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これぞ中村勇生流「聞き誘い」の威力。三重・志摩沖のティップランで、渋い中でもアオリイカ2kg超キャッチ

松村計吾

【テレビ大阪系列・毎週土曜日午前7時放送「フィッシングDAYS」サイドストーリー第18話】番組内で話題になったワザ、アイテムについて”深堀”するもう1つの「フィッシングDAYS」。

「フィッシングDAYS」はテレビ大阪を中心に、テレビせとうち、TVQ九州放送、テレビ和歌山、高知放送で放送されている、がまかつ提供・テレビ大阪制作の釣り番組。

ハゼなどの極々小さい魚から、ルアーを使った大型魚釣りまでを、どうやったらより釣れるのかにこだわって制作。

また、釣れた時の釣り人の笑顔にもフォーカスし、釣りの楽しさも徹底的に追求している。

志摩沖ティップラン 聞き誘いでモンスター狩り

狙いは3kg!春の志摩沖は、でかアオリイカの宝庫だ

「今回の目標はずばり3kg超のアオリイカです」と話すのは、関東でアオリイカ釣りをはじめ、マルイカ釣りなどにも精通する、がまかつフィールドテスターの中村勇生さん。

イカ釣りが好きすぎて周囲からは、「イカオ」君の愛称で知られる名手だ。

そんな中村さんが、三重県志摩沖へとやってきたのは3回目。

「1回目は釣れるには釣れましたが、船中2ハイのうちの1パイでどんな釣りが有効なのかを分析できずです。2回目は昨日。昨日は船中でもアオリイカが上がらず…でした」ということで、今回は明確に志摩沖アオリイカティップランの傾向をしっかりと見定めたいとのことだ。

中村さんの得意釣法の1つに「聞き誘い」という釣り方がある。

簡単に言うと「エギを動かした後にステイさせるのが定番のティップランですが、ここでゆっくりとエギを動かすことでリアクションバイトにつなげる」というものだ。

詳細は実釣の中で見せていただくことにして、話を聞いてみると「関東でのティップランでは、シーズン初期に当たる11、12月から翌年1月には数が釣れます。そんな時期には聞き誘いで実績が上がっています」とのこと。

ただ「冬場で数が少なくなっている大型アオリイカに対しては、この聞き誘いが有効かどうか…はまだ明確に試すことができていません。今回は、聞き誘いが大型のアオリイカに有効かどうかの検証もやってみたいですね」と張り切る。

この日お世話になった「フィッシングポイント志摩」の谷口船長は、自らがティップランに精通しアドバイスも的確だ。

谷口船長曰く「志摩沖のティップランは特に巻きシャクリの際のアクションは大きく、激しいシャクリをしないと釣果につながりません。まずはそこですね」。

アクション主体の釣りに対応した強いロッド「EGTR・X」

志摩沖では谷口船長の言うように派手なアクションで誘うのが、アオリイカに出会うための近道だ。

そこで、しっかりとエギを動かすことができるロッドが必要になってくる。

志摩沖に精通するサポート役のがまかつ・伊藤さんが愛用しているロッドはラグゼ「EGTR・X・ULTIMATE」の「S65ML+-solid」。

超越した軽量化に対して、強度面も追求したモデルで、「ML+」とは「M」クラスのブランクスの強さに、「ML」クラスの柔軟なティップを備えたタイプだ。

対して、中村さんのロッドは同じくラグゼ「EGTR・X」の「S65M+-solid」。

2人ともシリーズ中、もっともヘビーなタイプのロッドを選んだのもしっかりとエギを動かせるパワーと、釣れるアオリイカが大きいからに他ならない。

ちなみにエギは30~40gを中心に、シンカーを足して合計60~80gになるよう準備。

これを潮、船の流れや水深によって調整していく。

基本的な釣り方としては、着底後「タッチ・アンド・ゴー」で即座に巻きシャクリでハンドル5回転ほど巻き上げてステイ。

反応がなければ、1度回収して再投入する。

あまり何度も落とし直さないのが志摩沖流である。

そして、前述のエギの重さの調整については、伊藤さん曰く「道糸の角度が45度になるように調整します。船が流れず垂直になってくるようなら軽く、着底の際に糸の角度がつきすぎるなら重く…といった具合で、こまめな調整が必要です」。

