【スーパープレシード開発ストーリー・前編】 特殊な素材と工法に、技巧が高次元で合致。至高の本調子を携えて伝説的ロッドが待望の復活!
圧倒的な粘りを有する竿として多くのファンにメモリアルな釣果を提供し続けた、がま磯プレシード。 初代のプレシードと2代目のプレシードスペシャルともにあった「柔よく剛を制する」とい…
FISHING JAPAN 編集部圧倒的な粘りを有する竿として多くのファンにメモリアルな釣果を提供し続けた、がま磯プレシード。
初代のプレシードと2代目のプレシードスペシャルともにあった「柔よく剛を制する」という言葉がピッタリの柔軟な調子でグレ釣り(メジナ釣り、クロ釣り)の楽しさを覚えたという磯釣り師も多いことだろう。
そんなプレシードが2021年秋、がまかつのコアなファンの強い要望に応えて復活を遂げる。
その名も『スーパープレシード』である。
ここでは前岡正樹、門野吉洋のがまかつ両テスターと、昨年秋に三重県尾鷲で行なったテスト釣行の写真とともに、『スーパープレシード』が生まれるまでのエピソードに迫ってみたい。
目次
【スーパープレシード開発ストーリー・前編】 特殊な素材と工法に、技巧が高次元で合致。至高の本調子を携えて伝説的ロッドが待望の復活!
圧倒的な粘りを有する竿として多くのファンにメモリアルな釣果を提供し続けた、がま磯プレシード。 初代のプレシードと2代目のプレシードスペシャルともにあった「柔よく剛を制する」とい…
FISHING JAPAN 編集部先代モデルの利点を踏襲しつつ、さらに磨きをかけて復刻を遂げたスーパープレシードだが、完成に至るまでの道のりは平坦ではなかったという。
単に復刻ということであれば難しい作業ではないが、対象はインテッサと並ぶ、がま磯シリーズのかつての看板モデルである。
めったなものは作れないという怖れに近い感情が、構想段階から本格的な始動へとなかなか至らなかった理由かもしれない。
そんな中、竿の大幅な進化へとつながる画期的なカーボンマテリアル、高強度を有する高弾性率炭素繊維のトレカ(R) T1100Gが登場する。
強度が大幅に高まったことで、軽量化とともに第1のコンセプトであるよどみのない柔軟なロッドを製作する道筋が立つことになる。
適度な張りを有しながらも、きれいに曲がる柔軟性を確保するという難題は、先端のカーボンマテリアルの登場によってクリア。 そこに、がまかつならではの長年培われたエッセンスが組み込まれ、理想的なベントカーブが実現されている
そして、ちょうど時を同じくして急展開を見せたのが、兼ねてから構想があったものの適した素材が見当たらないとあって停滞していた瞬間的な衝撃の緩和、つまり竿のブレやタタキを抑制する構造だったが、非常にしなやかかつ衝撃吸収性の高い特殊素材の発見によって構想は実現した。
素材の尖った特性に配慮しながらサンプリングを繰り返すことで、適材適所の配置バランスを見出し、通常のカーボンブランクスにおいて一定時間続く強いブレの抑制に成功する。
初動の振幅は約60%減少、時間にして約1/3のスピードで小さくなるという驚異の数値を実現した設計こそが、スーパープレシードを構成する重要メソッドの「INASYSTEM(イナシステム)」である。
魚の首振りや竿のタタキやブレを緩和し、細いハリスをいたわりながら魚をうまく〝いなす〟やり取りをサポートしてくれるというこのシステムの実効性がわかるエピソードを、西村氏が興奮気味に語ってくれたので紹介しておきたい。
非常にしなやかかつ衝撃吸収性の高い特殊素材によって、竿のタタキやブレが抑制できるINASYSTEM(イナシステム)。 この構造によって、これまで獲れなかった魚を手にすることができる期待感が高まる。 価値あるメモリアルな1尾の可能性が大きくなるのは、釣り人にとってはうれしい限りだ
イナシステムを初めて搭載したテストロッドを手にした九州・大分の猪熊博之テスターが掛けたのはまずまずのサイズのグレ。
本調子特有の柔軟性を活かしつつ、相手をいなしながらじっくりとやり取りしてキャッチしたのは40cm前後の尾長グレであった。
