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和歌山・衣奈、チヌのかかり釣り~春チヌ攻略の決め手はスローな流し込みだった~

松村計吾

【テレビ大阪系列・毎週土曜日午前7時放送「フィッシングDAYS」サイドストーリー第22話】番組内で話題になったワザ、アイテムについて”深堀”するもう1つの「フィッシングDAYS」

「フィッシングDAYS」はテレビ大阪を中心に、テレビせとうち、TVQ九州放送、テレビ和歌山、高知放送で放送されている、がまかつ提供・テレビ大阪制作の釣り番組。

ハゼなどの極々小さい魚から、ルアーを使った大型魚釣りまでを、どうやったらより釣れるのかにこだわって制作。

また、釣れたときの釣り人の笑顔にもフォーカスし、釣りの楽しさも徹底的に追求している。

和歌山・衣奈 筏で狙う 乗っ込みチヌ

シーズンオフがなくなった!? 中紀のチヌかかり釣り

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観音前エリアの筏群

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衣奈の沖に浮かぶ黒島の内側がチヌ釣り場だ

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ボケやさなぎ、アケミ貝などのサシエ

「3年ぶりくらいですかねえ。ここに来るのは…」と言うのは、がまかつフィールドテスターの末吉一崇さん。

言わずと知れたチヌかかり釣りの名手である。

イカダ・カセから大型チヌを求めて三重県下をメインに釣行し、関西方面をはじめ、西日本の各釣り場への遠征も数多くこなす行動派アングラーだ。

そんな末吉さんが「久しぶりに行ってみたい」と釣行を決めたのが、和歌山・中紀を代表するかかり釣り場である衣奈。

中紀のチヌは筏、磯、波止と釣り場は数多いが、元々冬の厳寒期はシーズンオフの感が強かった。

例年、3月を過ぎると徐々にチヌの姿が増えてきてシーズン開幕、4月に入ると乗っ込みの気配が出てきて本番を迎える…というパターンだった。

ところが、ここ数年は冬場もチヌの食いが止まらず、シーズンオフがなくなったと言われている。

2023年も3月中にはかなり数も上がる日が出てきて、すでに活性がかなり高いとも…。

冬から釣れ続け、そのまま乗っ込みへ…という中で「変わりつつあるチヌの状況を実感してみたい…」というのも今回、衣奈を選んだ理由でもある。

衣奈の筏は衣奈漁港を中心に東西に掛けられたエリアと、沖の黒島の内(南)向きのエリアに2分される。

釣行前の情報では、黒島の「観音前」エリアが良く釣れているということで、中長渡船の中野船長と相談し、観音前筏に上がることにした。

黒島の東部内向きに位置する観音前の筏は水深が15m前後で、潮が動きだすとかなり速くなる。

事前情報ではエサ取りもけっこう活発で、フグやカワハギなどが多く、ダンゴにはボラも寄ってくるとのことだった。

筏に上がるとまずはダンゴ作りだ。

当日のダンゴはパワーダンゴをベースに、濁りオカラ、細びきサナギなどを合わせた。

アンコにはニュー活さなぎミンチ、オキアミ、コーンを使う。

サシエは生オキアミ、くわせオキアミスーパーハード、くわせ丸えびイエロー、活丸さなぎ、ガツガツコーンのほか、ボケ、アケミ貝も用意した。

春のチヌは気難しい面があり、その時々で好みのエサが変わる。

また、エサ取りの状況も踏まえてサシエをローテーションさせ、エサ取りに取られにくくチヌの食い気を誘発するサシエを探していくのも釣りの楽しみである。

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がまちぬ・いかだ・凪斬1.65MH

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凪斬に付属する2タイプの穂先

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がまかつ たもの柄STⅡ120

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当日使用した2種類の鈎

竿は「がまちぬ・いかだ・凪斬(なぎり)」の1.65MHを選択

今回、末吉さんが衣奈の筏での釣りを想定してメインとしてチョイスした竿が、がまかつ「がまちぬ・いかだ・凪斬(なぎり)」。

この竿は細身設計で素早く鋭くアワセを決められるよう軽量化がはかられている。

細身で軟調子を生かした大チヌとのやり取りでは、強い引きに対して非常に粘り強く曲がり込み、チヌを浮かせにかかるパワーを秘めている。

また、高足シングルフットガイドを使用したオリジナルガイドセッティングにより、操作性も非常に向上させたモデルとなっている。

特徴的なのが、穂先に「中先調子」と「先調子」の2本が付属していて、釣り場の深さ、潮の流れ、サシエの種類等により釣りやすい穂先を選択できる点だろう。

1.45M、1.55M、1.55MH、1.65MH、1.8Hの5アイテムが設定されているが、今回はやや水面から釣り座までの距離がある点、チヌのサイズが平均40cm以上で時には50cm級も混じっている点、水深が15m前後あることなどを考慮して、「1.65MH」に中先調子の穂先をセットした。

