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旧暦ってなに?釣りと旧暦の関係について徹底解説します!

FISHING JAPAN 編集部

釣りをしていると「旧暦」というワードに出会う機会がありませんか。

実際、釣り船を利用すると、船長の「今日は旧暦の1日の潮やから、潮が良く動いてええかも知れんな」というような会話を耳にすることがよくあります。

また、漁師さん同士の会話でも、潮の話になると必ず旧暦という言葉が出てきます。

いったい旧暦とはなぜできたのか、実際、漁や釣りでどのように役立っているのかなど、今回は旧暦の謎に迫ってみたいと思います。

まずは暦について理解しよう

毎年、師走が近くなると釣具店に日参する釣り人が多くなりますね。

そのお目当ては、もちろん釣り具の購入にあるのですが、もうひとつ釣り人がなからず欲しがるのが旧暦や月齢、大潮や小潮などの潮回りや日本各地の潮位が書かれた釣り用のカレンダーです。

月齢や潮回り、各地の潮表など、どれも釣りに役立つものばかりですが、その中で難解なのが旧暦の表示ではないでしょうか。

そもそも暦は、太陽の運行をもとに作られる太陽暦(グレゴリア歴)と月の満ち欠けをもとにした太陰暦、太陽と月の両方の動きを取り入れた太陰太陽暦(天保歴)に分かれます。

太陽暦とは

世界で広く使われている太陽暦は、地球が太陽の周りを1周する周期を1年として日を数える暦です。

地球が太陽の周りを1周(一太陽年)する周期を正確に数えると365・24219日になります。

この時にでる端数をどうするかが問題で、これを解決するために1年を365日とし、1年ごとに出る端数を積算していって4年に一度365日に1日加え、1年を366日に調整したのです。

これが4年に一度やってくる閏年(うるうどし)ですね。

太陰暦とは

太陰暦は、月の満ち欠けする周期をもとに作られた暦です。

月は15日かけて満ち、15日かけて消えていきます。

15日と15日でちょうど1カ月になることから、新月から始まって次の新月までの期間を1ヶ月としたのです。

ただ、毎月新月から次の新月までの期間が正確に30日になるわけではありません。

平均すると1カ月は29・5日でこれに12カ月を掛けると1年は354日になります。

太陽暦では1年が365日ですから354日になる陰暦と比べると1年で11日もの誤差が出てしまいます。

1年で11日もの誤差が出ると、16、17年後にはその差が半年近くになり真夏に正月がやってくるという、実際の季節とはずいぶんかけ離れた暦になってしまうのです。

太陰太陽暦とは

上記の誤差を小さくして太陽暦に近づけるために月の満ち欠けを基本としながら季節を表す太陽の動きを加味して作られたのが太陰太陽暦です。

太陽暦とのずれを修正するために取られた方法は、潤月(うるうづき)というものを作り19年間の間に7回の割合で閏月を挿入して季節とのずれを修正していったのです。

そのため閏月がある年は1年が13ヶ月になり通常の年より1年が1ヶ月長くなります。

例えばその年の4月に閏月を挿入する場合は、4月が終わった後にもう一度「潤4月」と呼ばれる月を入れて1年を13ヶ月にしたのです。

太陰太陽暦(旧暦)を基本に漁をしてる漁師たちは、閏月が入る年は、季節ごとに巡って来る魚が来なかったり、遅れたりすることがあるといいます。

また、ある農家の人は、旧暦(太陰太陽暦)カレンダーに沿って暮らしていると、閏月の入る年は不思議に気候が旧暦通りに変化しますと、そんな話を聞いたことがあります。

漁師が今でも旧暦を基準にする理由

日本で太陽暦が正式に使用されるようになったのは、明治6年の1月1日からでした。

文明開化が進み海外との交流が増え、暦も世界の基準に合わせる必要に迫られたためだといわれていますが、もう一つ、差し迫った財政上の必要に迫られたためだとも言われています。

政府は旧暦のままで行政を続けていると、約3年に一度は潤月が回ってきてその年だけ官僚に13ヶ月分の給料を支払はなければなりません。

その給料を節約するために1年が12カ月しかない太陽暦に改めたというのです。

この明治6年を境に、それまで使われていた太陰太陽暦を旧暦、新しく採用した太陽暦を新暦と呼ぶようになったそうです。

太陽暦は季節の流れには忠実ですが、月の動きとは無関係に進むので、月の満ち欠け(月齢)で潮時や時合を判断する漁師や月齢を参考にして作物を植える日を決めるなどの作業をしていた農家では、太陽暦では不便な面があったようです。

