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林賢治が実践する海上釣り堀釣果倍増計画!状況・活性に合わせた柔軟志向のススメ

松村計吾

【テレビ大阪系列・毎週土曜日午前7時放送「フィッシングDAYS」サイドストーリー第20話】番組内で話題になったワザ、アイテムについて”深堀”するもう1つの「フィッシングDAYS」。

「フィッシングDAYS」はテレビ大阪を中心に、テレビせとうち、TVQ九州放送、テレビ和歌山、高知放送で放送されている、がまかつ提供・テレビ大阪制作の釣り番組。

ハゼなどの極々小さい魚から、ルアーを使った大型魚釣りまでを、どうやったらより釣れるのかにこだわって制作。

また、釣れた時の釣り人の笑顔にもフォーカスし、釣りの楽しさも徹底的に追求している。

達人の技教えます 海上釣り堀を100倍楽しむ方法

春から青物が高活性な和歌山・釣堀紀州の魅力

「今、ハマチ・メジロの活性が異常に高くて、青物狙いではブリやカンパチも入れてるんですが、なかなか大物の口にエサが届かなくて…」と早朝の受付事務所で、当日お世話になった「釣堀紀州」の川口社長が笑顔で迎えてくれた。

本来、冬から春の低水温期には青物の活性が上がりきらず、釣り堀によっては根魚など、低水温を好む魚を放流する場所もあるのに、今年は水温が高めに推移している影響なのか…。

今回、春の海上釣り堀を訪れたのは、がまかつフィールドテスターの林賢治さん。

海上釣り堀はもちろん、波止のファミリーフィッシングから、チヌやグレのフカセ釣り、投げ釣りまで精通するまさにマルチアングラーだ。

「海上釣り堀で釣果を上げるのは考え方ひとつです。自分の釣りたい魚にこだわらず、イケスの中の状況に合わせて、その時に狙うターゲットを見定めていくことです」と話す林さん。

彼の釣り堀での信条が「釣れる時に釣れる魚を釣れる方法で釣る」である。

ちなみに釣堀紀州は、和歌山県有田郡広川町唐尾の唐尾漁港に受け付け事務所と乗船場がある。

ここから渡船に乗って、ほんの10分ほどのクルージングで、イケス群が並ぶ湯浅湾の鷹島の島陰に渡してもらう。

超大型渡船で揺れることもなく快適に釣行できるのも魅力だが、何といっても人気の理由は魚の良さ、放流量の多さ、そして常駐するスタッフの数の多さにある。

また、スタッフは親切で釣れなければ横についてアドバイスをしてくれるので、初心者グループでの利用も多いという。

受付事務所はエサの売店も併設されており、こちらも大型エサ店に負けない種類のエサが揃う。

さらに、釣った魚の内臓や鱗の処理サービス(有料)も行っているというから至れる尽くせりなのだ。

林さんの愛竿「海上釣り堀アルティメイトスペック」シリーズの特徴

事前情報では、現在放流されている魚はマダイ、シマアジにブリ、ハマチ、カンパチなど。

ブリ族はサイズに幅があり、メジロクラスも混じっている。

また、冬場に放流されていた大型ブリやサーモンの居残りもいるとのことだった。

そこで、林さんが持ち込んだタックルは3種類。

がまかつ「海上釣り堀アルティメイトスペック」シリーズの「誘い万能S3.3m」、「攻めさぐりB3.3m」、「くわせロングB4.0m」だ。

同シリーズは元々海上釣り堀で人気のある4つの釣りに特化した「ヘチ誘い‐3.0m」、「ズボ万能‐4.0m」、「くわせ‐3.0m」「泳がせ‐3.3m」の4アイテムがラインアップされていたが、さらにこだわりを持たせた3アイテムが追加された形だ。

今回の竿の使い分けを林さんにうかがうと、まずはマダイやシマアジを狙った探り釣りでは、繊細な穂先でマダイなどの微細な前アタリやモタれるような反応も分かりやすい並継・細みタイプのベイトロッド「攻めさぐりB3.3m」を使うとのこと。

青物の放流があればすぐに青物狙いに移行できるよう、従来の「くわせ‐3.5m」のロングタイプで、少し先までを探ることができる全長4mの設定とした「くわせロングB4.0m」で、探り釣りでの青物狙いに青物用の仕掛けをセット。