また、鈎は、がまかつ「貫通筏」と「ナノチヌ筏」の2タイプ。

使い分けとしては掛かりやすさを求める際には「ナノチヌ筏」、パワーを必要とする時や鈎に自重を持たせて安定させたい時には太軸の「貫通筏」を使うことが多いという。

サイズは5号を中心に使う。

がまかつ がまちぬ いかだ凪斬 MH1.65

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2投目にいきなりヒット

ボケの落とし込みでいきなりモーニングサービスで40cm超

ダンゴでの釣りを始める前に、まずはサシエのみで落とし込んで釣ることが多いのもかかり釣りである。

船長の話では前日も他の釣り人がこの筏でチヌ釣りをしていたとのことで、前日のマキエに寄ったチヌが居るのではないか…という判断だ。

0.8号のオモリにナノチヌ筏5号を使用したシンプルな落とし込み仕掛けで、ボケをエサに探ってみる。

「潮がまったく動いていませんね」と話す末吉さんの仕掛けが着底したと同時に、穂先には小さな反応が出始めた。

「けっこうエサ取りが居ますね。ただ、魚の反応があるのはよいことです」と、話していた末吉さんの目が変わった。

どうもエサ取りの中にチヌらしき反応があったようだ。

フッと竿先が押さえ込まれた瞬間に大きくアワせたが空振り。

「どうも今のはチヌっぽいんですよねえ」と期待を込めて、同じボケエサで2投目。

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エサ取りアタリからチヌアタリにかわり目が真剣に

ボトムより2m上辺りからは、竿でブレーキをかけながらゆっくりと落とし込んでいく。

オモリが着底したら、少し待ってほんの少し浮かせる。

すると、再び穂先にコン、コンと軽い反応が出た。

おそらくはエサ取りだろう。

が、エサ取りのアタリに穂先でついていくと、明らかに竿が重々しく押さえ込まれた。

ここで大きくアワせると「凪斬」が重量感をとらえた。

グイグイと頭を振るような引きは良型のチヌか。

「こんな早くから本命です!」と笑顔でやり取りする末吉さんが竿を曲げ込んで引きに耐え、そこからグイーッと浮かせる。

曲げ込みながらパワーがある調子というのが分かるやり取りだ。

浮いてきたのは、ややお腹が膨らんだ乗っ込み初期のチヌ。

おもむろに「たもの柄STⅡ・120」で手に浮かせたチヌを一発ですくって取り込んだ。

サイズは40cm。

まずまずだ。

「どうも1投目の最後もチヌらしいアタリだったので、まだまだいるかもしれません。もう少し落とし込みを続けてみましょう」とボケを落とし込むが、次第にエサ取りの反応が激しくなってきた。

そこで、ボケ→オキアミ→アケミの半貝→アケミの両貝とサシエをローテーションさせて探るが、チヌからの反応はなく、落とし込みを見切ることにした。

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驚異的な曲がり込みでチヌの引きに耐える

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チヌの強引に耐える

潮の流れにサシエを乗せて、スローに流し込む作戦が奏功

「落とし込みで狙えばもう少しは追加できるかもしれませんが、ここは見切りも大切なのでダンゴ釣りに切り替えます」と話す末吉さん。

落とし込みは手返しが早く、スピーディーに探ることができるので、反応を見るのにはよいのだが、マキエを入れない分、チヌを寄せることはできない。

その時点で、付近に居るチヌを釣ってしまえば終わってしまう。

だから、早めに見切りをつけて、1日の釣りを組み立てるためにもダンゴで寄せる作戦に移行するのだ。

混ぜ合わせたダンゴの上から海水を少し入れ、上層部だけをしっかりと混ぜる。

バッカンの底には水分を含まないダンゴがある状態だ。

「全部を混ぜてしまうと、潮の流れやエサ取り、チヌの状況に合わせた修正がやりにくいので、全体の3分の1程度を海水と混ぜ合わせます」と、混ぜ終わった末吉さんがダンゴのアンコにオキアミ、コーン、さなぎミンチを入れて、6、7個を投入してポイントを作る。

