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防波堤の格闘技「へちコブダイゲーム」入門。意外な身近な場所に潜むピンクモンスターを捕獲せよ!

松村計吾

【テレビ大阪系列・毎週土曜日午前6時50分放送「フィッシングDAYS」サイドストーリー第32話】番組内で話題になったワザ、アイテムについて”深堀”するもう1つの「フィッシングDAYS」。

防波堤での落とし込み、へち釣りといえばメインターゲットは、チヌ(クロダイ)。

都市圏の防波堤でも、日中に50cmを超すような大物が釣れることもあって、この釣法が登場してからというもの人気が持続している。

大阪・堺港沖新波止をホームグラウンドにする、がまかつフィールドテスターの大田徹さんは、目印を使わないへち釣りの名手として知られている。

そんな大田さんがチヌ釣りと同様に、夏場のシーズンに狙うのがコブダイ(カンダイ)だ。

その魅力は「身近な防波堤に1m近い大物が潜んでいて、それがチヌのへち釣りスタイルでも狙えます。ただ、相手が剛力すぎて一瞬でKO負けをくらうことも多々あるんです。取れなければ何とかして釣り上げてやろうと思うのが釣り人ですよね(笑)」と大田さんは話す。

その憎っくきコブダイを獲りに、淡路島の浦一文字へ釣行する大田さんに密着して、へちスタイルのコブダイ釣りのノウハウを紹介してもらった。

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コブダイの若魚。まだ頭部のコブが出ていない

へちスタイルで激闘 淡路島沖堤タンコブゲーム

意外に身近な防波堤にも潜み、チヌと共通部分が多いコブダイ

「数の多い、少ないはあるんですが。意外な身近に潜んでいるのがコブダイです。堤防際をのぞき込むと、ピンク色の巨大な魚がウロウロしている。そりゃ、へち釣りの範疇なので狙うしかないですよね!」と言う大田さん。

コブダイ釣りで知られる場所は少ないのだが、実際にコブダイが潜む堤防は多いという。

兵庫・本荘ケーソンなどは、コブダイの魚影の濃さが知られて、徐々にではあるがコブダイ狙いの釣り人も増えている。

1度狙ってみると、ハマる人が多いのもコブダイ釣りである。

「すべてで竿を出したわけではないのですが、たとえば淡路島の漁港や一文字などはコブダイの魚影が濃い場所も多くて、ほとんどの防波堤で狙えるんではないでしょうか」とも話してくれた。

まだまだ専門に狙う人は少ないので、実績場の開拓もそこまでは進んでいない。

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波止際をエサを求めて回遊する大型コブダイ

そして、コブダイはチヌ同様、堤防に付着している貝類やカニなどの甲殻類をその硬い歯で噛み砕いて食べる。

堤防の壁面に好物のエサが多いので、波止際に付いてエサを捕食している。

いわば、食性や動きがチヌに似ているので、チヌを狙うポイント、エサ設定でそのまま狙える。

へち・落とし込みスタイルのタックルセッティング

コブダイを狙ったへち釣りの基本的な考え方としては、防波堤の壁面に付着する貝類や甲殻類が波などによって壁から離れ沈下するのを待って食べたり、強固な歯で壁面に付く貝などを割って食べるなどの習性を利用したもの。

へち釣り同様、壁面から剥がれ落ちていくエサを演出するため、オモリも鈎の軸やチモトにガン玉を打つ程度のシンプルな仕掛けで挑むのが普通だ。

アタリは落とし込み釣りでは仕掛け糸に付けた目印で、へち釣りは目印を使わないので視認性の良い道糸の動きで判断する。

または、穂先にダイレクトに出るアタリを取ることもある。

仕掛けは遠投不要のため、使用する竿はアタリを取りやすい、食い込みの良い柔軟な穂先に対して、チヌ、コブダイともに硬い口周りにがっちりと鈎を掛けるためのしっかりしたバットの竿が基本だ。

