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人気急上昇の「カットウ釣り」。名手が教える淡路島フグ釣りの神髄

松村計吾

関東では古くから親しまれ、関西圏でも人気上昇中の船釣りといえば、ショウサイフグをメインターゲットとしたカットウ釣り。

人気の上昇とともに認知され始め、食べても美味しいターゲットということもあって、見様見真似で始めたアングラーも多いのではないだろうか。

フグはカワハギのように、ホバリングしながらエサをあさるエサ取り名人といわれる魚だ。

釣り方の基本としては口に鈎を掛けるのではなく、エサに寄ってきたフグを掛け鈎を使って引っ掛ける釣り。

ショウサイフグも毒の部位を持つ魚で、素人料理は厳禁。

そこで、関西圏でも広がり始めたのは、船長がフグの調理免許を取得して、釣ったフグを捌いて毒の部位を取り除いた「身欠き」と呼ばれる状態にして持ち帰らせてくれる船宿が増えたのも要因。

うれしいのは、帰宅してからの調理が非常に楽な点だろう。

今回はそんなカットウ釣りの達人である、がまかつテクニカルインストラクターの三石忍さんと、がまかつフィールドテスターの田中義博さんが、淡路島・室津沖でショウサイフグを掛けまくるテクニカルな内容を取材。

この中で、関西の釣り人が知らなかった本当のカットウ釣りを随所に披露してくれた。

今年も多くのエリアではシーズン終盤ながら、夏に向けてフグ釣りを続ける船宿も出てきているので、挑戦したい人にもまだまだ釣行のチャンスはある。

そんな人にぜひ参考にしていただきたいテクニックを紹介したい。

【1】

身欠きで持ち帰らせてくれるから、調理も楽ちん

【2】

ダブルヒットも数回あるほどの釣れっぷり

フグ釣りはカットウが人気な理由。実は非常に奥が深い釣り

「フグは歯が鋭いので飲み込まれればハリスを切られてしまうことも多々あり、エサ=鈎を食わせて釣るのが難しいですよね。だからエサで寄せて掛け鈎で掛ける…という釣り方になったんではないかと思います」とは、当日お世話になった栄真丸船上で三石さんの話。

そして、フグはカワハギ同様、その場でホバリングしながらエサをついばみ、鈎からエサをかすめ取っていくいわゆるエサ取り名人である。

そんなフグを着実に釣り上げていくには、引っ掛ける釣りが有利なのはいうまでもない。

一見、引っ掛け釣りというと、時々竿をシャクり上げてなんでもかんでも魚を掛けていく…というイメージを持つ人がいるかもしれない。

ただ、このカットウ釣りにおいては、適当に竿をシャクり上げていると、せっかく寄ってきたフグが警戒心を抱いて逃げてしまう。

【3】

繊細なアタリを取るために、穂先に集中する田中さん

そこで、エサを取りに来た微細なアタリをとらえて確実に掛けていく必要がある。

いわば、確実にアタリを取って掛けていく繊細な釣りなのである。

それだけに引っ掛ける釣りとはいえ、奥が深く超人気の釣りとして君臨しているのだろう。

「フグのアタリは非常に微細です。たとえば冬場で活性の低い時期なんかは、ガイドの輪1つ分穂先が動くかどうか…くらいのアタリを取らないと、釣果を伸ばすことはできないですね」とは田中さん。

そんな微細なアタリを出させるための準備、釣り方があるのも事実なようで…。

カットウ釣りの基本は誘いからの待ち。激しい誘いはタブー

カットウ釣りは状況に合わせていくつかの方法がある。

基本的にカットウ釣りの仕掛けは、上部に通したオモリの下にエサを付ける鈎が付けられ、その下にフグを掛ける掛け鈎がぶら下がっているスタイル。

上のエサに寄ってきたフグを下の掛け鈎で掛けるのが、カットウ釣りの基本スタイルだ。

フグが浮いていれば、オモリも浮かせて中層でアタリを取るし、低活性で底のエサを拾うような状況なら、オモリを底に着けた状態でアタリを待つことも多々ある。

まるでカワハギ釣りのような考え方でもある。

そして、カワハギ同様フグを寄せるためのアピールも重要で、エサを竿で持ち上げて沈める…という動作が基本的な誘いとなる。

ただ、このアピール時も小さな誘い、大きな誘い、速い誘い、スローな誘いなど、フグが興味を持つ捕食スイッチが入るパターンが存在し、潮の流れや時間帯、地形によって刻々と好みが変わる。

基本的にアワセのような激しいシャクリは、フグが驚いて逃げてしまうことが多いのでしないほうがよいという。

たとえば、ロケ当日の早い時間帯はちょい投げからの着底→リフト(持ち上げる)→そのまま保持してカーブフォールで着底→ゼロテンションでアタリを待つ→リフト→カーブフォールで着底→ゼロテン…のパターンでアタリが出ていた。

