堤防の上は避難がいちばん遅れる場所だ 9月1日は防災の日

堤防の上は、避難がいちばん遅れる場所だ|9月1日は防災の日、関東大震災から103年

FISHING JAPAN 編集部

堤防の上は、避難がいちばん遅れる場所だ。足場が悪く、荷物が重く、体は沖を向いていて、たいてい一人。逃げる条件が、これほど揃わない場所も珍しい。

9月1日は防災の日である。1960年の閣議了解で創設された。1923年の関東大震災から今年で103年になり、直接のきっかけは前年1959年の伊勢湾台風だった。9月1日という日付が選ばれた背景を、東京消防庁は「9月1日は、関東大震災が発生した日であるとともに、暦の上では二百十日に当たり、台風シーズンを迎える時期でもあり」と説明している。8月30日から9月5日は防災週間にあたる。

年に一度、この日に釣り場のことを考えておきたい。遅れる理由は五つ重なっている。

一つ、足場が悪い。テトラや磯場は、平地の何倍も時間がかかる。二つ、荷物が多い。クーラー、竿、バッグ、タモ。走れる格好ではない。三つ、海に背を向けていない。波打ち際に立って沖を見ているので、退路が視界に入っていない。四つ、単独が多い。誰かが声をかけてくれる前提がない。五つ、風と波の音でスマートフォンの警報が聞こえにくい。

これらは全部、ふだんは何の問題にもならない。問題になるのは、動かなければならない一回だけだ。

だから釣り場に着いたときに、一つだけ済ませておく。荷物を下ろす前に、逃げる方向を一度だけ見る。どちらへ何メートル行けば階段があるか、堤防を降りられるか、高い場所はどちらか。三十秒でいい。多くの沿岸自治体が津波避難マップを公開しているので、初めて行く港なら前の晩に一度開いておくと、その三十秒がもっと短くなる。

そして揺れを感じたときの原則は、拍子抜けするほど単純だ。道具は置いていく。竿もクーラーも、あとで買える。持って走ると、両手がふさがってテトラで転ぶ。

ライフジャケットだけは着たまま逃げていい。というより着たままがいい。走る妨げにならないうえ、万一水に入ったときの浮力になる。

反論もありうる。揺れがすべて津波になるわけではないし、空振りのほうが圧倒的に多い。その通りだ。ただし津波かどうかを、釣り場で判断する方法はない。判断できないことを判断しようとして留まるより、判断しないで動くほうが速い。年に一度、9月1日に思い出しておけば十分な話でもある。

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