釣果とロッドの写真

憧れのヒラスズキ、沖磯という選択肢~とある磯師、初めてのヒラスズキとの遭遇~

FISHING JAPAN 編集部

荒磯の王者ヒラスズキ。

ルアーアングラーであれば、誰もが憧れ手にしたいターゲットに違いない。

だが、磯というステージで、しかもサラシが出ていることが条件となると、最初の1匹に出会うことは容易ではない。

そんなヒラスズキに挑んだとある磯師の話。

南康史

キングの異名を持つクロダイ磯師のカリスマアングラー。

普段は長い磯竿を駆使し、修羅のごとくクロダイを釣りまくるが、時にエギングロッドを手にアオリイカを狙ったり、チヌ釣りで遭遇したシーバス、青物を狙ったり、近所にバス釣りにでかけたりと、何気にルアーアングラーな一面もある。

マイブームはキジハタのショアジギング

ただし、ヒラスズキはフカセ釣りのゲストでした釣ったことがない。

がまかつ・サンラインフィールドテスター。

ヒラスズキというルアーアングラー憧れのターゲット

ルアーアングラー憧れの対象魚といえば、オオニベ、アカメ、ヒラスズキといったところだろうか。

その中でもヒラスズキは九州・四国や本州の太平洋側を中心に生息していて、生息域が限られるオオニベやアカメよりは釣るチャンスがある。

しかし、ヒラスズキもまた、容易に釣れる魚とはいいがたい。

釣ることが難しい最大の理由は、大荒れの磯が最高の釣れる条件であることがあげられる。

大阪であれ、東京であれ、都市近郊に住んでいる場合、まず、磯は身近なフィールドとはいえない。

仮にヒラスズキが釣れるらしい磯の場所が分かったとしても、その磯に釣れる日に立つ。

つまり風が吹いている日に、その場所に行くということは、サンデーアングラーにとっては容易なことではない。

まだしも、経験者が案内してくれる場合やヒラスズキのベテランアングラーなら、それでもなんとかなろうが、いまだ1匹も釣ったことのない人が「いつかヒラスズキを釣ってみたい」とあこがれていて、実際のピンポイントを知らない場合には、最初の1匹までの道のりは果てしなく遠くなる。

和歌山、三重、千葉、神奈川、静岡でヒラスズキを手にしようと思うと、かなり苦戦することは必至。

目ぼしいメジャーポイントは事前に押さえられていて、順番待ちということさえあるという。

これではヒラスズキを釣るのに何年もかかってしまうどころか、いよいよ1匹も釣ることができなくても仕方がないといえる。

それゆえ、今も昔もヒラスズキはルアーアングラーの憧れの魚なのである。

岡山県在住の磯師・南にとってのヒラスズキという存在

南康史。

クロダイのフカセ釣り師として知らない人はいないほどのカリスマアングラーである。

岡山県在住。

身近なフィールドは瀬戸内海で、もちろん1年の大半はクロダイのフカセ釣りを行っている。

ただ、磯師にしては珍しく、ルアーもそれなりにたしなむ。

「近所に流れる高梁川で夏になるとバスがシェードに隠れるので、釣りやすいですね」

エギングショアジギングをする磯師は少なからずいるものの、バスまで釣る人は珍しいに違いない。

もちろん、アオリイカ、キジハタ、シーバスに青物、マダイまでは過去に何度も釣ったことがあった。

だが、実はヒラスズキを釣ったことがない。

「厳密にいうと、ヒラスズキを『ルアーで』釣ったことはない、ですね」

実は、愛媛県のようなヒラスズキの生息域で磯釣りをしているとオキアミにヒラスズキが食ってくることはある。

もちろん、頻繁とはいえないが、南ほど磯に立つ人間であれば、過去に数度はそんなタイミングがあってもおかしくはない。

だが、ヒラスズキはルアーで釣りたい、と南は思っていた。

そのチャンスが巡ってきた。

振り出しの本格ルアーロッドというコンパクトな選択肢

4月下旬。

世の中、クロダイのハイシーズンである。

本来なら足繁く磯に行き、クロダイのフカセ釣りに精を出しているタイミング。

ところが、この日、南が手にしていたロッドは8.6フィートのエギングロッド『イージーライダー』と、11フィートのショアジギングロッド『メタルキャスト』だった。

このロッド、振り出し式のロッドで、コンパクトな仕舞寸法という変わったルアーロッドである。

実は、磯師に向けたパックロッドで、磯バッグに常備し、青物のナブラアオリイカの回遊があったらすかさず取り出して狙うためのロッド。

狙いは青物で日振島の沖磯へ渡船で渡っていた。

ついでに、アオリイカも釣ろうという欲張りな釣行であった。

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しかし、なかなか釣り人が思うようにはいかないのが魚釣り。

