釣行の写真

[E2F(第7回)]東京湾のサワラキャスティング

隔週刊つり情報編集部

ヨッシーこと吉岡進がルアー釣りを中心に色いろな釣り物を狙い、毎回釣りの楽しさを伝えていく「Enjoy Every Fishing(略してE2F)」。

第7回はキャスティングで狙う東京湾のサワラ。サワラを主体にタチウオやイナダ、シーバスなどが釣れるがとくに今秋はサワラの群れが濃く、例年と比べてサゴシ(サワラの若魚)もよく釣れている。

まだまだ暑さが残る9月下旬に釣行したのは東京湾奥深川吉野屋のサワラ乗合。

高橋郷船長が向かったのは、ベイト(5cm前後のカタクチイワシなど)の反応が多く見られる羽田~浦安沖の水深15~20m前後。

Profile◆よしおか すすむ

1982年生まれ。

ヨッシーの愛称で親しまれている。

一つテンヤマダイ、ライト系オフショアルアーを得意とする。

ジャッカルソルトプロスタッフ、シーガーインストラクター。

ルアーの写真

ヒットルアーはブレードの付いたシングルフックに替えてサワラ用にチューンしたバンブルズジグTG SLJ40g

ポイントに着いてナブラが起きればナブラ撃ちでヒットシーン丸見えのエキサイティングな釣りが楽しめるのだが、この日は時折サワラが跳ねるだけ。

魚探に映るベイトの反応を見付けてドテラ流しで広く探っていく。

午前9時、ヨッシーのロッドが曲がった。ドラグを効かせて巻き続けて船ベリまで寄せ、船長のタモに収まったのは本命サワラ。

その後も底から10m以内で何度かアタリがありヒットしたものの、相次ぐバラシに苦戦する。

フックのサイズを替えたりして対応するヨッシー。

詳しくこのあと!

サワラの釣り方

東京湾のサワラはブレードジグをキャストして着底したら早巻きするのが定番だが、当日のヨッシーのヒットパターンは底からハンドルを10回巻く間に緩急を付けたり、止めたりして変化を付けていた。

