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堤防のチヌは浮かせて釣れ!ビギナーにもやさしいフカセ釣りの極意を前西喜弘がレクチャー

松村計吾

【テレビ大阪系列・毎週土曜日午前7時放送「フィッシングDAYS」サイドストーリー第24話】番組内で話題になったワザ、アイテムについて”深堀”するもう1つの「フィッシングDAYS」。

「フィッシングDAYS」はテレビ大阪を中心に、テレビせとうち、TVQ九州放送、テレビ和歌山、高知放送で放送されている、がまかつ提供・テレビ大阪制作の釣り番組。

ハゼなどの極々小さい魚から、ルアーを使った大型魚釣りまでを、どうやったらより釣れるのかにこだわって制作。

また、釣れたときの釣り人の笑顔にもフォーカスし、釣りの楽しさも徹底的に追求している。

前西流フカセの技を盗め 大阪湾春チヌ 宙釣り釣法

良型主体に安定した釣果が続く春の大阪北港のチヌ

古くは朝バネ釣りと呼ばれるシラサエビのエビ撒き釣りで、ハネやスズキ狙いで人気のあった大阪北港。

現在はハネ、スズキのエビ撒き釣りに代わって、人気の釣り物がチヌ。

大阪北港の釣り場は、港区の海遊館で知られる築港エリアのすぐ沖に浮かぶ通称・中の灯台を始め、2025年に大阪万博が予定されている此花区・夢洲の南、西の外側で「スリット」と呼ばれるエリアから、南東角の灯台付近、住之江区の南港発電所や魚釣り園のある大きな埋立地から北西に突き出た長い「関電波止」など、渡船利用となるが釣り場は広い範囲に散らばっている。

埋立工事などの関係で、立ち入り禁止になったり、再び釣りができるようになったりと、時々状況が変わるので、その辺りは船長と相談するのが手っ取り早い。

チヌのフカセ釣りは、本来は冬場のエサ取りが少ない時期に人気の釣りであったが、釣り方やエサ使いの進歩により、1年を通じてかなりの期間、チヌのフカセ釣りが楽しめるようになった。

今回、アングラーとして登場していただいた前西喜弘さんは、大阪湾での堤防フカセ歴17年を数え、創成期からの名手である。

そんな前西さんの信条は「フカセ釣りを簡単に、シンプルにする」である。

ともすれば技術の向上とともに、入門者にとっては非常に敷居の高い釣りとなってしまうフカセ釣りを、ビギナーにも簡単にできるようにと考えている。

その1つが、今回実践していただいた「堤防のフカセチヌは浮かせて釣れ」という内容だ。

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渡船場は新木津川大橋下

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当日渡ったスリットの側面

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とにかく、前西さんの動作を真似るのだ

番組ナレーターも務める福谷清志アナがフカセチヌ初挑戦

フィッシングDAYSの番組内ではナレーターも務めるほか、少し前からは番組内で釣りにも挑戦しているテレビ大阪の福谷清志アナウンサーが、今回は前西流に入門して、初挑戦でチヌを仕留めることができるのか…も見どころだ。

福谷アナによると「これまでは船の釣りで仕掛けを竿下に落とすだけで釣れたけれど、堤防からは仕掛けもマキエも投げるんでしょ?そんなことできるかなあ」としきりに心配していた。

早朝5時、出船を前にたまや渡船の乗船場は、釣り人が多く集まっていた。

各種フカセ釣りの競技会にも参加している名手たちや、落とし込みアングラーもいれば、ルアーロッドを抱えての青物狙いのアングラーも…。

さすがに多彩な釣り場を有する大阪北港だけに、様々な釣り人が集まってくる。

そんな中、前西さんがチョイスした釣り場は夢洲のスリット。

もちろん、フカセ釣りや落とし込みでのチヌの実績場である。

大阪北港でチヌ釣りのポイント選定として考え方が2通りある。

1つは今良く釣れているという事前情報に基づいて、よく釣れている場所に上がる。

もう1つは、しばらく釣り人が入っていないポイントを選ぶ。

今回はスリットの中でも、実績が高く釣り人が多い東寄りではなく、少し西に寄った場所を選んだ。

つまりは釣り人がしばらく入っていないポイント選定をした形だ。

「チヌはどこにでもいると思います。しばらく釣り人が入っていない場所のほうがプレッシャーが低く、フレッシュな釣りやすいチヌが居ると考えています」と前西さんが話してくれた。

