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釣り道具は、そのまま防災用品になる|1万円高いライトは、1回67円で働く
防災グッズを一式そろえよう、と言われて素直に買った人は多くない。押し入れの奥に置いた箱を、次に開けるのが三年後だからだ。
だが釣り人には有利な事情がある。必要なものを、すでにほとんど持っている。
ヘッドライトと予備電池。クーラーボックス。ライフジャケット。上下のレインウェア。長靴。ロープ。ハサミとプライヤー。タオル。モバイルバッテリー。停電と断水を想定した持ち物と、ほとんど重なっている。
しかも決定的な違いが一つある。釣り道具は、使われている。防災箱のライトは、いざというときに電池が液漏れしていることがある。釣行のたびに点けているライトにそれは起きない。動くかどうかが毎回確かめられている道具は、それだけで信頼度が違う。
だから買い物の考え方も変わる。防災用に別途そろえるより、いま使っている釣り道具を一段上のグレードにするほうが、結果として備えになる。
実際に割ってみる。1万円高いヘッドライトを買ったとする。年に30回釣りに行き、5年使えば150回。1回あたり67円だ。缶コーヒー半分より安い。同じ1万円を防災用の予備ライトに使えば、5年間の使用回数は0回のまま、電池だけが液漏れしていく。同じ金額が、片方は150回働き、片方は一度も働かない。
選び方は三つ。ヘッドライトは明るさの数字より「連続で何時間点くか」と「雨に当てて平気か」で選ぶ。箱に書かれたIPXという表示が防水の目安で、数が大きいほど水に強い。クーラーボックスは「氷が何日もつか」の表示を見る。氷が長持ちする箱は、断水したときに水を運ぶ容器としてそのまま使える。ライフジャケットは桜マークの付いたものを選ぶ。桜マークは国土交通省の型式承認を受け、検定に合格した小型船舶用の救命胴衣に付く印で、船釣りではこの印の付いたものの着用が義務になっている。
そのうえで、9月1日を入れ替えの日に決めてしまうのがいい。年に一度で足りる。
ヘッドライトの電池を新品にする。自動膨張式ライフジャケットは、メーカーが定めるボンベの交換時期を確認する。レインウェアの防水が落ちていないか水をかけて見る。車のトランクに水と行動食を積み直す。所要三十分ほどだ。
もちろん、釣り道具は防災用品の完全な代わりではない。携帯ラジオ、常備薬、現金、家族との連絡手段の取り決め。これらは釣り道具にはない。足りないものを知るためにも、年に一度は並べてみる価値がある。
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