ハリス1.5号で取れたとあって掛かりどころがよかったのだろうとグレの口元を見ると、あるはずのハリがない。
口内へと続くハリスの先を見ると、ハリは完全に口の中に掛かっていた。
通常なら尾長グレ特有の鋭い歯によってかなり高い確率でハリスを切られる状況である(INASYSTEM搭載と非搭載のプロトを使い比べてみると、全てではないがINASYSTEM搭載機ではこうしたケースが見られたそうだ)。
そうした状況で獲れたのは、鋭い歯に対するハリスの擦れがイナシステムによって抑えられたからだろう。
本調子のスーパープレシードが持つ引きに対する追従性はもとより、竿のタタキを抑制するイナシステムが効果的に作用したと考えられる実例だといえる。
これには経験豊富な猪熊テスターも、感嘆の声を上げたそうだ。
このイナシステムを実現する特殊素材と、高強度&高弾性率炭素繊維トレカ(R) 1100Gがタイミングよく現われたことでスーパープレシードの開発は加速する。
1代目、2代目のプレシードのデータを反映しつつ、最新のマテリアルと品質管理に応じたプロダクトが進行し、調整を繰り返しながらテストロッドができあがる。
テスト終盤に至っても試作モデルは多岐に渡った。 テスターの声を反映しながら微調整を繰り返せるのは、自社工場を抱えるがまかつの強みだといえるだろう
そして、ある程度の形になったところで実釣でのテストとなるわけだが、ここで大きな壁が立ちはだかる。
データ上は先代モデルと同様ながらも、テスター陣からは「かつてのプレシードはこんな曲がりの感覚ではなかった」という感覚的な指摘が入ったのだ。
「フィードバックするのはとても苦労しました」と西村氏が言うように、人それぞれの主観を理解するのは雲をつかむような話であり、それを竿に反映するのもまた容易ではない。
スーパープレシードの開発を担当した、がまかつロッド開発部の西村弦氏も、自ら竿を手にしてグレを狙う。 テスター陣の感覚的な指摘の理解度を深めるためにも、欠かせない作業の1つなのだろう
グッドサイズを手にした西村氏。 釣り好きが開発に携わるロッドの期待感はおのずと高くなる
もっとも、こうしたシビアな意見が出ることは優れた観察力を持つテスターを多く抱えるがまかつの強みである。
その意見を調整して完成型へと繋げるクラフトマンシップがあるからこそ、がま磯シリーズは多くの釣り人の支持を得ているわけである。
そして、スーパープレシードも同様に、自社工場を持つ強みを活かして調整と試作を幾度となく繰り返し、さらにテスター陣の意見をしっかりと反映してブラッシュアップ。
そして2020年秋、最終型のテストロッドが完成した。
最終型に至るまでにかなりの試作機が作られたとのこと。 そうして洗練されて登場する、磯竿では初めての本調子モデルからは目が離せない
写真は2020年11月中旬に三重県尾鷲で行なわれたテスト釣行の模様である。
参加した前岡正樹、門野吉洋の両テスターの実釣シーンをご覧いただくと、スーパープレシードが持つ、魚をいなすよどみのないしなやかな曲がりがお分かりいただけるだろう。
テストの舞台は三重県尾鷲の磯。 ウネリの影響で目当てとしていた沖磯に上がれないことから湾内の磯にエントリー。 前岡テスターが1.5号53モデル、門野テスターが1.25号50モデルをメインにしてテストがスタートした
魚を掛けた際の曲がりはご覧の通り。 中間よりやや上方を支点によどみなく曲がる特徴が見てとれる
当日はウネリの影響で沖磯への渡礁ができず、湾内の釣り場での実釣となった。
荒れ模様の沖とは一転して波気のない状況の中、名手たちは良型のグレやチヌを相手にスーパープレシードの性能をチェック。
食い渋りの打開のために細めのハリスを用いたシーンでもバラシはないなど、スムーズに曲がり込む本調子がもたらすいなしのやり取りの優位性を体感するとともに、それぞれが得意とする釣りを踏まえたうえでの改善点を提案するという具合に、両テスターにとっても有意義なテストとなった。