最終的にはイケスの中央で、探り釣りでは届かないエリアを攻めるためのウキ釣りへ。

繊細な穂先を搭載しウキ釣りからミャク釣りまでこなせる並継・スピニングタイプの「誘い万能S3.3m」にはウキ釣り仕掛けをセットしておく。

実は事前に3タイプの竿に確実に仕掛けまでセットしておくのが重要。

時合いを逃さず、確実に狙った魚をキャッチしていくにはタイムロスは避けたいのだ。

定番のマダイ狙いで探り釣りを主流にする理由

当日は平日にも関わらず釣り人は多く、林さんは2番船でイケスへ。

イケスに到着すると、1番船の釣り人たちは準備も終えてスタートの合図を待っている状況だ。

当日、2番船で到着した人のスタートが「8時5分」とアナウンスされた。

ここから5時間、つまり13時5分までが釣りタイムとなる。

まずは重要な作業であるタナ取りからスタート。

形状記憶合金を素材とし、底の網の目を抜けにくい直径90mmの円形の「海上釣堀タナとりオモリKG」を使って、竿下、少し手前、際と網の底までの距離を測る。

結果、竿下で8mほど、そこから際では1mほど浅いことから、きれいなお椀状の網であることがイメージできる。

タナを測り終わりスタートの準備が完全に終わったところで、合図の前にマダイの放流が行われた。

「実はこれがありがたいですね。放流直後は活性が上がるので、スタート時に高活性の状態ができるわけです。これが前日に放流されていたりすると、イケスの中が落ち着いてしまっていたり…」と説明を受けているとスタートの合図が!

まずは「攻めさぐりB3.3m」でオモリ1号を鈎上約30cmに打ったシンプルな仕掛けで、練り餌をエサにスタート。

ちなみに、鈎はがまかつ・MARINEBOXシリーズの「真鯛・シマアジベーシックM3号」。

簡単に釣れそうな状況からウキ釣りでも良いのでは…と思いがちだが、そうではない。

「探り釣りで始めるのは、タナの探り幅が簡単に変えられること。そこで、エサのフォール速度やタナをスピーディに変更して探ることで、その時にマダイが反応するパターンを見つけだします」と林さん。

やや比重の高い茶色系の練り餌で反応がないので、次は比重がやや低くフォール速度が遅く、バラけやすい黄色系の練り餌にチェンジ。

すると底から50cmほど上で、穂先にコツン、コツンと反応が出た。

しかし、2投連続で食い込みアタリには至らない状態が続いた。

「ちょっと食いが渋いのか警戒しているのか、オモリを上げてみます」と林さんがオモリを鈎上70㎝ほどに上げた。

「オモリを嫌うことがあるのと、もっとフォールを自然にさせたい」とのことだったが、見事にこれが大正解。

コツン、コツンと反応の後、クーッと竿先が舞い込んだ。

35cmほどのマダイが姿を見せ、1匹目をゲット。

これが正解だったのか、同じパターンで35~40cmのマダイが4匹ほど連発した。

練り餌で反応が悪くなると、エサのローテーションだ。

当日、林さんがマダイ用に持ち込んだエサは3種類の練り餌のほか、むきエビ、鶏のササミ、シラサエビ、アオイソメなど。

この中から次に選んだのは鶏のササミ。

だが、こちらはお気に召さないのか反応がない。

「この時間は活性が高く、時間をかけるのはもったいないです。どんどんアタるパターンを探していきましょう」と1投で見切りをつけ、次はむきエビへ。

むきエビにするとびっくり。

すぐにアタリが出てヒット。

さらにむきエビでマダイ2匹を追加した。

林さんの言う通り、あまり1つのエサで長く我慢するのは時間の無駄なのだ。

そこからシラサエビやアオイソメなどもローテに加えて、竿下がダメなら少し手前、さらには際などを攻める。

探り釣りなので、タナの設定も自由自在。

さらに数匹を追加すると、さすがにアタリがなくなってしまった。

と思っていたら、待望の青物放流の時間がやってきた。

何を置いても絶対に狙いたい放流直後の青物

「メジロ、ハマチ入りまーす」とスタッフが声をかけ始めたかと思っていたら、林さんはすでに「くわせロングB4.0m」に1mの6号ハリスが付いたMARINEBOX・青物(ブリ・カンパチ)M6号をセット。

鈎上15cmほどの位置にオモリ1号を打った。

エサは生きたウグイだ。

「生きた魚の場合、鈎とオモリを離すとエサが泳ぎすぎてタナがボケたり、青物が追いきれなかったりするので、短くします。青物は基本的にスイッチが入れば生きエサしか見ていないので、オモリはそう気にしなくてもよいですね」と言う。

タナの設定はマダイよりも少し下。

底から50㎝ほど上まで仕掛けを下ろすと、竿先が踊りだした。

「小魚が嫌がって逃げている状態です。このタナに青物が潜んでいるという証拠、つまり、狙うタナは合っていると言うことです」と話し終わるか終わらないかのうちに、竿先がギューンと舞い込んだ。

「来ましたよ。ドンピシャ!」とアワせた林さんの竿が大きく曲がる。

「このくわせロングはとんでもなく強い竿なので、角度さえ保っていれば大型青物にも負けることはありません。竿が曲がり込んで反動で浮かしてくれるから、魚の弱りも早く必然的に取り込みもスムーズにいけるんです」と林さん。

走り回る魚を水面に浮かせてタモ入れ成功。

70㎝を超すメジロの登場だ。

鈎を外したかと思うとすぐに新しいエサを付けて投入する林さん。

「今、やり取りの最中に掛かった魚の後ろにメジロが付いて泳いでいましたよね。あの青物は活性が高いのですぐに釣れると思います」と投入した途端、同じパターンで連続ヒット。