さて、今回、福谷アナが1尾のチヌに近寄るための手っ取り早い方法として選んだのが「前西喜弘を完コピせよ」である。

名手の一挙手一投足をそのまま真似ることで、チヌをキャッチしようというものである。

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当日使用した竿はがま磯アルデナ1-47。下は1.25号

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当日使用しT配合材は湾チヌスペシャルⅡ

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当日のマキエバッカンセッティング

胴調子でショートレングスのチヌ竿「がま磯 アルデナ1号4.7m」を勧める理由

今回、堤防チヌフカセ用に前西さんがチョイスした竿が「がま磯・アルデナ・1号4.7m」。

前西さんは磯のグレ釣りにおいても4.7mのショートレングスを愛用している。

その理由は「1日持っていても全く疲れません。また、短い分、ラインメンディングなどの操作も的確に行えるのがメリットです」と話す。

そして、やり取りの面では「短さのデメリットは全く感じません。やり取りとなると5.0mクラスの竿と変わりません」とも。

ちなみに今回使用した「がま磯・アルデナ」の特徴としては、がま磯の伝統的な「曲げ込んで取る」を継承した反面、軽量化と強度面の向上も追求した。

仕掛けやライン操作時などは「先調子ではないか」と思うほどの操作性の良さも併せ持つ。

前西さんは仕掛けにも特徴がある。

「軽さ」が進化するフカセ釣りの仕掛けだが、チヌ釣りに関しては5B負荷のウキを常用する。

当日はからまん棒の下にガン玉5Bを打ち、針上70~90㎝の位置にジンタン7号を打った仕掛けでスタート。

ラインはハリス、道糸ともに1.5号を使った。

福谷アナも全く同じ仕掛けでスタートだ。

仕掛けがセットできたら、次はエサの用意だ。

この日はマキエとしてオキアミ3kgに配合材の「湾チヌスペシャルⅡ」を2袋、ニュー活さなぎミンチを半袋混ぜたもの。

サシエは生オキアミに加工オキアミである「くわせオキアミスーパーハードBIG・L」と「くわせオキアミ食い込みイエロー・L」を、ネリエとして「高集魚レッド」と「食い渋りイエロー」の2種類。

これに加え、さなぎミンチに漬け込んだコーンである「ガツガツコーン」を用意した。

近年、チヌ釣りのエサとして特徴的なのが、黄色いエサが目立つ点だろう。

今回の波止フカセチヌでも、オキアミもネリエもコーンも黄色を用意。

「チヌは黄色を好むのは本当ですね。やはり実績も上がっているのでエサメーカーでも開発が進んでいます。今回の配合材もほら」と、混ぜ込んだマキエを見せてくれたが「湾チヌスペシャルⅡ」も海水を入れて混ぜ込むと黄色っぽいマキエとなる。