水深は30~60m。

中村さんは「普段は水深50mまでの釣り。それを超えると私にとっては未知の水深ですよ」と笑う。

夜明けを待って、深谷水道を抜けて志摩沖へ。

ポイントに着くと思ったよりも風がない。

さらに潮と風が同じ方向なのか、エギを投入すると道糸はほぼ垂直に。

ティップランではかなりの悪条件スタートとなった。

風が吹き始めた瞬間にアオリイカ1kg超が登場

船長が少しでも風の通るエリアを探してドテラで流す。

当日の同船者は5人。

それぞれが志摩沖のティップランにハマっているアングラーだった。

数回の移動を繰り返していると、ようやく風が吹き始め、ラインの角度がつくようになってきた。

さらに潮の方向も逆になり、ラインを斜めにできるようになった。

船長から「次上げたら待っていてください。移動します」と言い終わらないうちに、30gのエギに30gのシンカーを付けていた伊藤さんが「来たよ~」と大きく声を張り上げた。

「ML+」調子の「EGTR・X・ULTIMATE」が心地よく曲がり、アオリイカの重量感を受け止める。

無理はせずにゆっくりと寄せると、かなり沖のほうでアオリイカが浮いた。

結構なサイズだ。

「1kg超したくらいかなあ」と伊藤さんが言いながら寄せ、中村さんがタモ入れ。

1260gの雌アオリだった。

「活性が低いのか、ほとんど明確なアタリは出ませんでしたよ。こんな微細なアタリが取れるのはソリッドティップならでは…でしょうね」としてやったり。

そこで、もう少し流してみることにした船長からは「その大きさの雌がいるなら、2kgクラスの雄アオリイカがいるかも~」と意欲を掻き立てるアナウンスが…。

ただ、そこからは船中に平穏(?)な時間が流れ、再び船長が移動の判断。

船は徐々に南下し、気がつけば志摩半島の先端、御座岬の沖まで来ていた。

この辺りは大王崎から御座岬沖にかけて、海底地形に変化の富んだ場所が多く、特に片田の麦崎の沖には馬の背状の「山」があり、浅くなっている。

ここに潮が当たり、複雑な潮流に魚が集まるので魚影が濃い。

もちろん、古くからのアオリイカ釣り場として知られている和具大島周辺も、さまざまな魚が潜む好漁場となっている。

中村さんが自己記録となる2080gをキャッチ

和具大島を北に見ながら船はポイントを変えつつ探っていく。

徐々に北西の風が強く吹き始め、今度はラインに角度がつきすぎるようになるほど。

そんな中、水深40mラインで中村さんのソリッドティップに小さなアタリが出た。

大きくアワせると「EGTR・X・S65M+-solid」のパワーあるバットが大きく曲がり込んだ。

ジェット噴射で抵抗するトルクを見ている限り、かなりの大型のようだ。

ようやく掛けた1パイ目に、つい慎重になる。

「ここでバラしたら後悔しかないですからねえ。じっくりと寄せます」と言いながら、遥か潮下からロッドのパワーで寄せる。

30m以上離れた水面に浮いてきたアオリイカを見て伊藤さんと船長が同時に「デカいよ~。慎重に」と声をかけた。

伊藤さんがタモ入れをして船上に取り込むと、その大きさを再認識できた。

中村さんのティップランでの自己記録は1600g。

それを軽く超しているのは間違いない。

計測の結果、2kg超えの2080g!

驚いたのはそれが雌イカであったこと。

船長曰く「雌でこのサイズは志摩沖でも珍しい」。

ということは、さらに大きな雄イカもこのエリアにいる可能性が高い。

反応があったので、船を戻して同じ筋を流してみる。

ここで、中村さんが「1パイを釣ったのでここからは聞き誘いを試してみます」と得意の釣法を開始。

エギの動きに変化を与えることでリアクションを誘発

聞き誘いの理論を改めて中村さんに聞いてみると「まず、ボトムからのシャクリ上げは通常のティップランと同じです」と前提した上で「本来ならステイさせるのが定番のティップランですが、ここでわざとティップが頭上に来るくらいまでロッドでゆっくりと引き上げます。これが聞き誘いです」とのこと。