これも同サイズのメジロだ。

さすがに青物を2匹連続でヒットさせると、魚に警戒心が生まれるのか反応が少し鈍くなった。

ここで再び放流タイム。

お次はシマアジだ。

ただ、「シマアジは無理して狙わなくてもOKですよ」と林さんは話す。

と言うのも、「シマアジは食い気が出てくると、比較的浅いタナをウロウロと群れで泳ぎ回ります。それが目視できてからでも遅くはないですね」と言いながら、今度は数時間ほど狙っていなかったマダイの残りを探すことに。

シマアジに続いて、ほどなくカンパチの放流もあり、残りは最後のマダイ放流のみ。

気がつけば、朝からマダイ、ハマチ・メジロ、シマアジ、カンパチ、そして、マダイ…と5時間の釣りタイムの中で5回も放流があるのだ。

探りで届かないイケス中央をウキ釣りで仕上げ

釣りタイムも残り1時間ほどとなった正午頃、仕上げとしてチョイスした釣法はウキ釣り。

「探り釣りでは竿下までを狙いますが、ここまでの釣りで竿下の魚はほとんど釣りきったと考えます。そこで、イケス中央付近の探れていない場所をウキ釣りで狙います」とスピニングロッドの「誘い万能S3.3m」にウキ釣り仕掛けをセット。

シマアジも考慮に入れて、マダイが釣れていたタナより少し浅めにタナを設定した。

ここでは生きエサであるシラサエビを2匹掛けで使う。

反応がないので、鈎のチモトにらせんが付いた試作鈎の「ダンゴプラス」に変更。

らせんに練り餌を付けて、鈎にはシラサエビを付けるという二段構えだ。

練り餌の比重でエサが速くなじみやすい利点もある。

仕掛けがタナまで届いてウキが立ち、練り餌の重さで少し沈む。

すると林さんが少し強く、竿をシャクるような動作で誘いを入れる。

「シラサエビが跳ね踊るように竿でちょんちょんと動かしてやるのがシラサエビエサを使った際の誘いです」と誘った後にウキが落ち着くと、チョン、スーッとウキが水面下へ…。

アワせた竿が大きく曲がるが、どうもマダイやシマアジの引きとは比べ物にならない重量感。

カンパチじゃないですかねえ」と林さん。

竿は「誘い万能S3.3m」。

落ち着いて竿の角度を保つ。

が、相手もかなりの強引。

満月に曲がる竿を見ても重量感が分かる。

それにしても、ものすごい粘りのある竿である。

「今ね、マダイ用にハリス3号なんですよ。無理はしませんけど、竿が胴から曲がり込んでくれるでしょ。だから、3号でもしっかりと溜めることができるんです」と、しばしのやり取りの後に浮かせたのはやはり70㎝級のカンパチだった。

これで青物はメジロ、カンパチともにキャッチに成功した。

再び、マダイ狙いに切り替えた瞬間、林さんの視界にシマアジが入ったようだ。

最後にシマアジが視界に…。自然フォールで連発

「シマアジが見えますね。狙ってみましょう」と竿を再び「攻めさぐりB3.3m」に持ち替え、オモリを外して練り餌で投入した。

「シマアジはゆっくりと沈むエサにすごく反応します。なのでオモリを外して完全フカセで狙います。タナも比較的浅いので軽い仕掛けで攻めやすいんです」と話す。

ややフカセ気味に道糸を操作し、水面にも浮かせて徐々に沈むのを待つ。

すると、水面に浮く道糸がスッと走った。

これがアタリ

アワせた林さんのロッドが心地よく曲がり、コンコンと小さく叩くシマアジ独特の引きで、キラキラと水面下にシマアジが顔を出した。

ここから35~40㎝のシマアジが3匹連発。

結局、周囲が静かになったラストの時間帯も竿を曲げ続けた林さん。

まさに5時間の釣り時間を最初から最後まで無駄なく使って、釣果を上げていく林流釣り堀の組み立ての神髄を目の当たりにした。

「釣りたいものを釣るのではなくて、状況に合わせて釣れる時に釣れる魚を釣る」ことを意識すれば、結果的に大釣果につながることも実感させていただいた。

●交通:阪和道の広川ICで下り、出口の信号を直進、道なりに進み突き当りを左折。
100mほど先で案内板に従い右斜め方向へ進み、唐尾漁港の最奥へ。

●問い合わせ:釣堀紀州(TEL:080・6128・9432)

(文・写真/松村計吾)

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ライター紹介

松村計吾

松村計吾

大学で水産無脊椎動物の研究を経て、釣り出版社に入社後、30年以上釣り雑誌や釣り情報紙の編集を手掛ける。取材などで釣りの現場に出ることはもちろん、休日などのプライベートでも常に釣りシーンにハマっている。得意な釣りは船のテンヤタチウオ、カワハギ、エギング、イカメタルなどだが、日本全国を飛び回りあらゆる釣りを経験。ちなみの甲子園の年間シートも所持。甲子園でのビール消費量も球界一とか・・・。

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