漁師が今でも旧暦を基準にして漁をするのは、月の満ち欠けで潮の動きや時合いを判断しているからです。

旧暦と釣りの関係について漁師にインタビュー

かつて、一本釣りで生計を立てている漁師にインタビューしたことがありました。

漁をしてきた経験談から貴重なお話を沢山聞かせていただきましたよ。

  • 漁師

    漁師

    潮は夜に出るお月さん見取ったら分るよ。 お月さんは15日かけて満ちて、15日かけて消える。これを繰り返しとるわな。15日と15日でちょうど30日、1カ月や。旧暦やと1日ごろがちょうど大潮(満月)なる。それから少しずつ月が欠け始めて15日かけて小潮になる。 だから10日の潮いうたら、満月から10日も経っているから月もだいぶ欠けて中潮の終わりか小潮の初めぐらいの潮かな、だから潮は余り動かんわな。潮が動かんいうのは、潮の満ち引きの幅が狭いということや。

  • 編集部

    編集部

    潮は、15日周期で大潮から小潮、小潮から大潮と月の満ち欠けに合わせて動いているというわけですね。

  • 漁師

    漁師

    潮の大小とは別に潮汐というのもある。 潮汐というのは潮の満ち引きや。満潮から干潮になり、干潮から満潮になる。これを6時間ごとに繰り返す。満潮から干潮になるのに6時間、干潮から満潮になるのに6時間、合計で12時間やけど、一日の内にもう1回干満の繰り返しがある。 だから12時間と12時間を足して合計24時間。このサイクルで毎日、潮が引いたり満ちたりしていくけど、この動きに月齢が加わるから、満月で大潮のときは潮が大きく引くし、小潮のときは潮の引く幅が小さい。 そういう情報を月を見ながら読み取って漁をするわけや。

  • 編集部

    編集部

    やはりそういった潮の動きは、経験値で判断されているのでしょうか。

  • 漁師

    漁師

    なぜそうなるのか説明できんのやけど、同じ潮でも月が出てるときと出てないとき(闇夜回り)で潮の速さが違うんやわ。 お月さんがある時は平均して潮が速いし、月がない闇夜のときは潮がぬるい(ゆっくり)な。 また台風が日本に近づいてきて上陸するとき、決まって大潮なんや。これも不思議のひとつやな。潮は夏とか冬のように季節によって同じ潮やのに速さが変わるし、地形によってその地域独特の潮の流れが出来るから、漁しとって、潮読むのが一番難しいのと違うかな。

潮汐はなぜ起こるのか

では、このインタービューの中で出てきた潮汐はどうして起きるのでしょうか。

これは月と太陽の引力によって引き起こされる現象のひとつです。

例えば地球がすべて海で覆われていて、どこも同じ深さだとすると、地球と正対する月がある側の海は、月の引力によって海水が引っ張られ大きく海面が盛り上がります。

これが最大のとき満潮になります。

では月から最も遠くなるため、月の引力の影響も小さくなる正反対の海はどうなるのでしょうか。

確かに月からもっとも遠くなるので、その分月の引力は弱くなるのですが、地球が自転しているため、その遠心力で月の引力が弱い分だけ海面が盛り上がり、月と正対している面と同じぐらいに水面が上昇して満潮となるのです。

そして、月がある側とその反対側の両方で海面が盛り上がると、地球を覆う海水は細長い楕円になり、その楕円のちょうど真ん中あたりが両方から海水が引っ張られたために最も海水の量が少なくなるため干潮になるのです。

干底から満潮へ、満潮から干底へと6時間ごとに潮の満ち引きが繰り返されるのです。

今回は旧暦と釣りの関係についてご紹介しました。

なかなか今の時代では旧暦に馴染みがない方も多いと思いますが、釣りをしていると釣り用カレンダーや潮汐アプリで旧暦を見かける機会もあるかと思います。

ぜひ旧暦についての理解を深め、釣行に役立ててみてはいかがでしょうか。

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