両テスターに使用感をつぶさに聞く西村氏。 その積極的な姿勢からは、よいものを作りたいという熱意が強く感じられた
門野テスターは40cmオーバーのグレをキャッチし、スーパープレシードの使用感のよさに納得していた
前岡テスターは良型のチヌをキャッチ。 竿のタタキを抑制するイナシステムと、本調子の柔軟性が、頭を振るチヌのファイトにもマッチすることがうかがえた
こうした最終テストが各地で繰り返され、限界がないかのようにスムーズに曲がり込むことでパワーロスと伝達のブレを抑制することで生まれる粘りと、高レベルの操作性を兼備した本調子のスーパープレシードがついに完成。
2021年秋、待望の復活となる。
スーパープレシードには全長が5.8㍍のロングスペシャルというモデルもラインナップされている。
こちらはスーパープレシードを単に長くしたのではなく、長さのアドバンテージが活きるように設計を最適化したモデルだ。
長くすることで起こる曲がり過ぎることへの対処として、強い張りを有しながらも高強度化を実現した炭素繊維のトレカ(R) 40Xを、ベースとなるトレカ(R) T1100Gとともに適所に使用した。
また、長さからくる持ち重りを抑えるためにリールシートの位置も最適化するなど、ロングレングスでありながらスーパープレシードの使用感との差異を極力減らす特別な設計がなされている。
5.8mという長さに対して当初は懐疑的であったテスター陣も、テスト終了後には「印象がガラリとかわった」というほどだった。
このように特別な設計をしてまでロングスペシャルがラインナップされたのは、竿が長いほどカーボンマテリアルの特性が活き、本調子ならではの魚の引きをいなす性能をより享受できると考えられるからだ。
不意の大物に対しても余裕を持ってやり取りができるなど、竿のコンセプトを追求するにあたって長さの優位性は無視できないというわけである。
5.8mのロングスペシャルもラインナップ。 スーパープレシードの使用感をスポイルしない専用の設計としている点に、 ロングならではのメリットを享受してほしいという開発陣の強い意気込みを感じることができる
その他にも長さがもたらしてくれるメリットはとても多い。
メインターゲットとしてチヌ(クロダイ)を想定した1号は、長さによる遠投性能によって遠くのポイントを攻略しやすくなることや、竿を立てた際に5.3mよりも高い位置に穂先があることで、藻をかわすために沖で浮かせやすくなる。
口太グレを想定した1.25号は、長さを活かして潮なじみのよいロングハリスを用いた釣りが可能になる。
尾長グレをメインターゲットとする1.75号は、足場の高い釣り場でも海面近くに穂先を置けるのでラクにラインメンディングが行なえるため、刺し餌と撒き餌の同調を助けることも可能になる。
このように、釣りの幅が広がるという点でロングスペシャルも見逃せない存在となるだろう。
競技志向や大物志向の高まりによって専門性の高いモデルが洗練されたことで、一部偏りが見られていたがま磯シリーズのポジショニングマップは、スーパープレシードが登場することでバランスが整ったといえるだろう。
これまでにない位置づけの竿が選択肢として増えるのは、ファンにとってうれしい限りである。
先調子や胴調子といった既成概念に一石を投じたい開発陣の熱意は、デザインにも表われている。
これまでのがま磯シリーズとは、一線を画する先鋭的なデザインは特別な存在である証だといえる。
これまでのがま磯シリーズのイメージとは異なるデザインも、スーパープレシードの特徴の1つ。 その特別感は新たな喜びを提供してくれるだろう
高いレベルの操作性を維持しつつ、竿を曲げることの喜びや楽しさが存分に味わえ、なおかつ細ハリスを駆使しながら大物も取れるいなしの性能を持つ本調子のスーパープレシード。
1代目、2代目から続く「柔よく剛を制す」のコンセプトが、最新のマテリアルと製法によって、より際立ったニューロッドはしばらく目が離せない存在となりそうだ。
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