【4】

まずは軽くキャストして沖から攻める

これが潮が速くなってきた午後からは潮上にほんの少し投げて着底→少し潮に合わせて流し込んだら、次のリフトで潮上へ戻してゼロテン…のパターンでアタリが出た。

この時、流し込むのは底を取るためではなく、探るポイントをズラしていって、フグが付いている小さな障害物を探すため…といえる。

重要なのはタックルセッティング。超高感度な竿が抜群な件について

誘いからの着底、そしてゼロテンでのアタリを待つパターンが多いのだが、実はそのゼロテンをしやすいタックルセッティングが必要でもある。

その1つがオモリ使い。

基本は着底が分かる程度の軽いオモリを使うこと。

そして、潮の速さや水深に合わせてこまめにオモリの号数を交換することが、アタリを確実に出させるための一歩であるという。

ちなみに、ロケ当日は10~15号をメインに、5~25号を持参。

25号よりも重いオモリが必要になってくれば、オモリを追加して組み合わせる…という対処もある。

【5】

オモリは号数、形状などを違えて数多く持っておこう

もう1つが竿の調子。

当日、2人が使っていた竿は、がまかつの新製品「KT フリーク」。

この竿には2つのタイプがあって、1つは軽いオモリを使っての超繊細な釣りを得意とする「湾フグ180」、もう1つが「湾フグ」に比べると、やや張りを持たせて少し重いオモリを使う状況などにもってこいのオールラウンドモデル「カットウ178」。

「KT フリーク」の最大の特徴がその穂先の繊細さと、穂持ちの掛けるパワー。

ややヘビータイプである「カットウ178」で穂先の先径が0.85mm、「湾フグ」にいたっては先径0.8mmの細さである。

ともに柔軟性と繊細な感度を持たせるために、グラスソリッド穂先を採用しているのも特長だ。

【6】

「KT フリーク」の2アイテム。上が「湾フグ180」、下が「カットウ178」

【7】

2タイプの穂先。上が「湾フグ180」、下が「カットウ178」

「カットウ釣りできっちりとフグのアタリを出さそうと思うと、誘いの後のゼロテン状態で穂先がブレないことや、小さなアタリを表現する繊細さ、そしてアタリがあった時に掛け遅れしない穂持ちとバットのパワーでしょうね」とは田中さん。

当日も誘いの後、ゼロテンで待っていると、非常に明確なアタリが穂先に伝わり、確実にフグを掛けていく2人だったが、「明確にアタリが出ているように見えるのはこの KT フリークだからですよ。これが感度の落ちる竿だとほとんど分からないのがカットウ釣りなんです」とも。

カットウ乗合船での注意事項もある。底取りのための流し込みはNG

底が取れる程度の軽いオモリを使うのが、アタリを明確に出させるコツであることは前述したが、実はそこで注意点があるという。

「特に乗合船の場合、底が取れないからと送り込んでいくのはNGですよ」と三石さん。

流し込むと、潮の流れの抵抗を受ける距離が長くなることで感度が悪くなる。

それをカバーするように、さらに流し込むと周囲とのオマツリの元になるからだ。

基本的に、潮が速い時には少し潮上側へと持ち上げてジッとしていると、オモリが戻ってきて着底する。

要は送り込み自体は自分の釣り座の幅だけにとどめておき、釣り座の幅で勝負するのが乗合船でのカットウ釣りのルールでもある。

【8】

自分の釣り座の幅内で勝負しよう

それでも潮が速く、底で仕掛けが落ち着かない時には、オモリを重くすればよいのである。

最後に「今回の KT フリークのような超極細穂先で繊細さを優先している竿は、不用意に扱うと穂先が折れたりするトラブルが多発することも覚えておいてください」と三石さん。

●交通:神戸淡路鳴門自動車道の「北淡」ICで降り、すぐを右折。県道31号に出て左折し、道なりに進むと1kmほどで室津港へ。道の左手に船宿の看板があり、右折して港に入ったところが乗船場と駐車場。

●問い合わせ:栄真丸(TEL:080・6794・2646)

(文・写真/松村計吾)

「人気上昇中 淡路室津沖カットウフグ」

※当日の様子は、YouTubeフィッシングDAYS「人気上昇中 淡路室津沖カットウフグ」https://youtu.be/0-Kxe-UL5ok で視聴できる。

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ライター紹介

松村計吾

松村計吾

大学で水産無脊椎動物の研究を経て、釣り出版社に入社後、30年以上釣り雑誌や釣り情報紙の編集を手掛ける。取材などで釣りの現場に出ることはもちろん、休日などのプライベートでも常に釣りシーンにハマっている。得意な釣りは船のテンヤタチウオ、カワハギ、エギング、イカメタルなどだが、日本全国を飛び回りあらゆる釣りを経験。ちなみの甲子園の年間シートも所持。甲子園でのビール消費量も球界一とか・・・。