チヌと大きく違うのは、魚体の大きさとパワーだ。

チヌは堤防周りでは50cmを超せばかなりの大物。

対してコブダイは40~50cmならまだまだ若魚、大きくなると1mを超す大型も。

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がまちぬ へちさぐり 銀参郎H300

そんなコブダイに対応して大田さんが愛用しているへち用の竿が、がまかつ「がまチヌ へちさぐり 銀参郎」シリーズの中で、もっともパワータイプの「H300」だ。

細身肉厚のブランクスながら軽量化を図ったへち釣り用ロッドで、チヌに対してはラインを出さずに強引にやり取りをする必要がある状況下でのパワー勝負ができるのはもちろん、不意にやってくるコブダイやイシダイ、マダイといった大型ゲストとのやり取りにも長けた竿である。

がまかつ がまチヌ へちさぐり銀参郎H 3.0

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コブダイ釣りに使う鈎。チヌR6号とケン付真鯛10号

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ハリスの余り糸にガン玉を打つ

これに道糸はPE2号、その先に付けるハリスは5号だ。

鈎はチヌRの6号、ケン付真鯛10号など。

鈎を結んだ際にハリスの余り糸を数cm残しておき、その先にガン玉5~6Bを打つ。

余り糸にガン玉を打つことで、捨て石の上を攻める際に鈎よりも「振りガン玉」が捨て石に当たるので根掛かり防止にもなる。

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エサのイガイと岩ガニ

コブダイ釣りのエサとしては、一般にブラックタイガーなども使われるが、太田さんはへちスタイルで狙いたいこともあって、チヌ同様イガイと岩ガニを使用することが多いという。

イガイは足糸と呼ばれる繊維でつながっている。

数粒をまとめて、その足糸で鈎を絡めるように付けると良い。

そして、食い気を誘発するために、そのうちの数粒の殻を割っておく。

魚影が見えればチャンス到来!仕掛けを入れた瞬間に全集中

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一見するとチヌのへち釣りだ

「コブダイの基本的な狙い方は、ほぼチヌを同じです」と言う大田さん。

実際の釣り方は通常のへち釣りと同様、堤防際にエサを落とし込んで、反応がなければどんどん移動してエサを落とし込んでいく。

ただ、大型のコブダイは水中で目立つピンク色をしているので、堤防際に見える場合も良くあるという。

そんな場合は進んでいく方向を見定めて、目先に落とし込んでいく。

「コブダイをよく見ると、ただ単に堤防に沿って泳ぎ回っているだけの個体と、エサを探して時々堤防際をつつくような動きをしている個体がいます。エサを探しているようなコブダイを見つければいただきですよ~」と大田さん。

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掛けた瞬間が勝負だ

比較的食わせるのも簡単なコブダイだが、チヌと大きく違う点が前述の「パワー」。

掛かったコブダイは一瞬で強烈な突っ走りを見せる。

その際にアワセが遅れると、主導権を取られてしまい、そのパワーに手も足も出ない…ということが多々ある。 

「逆にやられてしまうことがよくあるから、何とか釣ってやろうとハマるんですけどね。掛かった魚が全部とれちゃうと面白くないですからねえ」と笑う。

淡路島・浦一文字の激闘はKO負け連発!?