エギの頭を下げるのも、実は「イレギュラーな動きでリアクションを誘発するために、わざとしています」とのことだ。

聞き上げる速度はさまざまで、秒針くらいの時もあれば、もう少し速いこともあるとか。

聞き誘いのアクションにはメリットがいくつかある。

「まずは、ステイさせているとエギは船に引っ張られてスライドしますよね。どっちみちエギはステイしているのではなくて動いている。それならさらに動きを与えてやることで、アオリイカにアピールするんです」と言う。

聞き上げることでラインに張りが生まれ、小さな反応がロッドティップに伝わりやすく、アタリが非常に大きく出るのが特徴だ。

注意点としては、あまり頭上までティップを持っていくと「頭上でアタリが出た際にアワセ幅が取れないので、そこは余裕をもって止めるのがコツ」とのこと。

また、聞き上げ中にエギを安定させるため、エギは通常の重量設定にプラス10gが基本だそうだ。

そして、「実は重要なのがロッドのセッティングなんです。軟らかいロッドを使うと聞き上げの際にしっかりと自分のアクションができず、フワフワとエギが動いて安定しません。なので、しっかりと安定して聞き上げることができる張りのあるロッドが望ましいですね。また、小さな反応でもしっかりとアワセが効く強いバットが理想です」とのことだ。

それらを集約したロッドが、中村さんが愛用する「EGTR・X・S65M+-solid」なのだ。

船中唯一のアタリは聞き誘いで引き出した

船を戻して1投目。

聞き誘いでティップを持ち上げた際、グイッと明確な反応が出たかと思った瞬間に大きくアワせた中村さん。

ロッドがグーンと曲がり、重量感が伝わって「来た~」と叫んだ次の瞬間、フワッと重量感が抜けた。

頭を抱えた中村さんだったが「横抱きだったんでしょうか。でも、聞き誘いで反応しましたよ」と、落ち込むよりもうれしさのほうが大きい様子。

依然、船中ではアタリがないまま、数回の移動をした後、聞き誘いを繰り返す中村さんに再びヒット。

「今度こそバレないで~」と叫ぶ中村さんだが、しばらくのやり取りでもバレることなく水面に浮かせることができた。

1パイ目よりは小さいものの、1kg超えの立派なアオリイカだ。

測ってみると1600gのこれも良型。

そして、このイカも雌…。

船長も首を傾げる雌イカオンリーだ。

午後からは風が弱まり、移動を繰り返しまくったが、ラインの角度がつかず、そのまま船中ではバイトもない状態のまま終了となった。

この日の釣果は伊藤さんが最初に仕留めた1260gと、中村さんには2080gと1600g、そしてバラシはしたものの、合計3回のアタリをとらえた。

そのうちの2回が聞き誘いによるもの。

ちなみにこの日は船中でアタリを出したのは、2人の合計4回という渋い状況だった。

が、聞き誘いに変えてから2回のアタリを出せたというのは、やはり聞き誘いがこの大型アオリイカにも有効な証拠だ。

「厳寒期から春にかけての大型アオリイカに対しては、ほとんど聞き誘いの経験がなく、私自身もどれほど通用するのかが分かりかねていました。今回、この状況から大型アオリイカにも聞き誘いが十分有効であることが分かっただけでも、関東からやってきた甲斐がありましたよ」と笑う中村さん。

今回の釣行で、初期に当たる晩秋の数釣りだけではなく、冬から春のティップランでも聞き誘いが有効なことが分かったことは、非常に大きな意味を持つ。

現在、中村さんの得意技として少しずつ知られてきた聞き誘いだが、全国区のテクニックとなる可能性が大きい。

●交通:伊勢自動車道の伊勢ICで下り御木本道路から伊勢道路に入り志摩方面へ。国道167号から260号を経て御座方面へ進んで村上信号の先を右へ入る。

●問い合わせ:フィッシングポイント志摩(TEL:090・8952・6646)

(文・写真/松村計吾)

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ライター紹介

松村計吾

松村計吾

大学で水産無脊椎動物の研究を経て、釣り出版社に入社後、30年以上釣り雑誌や釣り情報紙の編集を手掛ける。取材などで釣りの現場に出ることはもちろん、休日などのプライベートでも常に釣りシーンにハマっている。得意な釣りは船のテンヤタチウオ、カワハギ、エギング、イカメタルなどだが、日本全国を飛び回りあらゆる釣りを経験。ちなみの甲子園の年間シートも所持。甲子園でのビール消費量も球界一とか・・・。