細かく振りながら超スローでリールを巻くのが「フルバイブレーション」。写真のような角度で行うのが楽だ。合間に3~5秒のステイを入れるほか、反応のいいタナが見えたらその位置でステイを挟みながらテンヤを動かし続けるのもあり。2021年一番釣れている誘い方だ。(下)どの誘い方でも、ロッドのバットが一番働く角度で、潮に逆らう方向に動かしたい。「テンタチ」ロッドのレングスなら、胴の間でも舷側と並行に誘うことも可能だ。これを心がけるだけでもアタリの数が違ってくる。
フッキング~ランディングまでのプロセス
「テンヤはその構造からいって(写真参照)イワシエサの腹部にタチウオがアタックしてこなければ、絶対に掛かりません。
問題はタチウオがそこまで本気モードになる誘いのパターンやタナを見つけられるかにあります。
大きなイワシが付いていても、この釣りはほとんどルアーフィッシングみたいなものです」と田中さんは言う。
しかも、そのアタックは決して分かりやすいものではない。
だから、ロッドの手感度に加えてティップの目感度が非常に重要なのである。
「2020年はアタリが出てもそのまま誘い続けて、タチウオがテンヤを深くくわえて持ち込むアタリを掛ける“食い込ませるアワセ”が正解でした。
ところが、今年はそれを待っていると釣果が伸びません。
仲間内での合言葉は“疑わしきはアワせろ”の“即掛けのアワセ”が主流になってきました。
だから、テンヤの姿勢も極端な尻下がりの“バトルモード”で使う人が増えてきたんですよ」
その傾向が今後どうなっていくのかは未知数だが、東京湾の「テンタチ」では、これをふまえて挑戦したい。
なお、アタリがあって回収した時、イワシエサの尾の部分に歯型が集中している時は、小型がちょっかいを出しているので、そのタナは捨てるそうだ。
「感度のいいロッドなら、同じように打撃性のアタリ方でも、小型の場合は震えるようなタッチが混ざるので、水中の状況が早くわかります。
中小型と大型は、反応するタナが違うことが多いですよ」。
フッキングが決まった瞬間は強烈!まるで根掛かりのようだ。テンヤ釣りでは、テンビンやハリスがないので、ドラグは強くラインを握って引くと滑るぐらいに調整しておかないとラインブレイクもある。なお、アワセは「小さく鋭く」を習慣にしておくと、掛け損じてもフォローが効きやすい。
テンヤでフッキングに持ち込める「本アタリ」は(田中さんの右手をタチウオとすると) このように下からイワシエサの腹部を突き上げる形でくわえ込む。写真のようにテンヤの角度が変わるほど突き上げられると、ティップが戻る「跳ね上げ」アタリが出る。くわえ込んだままタチウオがバックすると、ティップが持ち込まれる。この瞬間にフッキングすれば、写真のように面積が広く掛かりやすくバレにくい顔の側面にフックが貫通する。
(上)こちらはライブラⅡのMH180による「バイブレーション釣法」で即掛けにいった一発。アタリはティップがわずかに跳ねあげられただけだった。エサを深くくわえていないので、フックは上顎の先端に貫通している。(下)ティップの表現力が問われるのが「テンタチ」という釣りだ。『タチウオテンヤMS』シリーズは、カーボンソリッドの「スーパートップ」にガイドをスパイラルに設定することで、ティップの捻じれがないから、目感度の表現力が大幅に向上している。
なお、いいアタリを掛けそこなった時にも、すぐに仕掛けを回収するのは早い。
捕食直後のタチウオはエサを追ってきて興奮しているケースが多いので、フォローのテクがある。
「テンビンと同じように、エサが残っていることを信じてティップを水面に向けて激しくロッドをシェイクします。
イメージは噛みつかれて傷を負い痙攣するベイトフィッシュです。
3~5秒これを行ってからポーズを入れると、改めて食い直すこともありますよ」
首尾よくフッキングしたら、ロッドの角度をキープしながら中速で巻きあげる。
大型タチウオの反転時のトルクは強烈なので、硬調の専用竿の場合は、腕や体も使ってこの引きをいなしつつ巻きあげよう。
だが、ファイト中で最も危険な瞬間は取り込みの瞬間だ。
「フックのすぐ上に大きなヘッドが固定されているテンヤは、フックが完全に貫通して針先が抜けていないと非常にバレやすい構造です。
水面直下まで寄せたら、ロッドを潮上側に置きつつ先糸をつかんで躊躇せず抜きあげてください。
タチウオがぶら下がったままの状態を作ると、水面で大暴れしてバレます。
リーダーを獲るのが遅れてテンションが抜けても外れます。
バラシの大部分は取り込みの瞬間に起こりますから注意してください」
実はベテランでも、予想外の大型に手が止まり涙を呑むケースもある。
自分のミヨシ側の隣で大物が掛かったら、あくまでさりげなく、跳ねこむためのランディングスペースを空けてあげるのが「テンタチ」師のマナーなのだ。
スムーズなランディングの流れ
水面直下までタチウオを浮かせたら、①ロッドを短く持ち替えつつ立てて、できるだけテンヤ近くのリーダーを取り、跳ねこみ開始。この動作に遅滞がないことがポイント。②リーダーをつかんだら、自分のトモ側へ回すようにして跳ねこむ。タチウオを真上に持ちあげようとすると、③のように水面で激しく首を振りバラす確率があがってしまう。
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ライター紹介
大山俊治
船釣り、管釣り、ソルトルアー、磯釣り、コイ釣りなど、幅広い釣りジャンルに精通するベテランフィッシングライター。奥深い原稿は評価が高くファンが多い。管釣りブームやシーバスブームを仕掛け、支えた人間のひとり。千葉在住。