朝まずめからメタルキャスト11XHを振り回すものの青物の反応はなく、イージーライダー8.6Mに持ち替えてアオリイカを狙うもチェイスすらない。

キビナゴと思わしきベイトの群れは確認でき、時折、何かに追われている様子だが、南の操るルアーに反応はない。

この日はベタ凪であった。

だが、奇跡的なベタ凪であり、長続きしないことはわかっていた。

「出船できるか否か微妙な予報でしたからね。

案の定、昼からは確実に強風が吹いて、船はかろうじて出せるものの、早上がりの可能性もあると船長には言われていました」

だから、別の日がいいのではないか、と打診されたそうだが、なにせ、この日の釣り事態、1週間、日程をずらした取材なのである。

これ以上、遅らせる訳にもいかなかった。

そうこうしている間に、正面からの風が吹き始め、やがて強風となった。

青物とアオリイカ狙いの釣行のはずが爆風に早変わり

さすがは風神・雷神の異名を持つ南である。

南の行くところに時化あり。

取材を2度も3度も延期させることがある荒れ男なのである。

「満潮からの下げ潮で激流が走り、青物が寄ってくるとのことだったんですが、海の雰囲気はいいですけど、反応がありませんね。

見回りのタイミングで移動してみましょうか」

メジナがひと段落しているからなのか、他の釣り客は1組のみ。

風が強いため、あげることのできないポイントも多いが、いくつかの一級ポイントが空いているという。

渡船のデメリットは、足場を1か所に固定されラン&ガンで次々ポイントを変わることができないこと。

だが、メリットも多い。

まず、船以外で渡ることができないまっさらなポイントに渡してもらえること。

こういった沖磯のポイントは、プレッシャーが低いのはもちろんだが、潮が走りやすくベイトが入りやすいため活性が高く、本来は魚影が濃い。

一部、都会に近いエリアではルアー専門で乗る沖磯の釣り客も増えつつあるが、地方の渡船はまだまだ磯釣りが主で、ルアーの利用客は極めて珍しい。

そういった背景もあり、今回、お世話になったはまざき渡船では背替わりというポイント移動の仕組みがあり、昼前のタイミングで場所を変わることができた。

サラシにルアーを撃ち込むとヒラスズキが群れをなしてチェイス

「裏っかわのサラシに投げたら、ヒラスズキがよく釣れますよ」

瀬替わりの際、去り際に船長がアドバイスをくれた。

見ると日振島の地磯と渡礁した瀬の間の水道には、大きなうねりが入るたびにサラシが広がっていた。

イージーキャストという振り出しのエギングロッドは、確かにエギ用のロッドではあるが、ジグもミノーもキャストできる万能ロッド。

それゆえアオリイカエギングはもちろん、南はキジハタやシーバスマダイさえもこのロッドで手にしていた。

「うわっ、きた。

ヒラ……スズキ、じゃないですか!?あっ」

サラシのエッジに9㎝のミノーを送り込み、巻き始めるやいなや、銀ピカの魚体が襲いかかってくるのが見えた。

だが、首振りと同時にロッドのテンションがなくなった。

「バレた」

回収しようと巻き始めたルアーに再び何者かが襲い掛かるもフッキングには至らない。

「いや、うわっ、すっごい群れ。

あ、食った。乗った乗った」

見るとサラシの切れ目にはルアーに襲い掛かろうと10匹を超える黒い魚の群れがチェイスしていて、バレたそばからルアーを取り合いしている。

3度目のバイトをものにし、フッキングに成功するも、エラ洗い一発でルアーを飛ばされた。

だが、チャンスは終わっていない。

ついに取り込んだ南にとって記念すべきヒラスズキ

次の一投、ドスンとロッドに当たるや間髪入れずに強烈なあわせを叩き込む。

が、そこからはまさに磯師の真骨頂。

レバーリールを駆使して、ヒラスズキの跳ねようとする動作を抑え込む。

そのうえで、泳ぐコースをコントロールし、体力をじわりと搾り取る。

プライベートな釣りなら、もっと攻撃的にパワーファイトに持ち込んだかもしれない。

だが、これは取材の釣り。

千載一遇のチャンスとはいえ、このバイトが永遠には続かないことを百戦錬磨の南は知っている。

恐らくまだ続くだろう。

だが、この1匹はバラせない。

ヒラスズキはシーバスに比べ、引きが強く、跳ねやすいといわれる。

決して大きくはない獲物だとは知りながら、慎重に距離を詰め、タモをのばす。

だが、荒れた海面がヒラスズキに味方する。

取材ということもあろうが、いつになく慎重な南である。