6月中旬、早朝に乗船場に着き、待っていると船長が登場。

情報を聞くと「昨日はよく荒れてたよ。この荒れ後には堤防からエサが落ちるのか活性が上がることがよくあるよ」とうれしい言葉。

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外洋とスリットでつながるマスの中

浦一文字は浦漁港の沖に位置する全長200mほどの小規模な一文字。

沖向きはマスと呼ばれるケーソンの中に四角い空洞があり、上面は開いている。

マスの中と外洋はスリットでつながっていて、魚は自由に行き来ができる構造だ。

足元は堤防の内、外ともに基礎石が設置されていて、水深は内向きで5m、外向きで7mくらいとのこと。

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大型コブダイが足元にゆらりと泳ぐ姿は興奮もの

さあ、釣りスタートと思いきや、マスの中にピンク色の魚体がゆらりと見えた。

本命のコブダイが早々の登場だ。

「デカいですね。70cmくらいはありそうです」と言いながら、大田さんがイガイをエサに落とし込んでみるが無反応。

食い気のない魚に固執すると時間がもったいない…と次のマスへ。

マス側からスリットの入口を見ながら移動していくと、結構な確率でコブダイが見える。

大田さんの言っていた通り、スーッと泳いでいるだけの魚と、時々マスの中に入り込んだりしながら壁面をつつくような行動をしている魚がいる。

狙いはエサを探している個体なのだが、イガイを落とし込んでもなかなか反応しない。

そこでエサを岩ガニに変更してみる。

ピンクの魚体がふわりとスリットの間に見えたと同時に、岩ガニをエサに打ち込む。

すると、その魚がエサに気づいたのかスーッと沈んでいったように見えた。

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やられた~

直後に竿先にゴツゴツと反応が出た。

ほんの少し食わせてから強烈に合わせた竿が満月に曲がる。

ただ、ほんの少し食わせた「間」がよくなかったのか、掛かった魚は一気にスリットを抜けて外洋へと突っ走る。

と、スリットに擦れたのか5号ハリスが瞬時に飛んだ!

「やられました~」手も足も出ない完全KO負け。

ただ、岩ガニに反応することが分かった。

コブダイは意外に偏食なのか…。

と、次も再び岩ガニに反応させ食わせた…が、片軸リールのハンドルを巻き取るよりも早くコブダイが突っ走ってまたまたKO。

アタリと同時に巻きアワセをして、頭をこちらに向けるしかないですね」と対策を練る。

そして、再び大型コブダイ発見。

岩ガニをエサを落とし込む。

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釣れたのは45cmを少し超すサイズの若いコブダイ

マスの底までエサが達したくらいで、竿先にゴツゴツとアタリが出た。

今度こそは…と、合わせると同時にリールでラインを巻き取りにかかる。

今度は主導権を奪ったか…と思った瞬間、魚が水面に飛び出してきた。

見えていたコブダイとはサイズが違う。

45cmほどの小型だ。

「このサイズなら一気に浮かせることもできるんですけどねえ」と苦笑いしながら「次はピンク色のデカいヤツを止めないと」と意気込むが、次もマスの中で掛けた魚はスリットを抜けようとしてラインが擦れる。

ただ、この日は外向きで見えるコブダイがエサを探しておらず、エサを食ってくるのは、すべてマスの中にいるコブダイ。

その後もマスの中で1回のバラシ

合間にヒットしてくる40~50cmは4尾をモノにしたが、大物に対応する課題が残った釣行となった。

また朝のうちにあれだけ見えていたコブダイも、午前10時を回る頃には姿が見えなくなり、風も強くなった14時に納竿とした。

多くの課題が残っただけに、次回の釣行への活力ともなるのが、コブダイのへち釣りである。

●交通:神戸淡路鳴門自動車道の東浦IC(ETCのみ)で下りて、突き当たりのT字路を左折。
浦信号を左折して、1つ目の信号を越えたすぐを右折し、浦漁港の港内南側へ。

●問い合わせ:坂口渡船(TEL:090・2042・1989)

へちスタイルで激闘 淡路島沖堤タンコブゲーム

「フィッシングDAYS」はテレビ大阪を中心に、テレビせとうち、TVQ九州放送、テレビ和歌山、高知放送で放送されている、がまかつ提供・テレビ大阪制作の釣り番組。

ハゼなどの極々小さい魚から、ルアーを使った大型魚釣りまでを、どうやったらより釣れるのかにこだわって制作。

また、釣れたときの釣り人の笑顔にもフォーカスし、釣りの楽しさも徹底的に追求しています。

(文・写真/松村計吾)

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ライター紹介

松村計吾

松村計吾

大学で水産無脊椎動物の研究を経て、釣り出版社に入社後、30年以上釣り雑誌や釣り情報紙の編集を手掛ける。取材などで釣りの現場に出ることはもちろん、休日などのプライベートでも常に釣りシーンにハマっている。得意な釣りは船のテンヤタチウオ、カワハギ、エギング、イカメタルなどだが、日本全国を飛び回りあらゆる釣りを経験。ちなみの甲子園の年間シートも所持。甲子園でのビール消費量も球界一とか・・・。