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雨の少ない2023年のアユ釣り終盤戦。渇水&高水温を打破する若きトーナメンター2人の戦略公開
すでに10月というのに2023年の夏は続き、連日のように気温が30度を超す日が続いている。
また、全体的に雨が少なく、各地の河川では渇水、高水温でアユの釣果が芳しくない…という声も聞かれた今シーズン。
水温が高いということは、それだけ遅くまでアユが釣れる…と、希望的観測を持ってアユ釣り終盤戦に挑みたいもの。
ただ、9月下旬、10月に入っても、かなりの高水温、そして渇水状態が予想される。
今回はがまかつテクニカルインストラクターの谷口輝生さん、がまかつフィールドテスターの長谷川勇太さんの2人が、福井県・九頭竜川のアユを攻略。
テレビ大阪系列で毎週土曜日の朝6時50分から放送されている釣り番組「フィッシングDAYS」では、そんな若きトーナメンター2人の九頭竜川攻略についてのノウハウを放送…となったのだが、その中で終盤に至っても、いまだ高水温&渇水状態の河川攻略について、泳がせ釣りの名手2人の戦略を紹介していきたい。
目次
渇水&高水温攻略① アユの動きを観察しよう
釣行当日の九頭竜川は例にもれず、少雨の影響で大渇水状態。
そんな中、地元に精通するメンバーの情報でチョイスした釣り場は、九頭竜川でも上流部に近い大野市漁協区エリア。
九頭竜川らしくない? 上流部の釣り場は渓流相に
ここは大きな石が点在し、川幅こそ広くはないが水の流れも豊富で、流心の石はしっかりと磨かれているのがすぐに分かった。
また、河原から見ているだけでもアユが泳ぎ回り、ギラッと光る活発さを見せていた。
人の入りは多いとのことだが、それでも連日よく釣れているとの情報だ。
そして、サイズは20~25㎝で良型が揃っているのが特徴とも。
上流部に長谷川さん、下流側に谷口さんが入って釣りを開始したが、長谷川さんに聞いてみると「アユはかなり居るものの、河原に立って用意をすると、活発だったアユが逃げてしまうんですよ。かなり警戒心が高いですね」と言う。
まずは2人で川を観察しイメージを話し合う
しばらく竿を出さずに川を観察する長谷川さんだが「かなり群れで走り回っている感じですね。渇水で石に付いているアユが少なくてちょっとした掘れ込みなど、深めの場所を中心に群れている感じです」と話してくれた。
さらには「この川のようにアユの動きが観察できる場所なら、通常の状態、人が近寄ってきた時、そして釣り人が静かにジッとしている状態でアユの動きが変わるかどうかを確かめておくことも大切なんです。そこから釣りの組み立ての足掛かりが得られると思いますよ」と。
状況を知るために少しでも早くオトリを泳がせたい気持ちは分かるが、まずはオトリを無駄に弱らせないために、効率のよい作戦を練るための下準備が重要なんですよねえ。
ちなみに、後で聞いたところでは下流側に入った谷口さんも、まったく同じようにスタートしていたそうで、さすがにトーナメントなどで洞察力に優れた2人は下準備も欠かさない。
川に立ちこむとアユが消えてしまう?
渇水&高水温攻略② アユの動きに合わせた鈎選択を
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掛け鈎は両者ともに「G-HARDてっぺん」の8号4本錨を使用。
掛かりの早さとキープ力には定評のある掛け鈎で、25㎝級の大型も掛かるとの前評判から大きめの8号をチョイス。
一見、よさそうな石の周りを泳がせてはステイさせるなど、谷口さんが丹念に攻めているものの、なかなか反応がない。
そして、小さな反応が出たかと思えばケラレ発生。
その反応の出方から導き出した答えは「野アユがナワバリを持ってオトリを攻撃してくる感じではないですね。おそらくは渇水でよいナワバリができにくいんでしょう。オトリの後ろについて、一緒に泳ぐような感じです。アユ自体は大きいけれど、まるで群れアユのようですね」と言う。
では、どうするか。
「オトリの後ろについてくるような泳ぎをする野アユを掛けるために、鈎を小さくします。鈎自体を小さくするというよりも、軽量にするのが目的です」と話す。
つまり、オトリの魚体にアタックしてくるアユなら、大きめの鈎で速く掛けることができるが、動きが鈍くオトリに付いてくるような野アユに対しては、違和感なく付き合わせる時間を長くすることでそのうちに掛かってしまう…のを演出する。
そのための軽量化である…といえる。
具体的には、てっぺん8号からワンランクだけ落とした7.5号への変更。
それだけである。
それが大きな変化をもたらす。
掛け鈎を、てっぺんの8号から7.5号へ変更