50㎝を超える年なしのクロダイを電光石火の早業でランディングに持ち込む技はなりを潜め、ヒラスズキがギブアップし、海面に横たわる瞬間を待つ。

「やった。はじめてルアーでヒラスズキを釣りました。

いや、ヒラスズキって、おもしろいですね」

60㎝には届かないフッコサイズであったが、エギングタックルには十分な獲物。

人生初のルアーで釣ったヒラスズキであるから、慎重であり、緊張していたに違いない。

ましてメインラインがPE1号である。

サラシの出る磯場には不安の残る細さ。

「ただ、リーダーエギング用ではなくルアー用の20ポンドなんで、多少の強度はあります」

2匹目は早かった。

ミノーからスイムベイトに替え、水面で漂わせながらサラシの切れ目とスリットが交差する1点に導くと、海面まで突き上げてド派手なバイトをしてきた。

「出た出た。すごい活性だ」

ピンポイントで口を使わせる場所の見極めはさすがである。

2匹目ということもあって、アグレッシブに寄せ、あっという間に取り込んだ。

その次に掛けた獲物がデカかった。

竿を操作し、制御を試みたが、押し切れずにレバーを解放し、糸を出した。

「うーん、沈まれたか、オーバーハングするシモリにラインをこすられてしまいましたよね」

岸釣りで無数のクロダイを捕らえてきた南だからこそ、荒い磯でもショートロッド・ライトラインでなんとか戦っていたが、実際、ヒラスズキを狙うためには軽いタックルが必要といえるだろう。

ショアジギングロッド『メタルキャスト11』こそヒラスズキにジャストマッチ

そういえば、ショアジギング用のロッドも持っていた、と思い出したかのようにメタルキャスト11XHに手を伸ばす。

「XHというかMHのほうがよさそうですがね」

11フィートという長さはヒラスズキロッドの主流となりつつある長さ。

ヒラスズキに狙いを絞れるなら、ラインもPE1.5~2号にリーダー40~50ポンド程度に落とした方がいいだろう。

だが、青物専用に仕立てているため、メインラインPE4号、リーダー80ポンドがセットしてある。

ここまでの太さになると、ファイト時には心強いがシーバス用のルアーを遠くまでキャストするには抵抗になる。

しばらく沖に向かって青物を狙いリトリーブを繰り返す。

「チェイス、チェイス、あー、食わない」

2匹のメジロがチェイスをするものの、ルアーには襲い掛からない。

何度か繰り返し、潮のタイミングか、別の魚なのか、岩の陰から襲い掛かってきたメジロが、ルアーをパクパクとバイトするものの手元には伝わらない。

そしてアワセが空振りに終わる。

「なんだろう。

確実にバイトしているのに、食い切らないんでしょうかね。乗らない」

そうこうする間に、青物のチェイスがなくなってしまった。

そのままのタックルで、潮表側の岩と岩の間にあるスリットをゆっくりと通す南。

ストップ&ゴーでスローに巻くシンキングペンシルにヒラスズキが下から突き上げてきた。

「よし、乗った。これは頼もしいタックルですね。切れる気がしない」

と余裕をもってロッドを絞り込むが、残念ながらフックアウト。

「ちょっとロッドが強すぎますかね。いや、魚が小さいか」

その合間に、エギングアオリイカを1杯、仕留め、この日の釣りを終えた。

「ヒラスズキ釣り、最高に楽しいですね。

またやりたい。

あと、青物は課題ですね。

秋はいっぱいいるんですが。春に狙って釣るのは難しいですね」

地方の沖磯にはたくさんのヒラスズキがいてスレていない。

もちろん、サラシがなくてはなかなか口を使わせることはできないが、ハイプレッシャーの地磯と違って、ごく薄いサラシでも釣れることさえある。

ただし、いつでもサラシができているわけではない。

大荒れの日には欠航するのが普通だ。

そういう意味では、安全な時に磯に渡れるのだが、サラシが出ているケースは多くはない。

青物やアオリイカとセットでヒラスズキを沖磯で狙ってみてはどうだろうか。

「ブリ、シーバスマダイ、キジハタ、アカハタ、シイラ、タマンなど、各地の磯でルアーで釣れるターゲットは多いですよ。

僕のように、それほどルアーの経験がない人間でも十分に反応してくれますから。

キジハタなんかだと、底にジグが付く前にはもう食いついているなんてことも珍しくないくらいです」

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