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複合エサ用に特化させたオキアミコーンチヌ

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当日用意したサシエ

複合サシエに合わせた鈎「オキアミコーンチヌ」

近年、ウキフカセチヌ用のサシエは種類が増えていて、使い方もバリエーションに富んでいる。

オキアミやネリエ単体で使うのではなく、複合エサと呼ばれる2種類以上のエサを同時に鈎に刺す使い方が定番となってきている。

複合エサのメリットとしては、雑食のチヌがその時点でどんなエサを好むのかが分からないときに、2種類のエサを付けることで確率が倍になるということ。

また、柔らかいエサと硬いエサを同時に刺すことで、柔らかいエサがエサ取りに取られても硬いエサは残る…といった理由だ。

さらに、ネリエなどの比重の高いエサを足すことで、その沈下スピードにより仕掛けなじみも早くなる。

そんな複合エサの代表ともいえる「オキアミ+コーン」を想定した鈎が、がまかつの「オキアミコーンチヌ」だ。

軸部にプレス加工を施し、複数のエサを刺した際のエサのズレを防止する。

また、コーンや黄色いネリエを使用する際になじみのよいイエローカラーを取り入れている点にも注目だ。

実際に当日釣れたチヌは「加工オキアミ+ネリエ」や「生オキアミ+コーン」などの複合エサが圧倒的であった。

数種類のエサを持参していろいろと試すことで、自分なりの最強複合エサを見つけだすこともできるのだ。

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数投もすると徐々にマキエもさまになってきた福谷アナ

ウキ下は足元も沖も同じ。マキエにつられて出てくるチヌは水平に移動する?

エサの準備が終われば、まずはポイントを作るために10mほど沖へ一点集中で多めのマキエを打つ。

10mほど沖というのは、ちょうど捨て石の肩から落ち込みにかけての部分だ。

「スリットでのチヌは大きく2つのコースでマキエに集まると思っています。1つは足元のスリットからマキエにつられて沖へ出てくるチヌ。もう1つは捨て石のかけ上がりの下から出てくるチヌです」と前西さん。

そして「足元から沖へと出てくるチヌは水平移動すると考えています。だから、沖でも足元でもウキ下(タナ)は変えずに狙っても良いわけです。沖だから深くするということは不要ですね」とも説明してくれた。

そのタナの測り方だが、まずゴム付きオモリを用意して鈎をゴムに刺し、竿下へ仕掛けを投入する。

この時に、ウキ止めは道糸に2個付けておくのが肝心だ。

まず、鈎側のウキ止めでウキが止まるが、これがウキから鈎までのいわゆる狙うタナだ。

調整としては、ウキが水面下70~90cmになるようにタナを設定する。

そして、糸を張って上のウキ止めが水面にくるように調整する。

つまり、そのまま釣るとサシエは底から70~90cm浮いた状態になる。

ウキを沈めると、上のウキ止めが水面に来たらサシエは底付近へ。

これでタナのセッティングは完了だ。

ちなみに福谷アナが仕掛けを投入するも、10m先への投入が難しいらしく、糸を放すタイミングが合わずに竿下へ。

そこで前西さんのアドバイス「仕掛けは軽くても、振る時に重みが感じられるはずです。その重みを感じて投げるタイミングを計ってみましょう」。

数投もすると、完全に狙ったポイントへ仕掛けを投入できるようになってしまったのには驚きだ。

そして、マキエの撒き方も同様で、最初は全く沖へ投げられずすべて足元へ。

これはフカセ釣りにおいては致命的である。

ここでも前西流のアドバイスは「マキエシャクを振る際には途中で止めてマキエを切るようにする」。

これで福谷アナも数投後にはマキエを見事に撒けるように。

中層狙いのメリット炸裂!ハンパじゃないウキの入り方

釣り始めると、潮の流れがコロコロと変わる大阪北港特有の流れ。

マキエと仕掛けを合わせ、次の投入で先にマキエを潮上に撒こうとすると、今度は反対側にマキエが流れるといった安定しない状況下、時折ピタリと流れが止まる。

「マキエとウキが同じ場所にとどまって、流れがなくなったタイミングでチヌが釣れることが多いので集中です」と話していると、前西さんのウキがびっくりするようなスピードで海中へ消えた。

磯で尾長グレがヒットした時のような速さで、とてもではないがチヌとイメージできない。

「見ましたか? 今のようなウキ入れが中層での釣りの特徴なんですよ。このウキ入れだとビギナーでも迷うことはありませんからね。特に活性の高い元気なチヌがヒットしてくれます」と言う。