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小鈎に替えた途端、それまでケラレていたような反応から一転、目印に顕著なアタリが出て、がっちりと掛かるようになったのには驚かされる。
オトリが替わっても鈎を7.5号のままで続行すると、なんと連発モードに突入。
改めて、鈎の選択の重要性を認識させられた状況だった。
渇水&高水温攻略③ 泳ぎに変化のあるアユを狙うハリスの長さ
上流側で当初は苦戦していた長谷川さんも、ふと見ると連発モードに持っていく様子が見られた。
長谷川さんが当日使用していた硬中硬8.5m
鈎を小さくすることで連発モードへ
聞いてみると「渇水と高水温の影響で、アユが少しでも水深と流れのある場所を探している感じですね。人が居なければあちこち泳ぎ回っているが、人が立つと途端に深場へと逃げ込む姿が見られますね」とのこと。
目の前の掘れ込み沿いにアユが走る
そして、石と石の間の掘れ込みなどの深い筋を群れで上流へ下流へと走り回っている状況とのことで、そのアユに狙いを絞ってみたという。
よく見てみると、確かにちょっと掘れ込んだ石と石の間の溝部分に、長い列となって泳ぎ回っているアユの姿が見受けられる。
で、どうするか。
じっくりとアユの群れの泳ぎを観察し、群れがやってきた際にその溝の付近でオトリをゆっくり泳がせる。
実はそこにも渇水時の工夫があった。
「掘れ込みに沿って泳ぎ回る野アユは直線的に泳いでいるので、なかなかオトリが付けている掛け鈎に掛かってくれません。そこで、掛け鈎をオトリから少し離す作戦にしました」と長谷川さん。
つまり、通常よりも少しハリスを長く取ることで、オトリと掛け鈎の距離を長くする。
その上で、直線的に泳ぎ回る野アユの群れの中へオトリを誘導して入れ込む。
そのうち、オトリアユと同調したように泳ぐ群れた野アユの中で、ちょっと動きに変化のあったアユが掛かってくるという状況だ。
これが短い通常のハリスだと掛け鈎の範囲が狭くなり、野アユに届かないことが考えられる。
見ていると、オトリを群れで泳ぐ野アユの中へ入れ込みすぎると、かえって警戒心を与えてしまうので少し脇を泳がせるくらいに操作する。
すると、少し離れた場所でギラリと腹を返して掛け鈎に掛かるアユが連発する。
これも渇水で高水温というナワバリ意識の弱いアユが数多くいる状況下での有効策なのだと実感した。
オトリに同調するように泳ぐ野アユを、長めのハリスで攻略
川を変えるとそこは活発なアユの宝庫 泳がせ釣りで炸裂
移動後の川はやや川幅が広く水量も豊富だった
大野地区の中でも石の多い、流れの変化がある場所を選んでの竿出しとなったが、どうもこれまでに取ってきた作戦では、釣り返しが効かずに数が続かない。
そこで一気に移動を決意した。
次の場所は同じ九頭竜川でも、川幅が広く石はやや小さめの流れ。
もともと水量が多いエリアなのか、全体的に活発なアユが散らばっていて、本来の泳がせ釣りに最適な場所を形成している。
ここでは、両者ともに鈎の大きさ、ハリスも元に戻しての釣りでスタートすると、反応は上々。
得意の泳がせ釣りで面白いように掛かる。
時間的な問題もあるのだろうが、午前中の試行錯誤が嘘のように好調に釣れ続け、結局は好釣果で終わったのはいうまでもない。
ちょっとした工夫で釣果に恵まれた今回の九頭竜川
今回、九頭竜川での2人の釣りを見て実感したのは、まずは状況の観察力と分析力。
そして、野アユの動きに対する釣りの組み立ての正確さ。
ただ、いつでもそのような細かな変更を強いられるかといえばそうでなく、活発な野アユがどんどんオトリを追ってくれるような状況では、存分に楽しむ。
これがアユ釣り師の「引き出し」となっていて、今回のアングラーである谷口輝生さん、長谷川勇太さんのように、いざというときの引き出しが多い人が名手と呼ばれるのだろう。
●交通:北陸自動車道の福井ICで降り、すぐを右折して国道158号を東進して大野市へ。
※当日の様子は、youtubeフィッシングDAYS「泳がせの名手が競演 九頭竜川大野アユ釣り」https://youtu.be/-yf3wJvd0cAで視聴できる。
(文・写真/松村計吾)
泳がせの名手が競演 九頭竜川大野アユ釣り
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ライター紹介
松村計吾
大学で水産無脊椎動物の研究を経て、釣り出版社に入社後、30年以上釣り雑誌や釣り情報紙の編集を手掛ける。取材などで釣りの現場に出ることはもちろん、休日などのプライベートでも常に釣りシーンにハマっている。得意な釣りは船のテンヤタチウオ、カワハギ、エギング、イカメタルなどだが、日本全国を飛び回りあらゆる釣りを経験。ちなみの甲子園の年間シートも所持。甲子園でのビール消費量も球界一とか・・・。