そこからサシエにオキアミを使い、ダンゴに包んで15回ほど握り込んでスタート。

「このダンゴでの私の目安は1m、1握りといった感じです。水深が15mくらいなので15回握ります。この回数を認識しておき、エサ取りにダンゴが割られすぎたり、遅く割りたい時には20回にしたりと、握りでダンゴの調整をしていきます」

着底したダンゴには、時折ボラがアタックしてくるが頻繁ではない。

エサが出ると、今度は小さな軽いエサ取りのようなアタリが出始める。

が、チヌからの反応はまだないようだ。

そのうち潮が徐々に速くなってきた。

ダンゴが割れてゆっくりと流れる潮について、サシエを流し込んでいくイメージで竿でついていく。

すると、2、3m流し込んだところで、穂先がスーッと押さえ込まれた。

ここで竿を突き上げた末吉さんの竿が大きく曲がり込んで、チヌ独特の重量感が伝わる。

そして、グイ、グイと頭を振る引き。

本命と確信した末吉さんがじっくりと浮かせにかかると、水面下にいぶし銀が登場した。

ただ、これは40cmを少し切るサイズ。

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この日は32~44cmを5匹。年なしは出なかったが…

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スローな流し込みが正解でヒットへ持ち込んだ

ダンゴの割れを遅くし、警戒心の強いチヌが寄るのを待つ

2匹のチヌをイメージ通りに仕留めたが、その頃から潮がさらに速くなってきた。

ダンゴが割れるとサシエが動きすぎるのか、エサ取りに見つかってしまってチヌの口まで届かない感じだ。

「おそらく、警戒心の強いチヌが潮下に居て、じっくりと待ってやれば寄ってくるとイメージしています」と言う末吉さんが次に取った作戦は、ダンゴの割れを遅くし、時間差を持ってサシエを登場させる方法だった。

ダンゴを20回握り込んで、投入し着底したらダンゴが割れるまで、潮に引かれるのに従って糸を送っていく。

「イメージとしては、ダンゴが割れた時にサシエが浮き上がるのを防ぐために、ダンゴが割れるまでの時間、糸を出して潮にフカセてやります。エサが出れば、糸に引かれたサシエが底をトレースするように流れゆく感じです。その潮先にチヌが待っているはず…」と。

ダンゴが割れるまで約20秒ほど。

その間、糸を送っていき、あまりテンションをかけない状態にしておく。

ダンゴが割れれば糸を張らず緩めずで、潮に引かれる重さに合わせて竿先で潮下へとついていく。

3mほどもついていった頃、小さなエサ取りのアタリから、ゆっくりと重々しく穂先を押さえ込むアタリに変わった。

狙い通りチヌは潮下で待っていた。

そして、出てくるのもイメージ通りスローなのだ。

末吉さんのイメージがすべて現実となったような、典型的な組み立ての勝利である。

ただ、1匹を釣ると警戒心が増すのか、しばらくはエサ取りのアタリのみで、チヌからの反応が途絶える。

ここは我慢の釣りである。

エサをローテーションさせ、ダンゴの割れる速度を変え、時にはダンゴを中層で割って上から落とし込むなど、試行錯誤を繰り返したが、やはりこの日のチヌはダンゴの割れを遅くしてからのスローな流し込みに反応するようだ。

昼過ぎに41cm、夕方前に32cm、納竿間際に44cmと順調に追加したが、連発というわけではなく、神経戦となった。

ただ、終わってみれば5匹のチヌを仕留めていた。

末吉さんは「いろいろと考えながら、状況をイメージして釣りを組み立てるのも、かかり釣りの魅力ですね。今日は多少難しい面もありましたが、これぞかかり釣りの醍醐味…という感じで非常に楽しかったです」と笑顔で締めくくった。

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中長渡船

●交通:阪和道の広川ICで下り、国道42号を南下。由良町に入り、門前の信号を右折し、衣奈トンネルを抜けて道なりに進み、突き当たりが乗船場。
●問い合わせ:中長渡船(TEL:0738・66・0657)

和歌山・衣奈 筏で狙う 乗っ込みチヌ

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ライター紹介

松村計吾

松村計吾

大学で水産無脊椎動物の研究を経て、釣り出版社に入社後、30年以上釣り雑誌や釣り情報紙の編集を手掛ける。取材などで釣りの現場に出ることはもちろん、休日などのプライベートでも常に釣りシーンにハマっている。得意な釣りは船のテンヤタチウオ、カワハギ、エギング、イカメタルなどだが、日本全国を飛び回りあらゆる釣りを経験。ちなみの甲子園の年間シートも所持。甲子園でのビール消費量も球界一とか・・・。

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