堤防フカセのチヌ狙いでは、ウキ下の調整として「底トントン」や「ハワセ釣り」がある。

活性の低い時期には定番ともいえるハワセの釣りだが、この場合アタリはじわじわと疑わしい状態で表現されることが多く、ゆっくりと聞いてみるとスーッと入っていくイメージだ。

ビギナーには判断がつきにくいが、中層の釣りではアタリが明確に出るため、反射的にアワセを入れることもできる。

がま磯・アルデナが曲がり込んで、頭を振るチヌ独特の引きを受け止める。

浮かせてきたのは40cmクラスの良型チヌだ。

釣り始めて1時間ほどで1尾目を仕留めた前西さんだが「1時間以内には釣れると思っていましたけど、ちょっと遅めですね。食いがよくないんでしょうね」と状況判断。

続いて、同じ釣り方をしていた福谷アナのウキも、ビューッと音がするような速さで沈み込んだ。

慌ててアワせたが、これは素鈎。

「今のも実はチヌなんですよ。まだいると思いますのですぐに投入しましょう」とせかす。

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1尾目は40cm級のチヌ

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福谷アナにヒット。やり取りでアドバイスを送る前西さん

ついに来た!福谷アナの初チヌは45cmの立派ないぶし銀

やはり潮がふと止まった瞬間だった。

「なんか、良い雰囲気になってきましたよ~」と2人が話していると、福谷アナのウキがまたもや見事に入った。

今度はアワセが遅れたものの、竿までひったくるような強烈な走り。

これも中層での釣りの特徴だ。

ヒットするチヌは元気で、走り回る。

「竿で溜めて、リールは巻かなくても大丈夫ですよ。竿が勝手にチヌを浮かせてくれるので、竿が戻った時に少しだけ糸を巻き取りましょう」とアドバイス。

強い引きを勝手に竿が溜めて、かわしてくれるようなやり取りで浮かせたのは良型チヌだ。

測ってみると45cm。

これが福谷アナの初チヌとなった。

そして、潮が安定しない中、前西さんは仕掛けにオモリを追加して、ややウキを沈め気味に流す。

ウキが見えるか見えなくなるか…のタナで道糸が走るアタリをとらえた。

ガツンとアワせた竿がひん曲がる。

元気に走り回るチヌを、竿が曲げ込んで受け止める。

そして浮かせる。

これも40㎝級のチヌだ。

最後は福谷アナ。

ウキがシューッと入ったが、なんとアワセが弱く、いきなり曲がる竿に合わせて、竿を立てるくらいでやり取りに入ってしまった。

これはまずい!?と思った瞬間に、スッと竿が戻ってバラシ

チヌが鈎を飲み込んでくれればそれでも取れたかもしれないが、鈎先が歯に乗ってしまうとかなり強くアワせないとバラシにつながる。

ただ、福谷アナにとっては、素鈎あり、バラシあり、取り込み成功あり…と、1日でも多くの経験ができた。

結局、終始潮が安定しない中、時折、現れるチャンスな状況をモノにして前西さんが3尾、福谷アナが1尾のチヌをキャッチして納竿とした。

決して敷居が高くないフカセ釣り

皆さんも前西流を学んで、分かりやすく楽しいフカセ釣りに挑戦してみませんか?

●交通:大阪市住之江区の南港通りにある柴谷2の信号を北へ。
その先で本道が右カーブする交差点を左折して直進。
新木津川大橋下の突き当たりを左に進むと駐車場と乗船場がある。

●問い合わせ:たまや渡船(TEL:090・6551・0553)

(文・写真/松村計吾)

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ライター紹介

松村計吾

松村計吾

大学で水産無脊椎動物の研究を経て、釣り出版社に入社後、30年以上釣り雑誌や釣り情報紙の編集を手掛ける。取材などで釣りの現場に出ることはもちろん、休日などのプライベートでも常に釣りシーンにハマっている。得意な釣りは船のテンヤタチウオ、カワハギ、エギング、イカメタルなどだが、日本全国を飛び回りあらゆる釣りを経験。ちなみの甲子園の年間シートも所持。甲子園でのビール消費量も球界一とか・・・。

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