釣行の写真

ブレードジグが着底したら早巻きが基本

Enjoy Every Fishing Tackle & Lure guide ヨッシーのサワラキャスティングタックル

ロッドの使い分けはシンキングミノーなどをアクションさせて誘うときはサワラ専用スクランバ。

引き抵抗の大きなブレードジグにはバンブルズ エクストロSLJ。

リールはとにかく早く巻けることが重要。

シマノならXG、ダイワならXHとギア比が高い4000~5000番がおすすめ。

工夫を凝らしたり、テクニックを駆使したり、経験を重ねたり、知恵を絞ったり……。

釣り人は、どうにかして魚との勝負に勝とうとする。

しかしこの勝負、圧倒的に魚が有利だ。

何しろ魚たちは、広大な海を自由に泳ぎ回れるのだ。

魚が「東京湾、だるいな」と思ったら、太平洋を突っ切ってほぼ同緯度のアメリカ・カリフォルニア州ロングビーチに移住することも可能だ(しないだろうけど)。

しかも魚は、潜水艦以上の縦横無尽深度自在の隠密行動が可能だ。

人間は魚群探知機やソナーなどの科学的装備を駆使しながらも、魚の行動を完全には捕捉できない。

それでも釣り人は頑張る。

入念に準備し、足繁く船宿に通い、自分なりの経験を積み重ね、法則性を見つけ、細糸細竿を味方に、どうにか魚に勝とうとする。

そして、なかなか思いどおりにならないからこそ、ズブズブと底なし沼にはまり込んでいく。

中でも東京湾のサワラゲームは、遊泳力が高くて気まぐれなサワラを相手にするだけに、思いどおりにならない度合いが非常に高く、もどかしい。

しかも、苦難と忍耐の先で得られる報酬--サワラは、めちゃくちゃおいしい。

なかなか思いどおりにならないのに、一発逆転でデカイ報酬が得られる可能性がある。

つまり、中毒性が極めて高いのだ。

9月28日早朝。

東京湾奥深川吉野屋の第七吉野丸には、平日にもかかわらず12名の好き者が乗り込んだ。

E2F取材班の姿も見える。

今日、サワラは釣れるのか、釣れないのか。

サワラに勝つのか、負けるのか--。

高橋郷船長を筆頭に、船上のだれもがギラギラしたギャンブラーの目をしていた。

釣り場の写真

釣り場は羽田~浦安沖の水深15~20m前後

釣り方はいたってシンプル ブレードジグを投げて巻くだけ

東京湾のサワラゲームは、ブレードジギングが主流だ。

テールにブレード付きシングルフック(以下ブレードフック)を装着したジグをキャストして、巻く。

基本的にはただそれだけのシンプルな釣法である。

横方向に広く探ることもあれば、垂直方向に攻める場合もある。

状況によって攻略法はまちまちだが、基本路線は「投げて巻く」。

釣りとしては極めて簡単な部類に入るが、主導権は完全にサワラにある。

東京湾狭しと爆泳し、豊富なベイトを追い回しては食い散らかしているサワラ(イメージ)。

小さくて丸く、無表情さがちょっと怖いその目には、イワシを中心としたベイトしか映らない(あくまでもイメージ)。

それに対して我われ釣り人ができることは、40g前後の小さなブレードジグを投げて巻くことだけだ。

あまりに無力ではないか。

……と、思っていたら、羽田沖での釣り開始からわずか15分後の7時35分、左舷胴の間のお客さんが竿を曲げた。

タカハシゴー船長(偶然にも、本誌ライターと漢字違いの同姓同名)がタモを構える。

すんなりと寄ってきたが、船に近付くと反転して力強く暴れ出す。

ネットインしたのは、立派なサワラだった。

その直後に、右ミヨシのお客さんにもヒットするが惜しくもバラシ。

さらに15分後、E2F取材班のイチロウこと鹿島一郎さんにもサワリが出た。

いきなり好反応の連発である。

……おっとぉ……?

……今日は釣れちゃうんじゃないの……?

のんびりムードで始まった釣りだったが、一気に船中のボルテージは高まる。

ギラギラした目がさらにギラつく。

これはルアー乗合船の面白さだ。

だれかが釣ると、みんなが盛り上がる。

「釣られちゃった」という悔しさはない。

「自分にもチャンスがある!」と思えるのだ。

第七吉野丸に乗る12名が、実に気持ちいい運命共同体となる瞬間だ。

水深は約20m。

ジグの着底を確認したら、ダーッと早巻きするだけだ。

ロッドアクションは不要。

そしてリールへの情け容赦も無用だ。

ジャッカルプロスタッフのヨッシーこと吉岡進さんは「リールから煙が出るぐらい」と表現するが、そういう勢いでリールを巻く。

遊泳力が高いサワラだけが着いてこられるように。

「この釣りはクジ引きみたいなものだから」

ダダダダーッとリールを巻きながらヨッシーが笑う。

サワラの気まぐれが、釣り人の工夫やテクニックや経験や知恵をはるかに上回るのだ。

ヨッシーほどの手練れが言うのだから、間違いない。

「……んっ!」

声をあげたのはヨッシーだ。

「今、触った! 巻きがフッと軽くなった直後にズンッと重みが乗ったんだ」

リアにブレードフックを装着したバンブルズジグTG SLJを回収すると、リーダーを入念にチェックする。

「ほら、ザックリやられてる」

8号のフロロカーボンリーダーがささくれ立っている。

サワラの鋭い歯は、まさに脅威だ。

釣行の写真

開始早々に船中1尾目のサワラをキャッチ

だれにでもチャンスがあるがバラシも多くキャッチ率は低い

その後、東京湾は1時間ほど沈黙したが、何がきっかけなのか再びサワラが火花を散らした。

イチロウにアタリが出たのを皮切りに、右トモ、左ミヨシとバラシが連続する。

到来したチャンスをモノにしたのが、右胴の間でジグを投げていたE2F取材班のトモキこと板倉友基さんだ。

「きた&~。なんだろ~」と訝がりながらリールを巻く。

竿は曲がってはいるものの、魚はちっとも走らない。

「ん~?」

船ベリに寄ると、いきなり反転してパワフルに竿を引き絞るドラグ音が轟く。

タカハシゴー船長が撃ち込んだタモに収まったのは、正真正銘サワラだった。

「40gのジグを着底させてから、そんなに早巻きしてたわけじゃないんだけど、いきなりゴゴゴッとアタリが出て~。気が付いたら釣れちゃってました~。えへへ」

ピュアな笑顔がまぶしい。

だれかにヒットすると、バババッとアタリが連続する。

が、そう長くは続かない。

「まだ群れが固まってないみたいッスね。広く薄く魚がいる感じ」とタカハシゴー船長。

続けざまに右胴の間、そして左胴の間でもバラシ。今日のサワラは食いが浅い。

「サゴシ(サワラの若魚)級が多いから、捕食がヘタなんスよ」とタカハシゴー船長が説明するそばから、ヨッシーが「きた!」と叫んだ。

すんなりと寄ってくる。船が近付いて暴れ……ず、スポーンと海面を割って飛び出してきたのは、巨大なエソ。

「最初はサワラかと思ったんだけどな~。えへへ」

すぐ後に右胴の間のお客さんも巨エソを釣った。

さらに右ミヨシでサワラらしき魚がバレた。

その直後、ついにヨッシーが本気ファイトに入った。本命のサワラだ!

「着底から10巻きぐらいしたところでフッと軽くなったんだ。ルアーを食ってきてることが分かったから、そのまま巻き続けたらドン! 最高だね!」

ヨッシーが言うように、サワラのアタリは意外なほど小さいことが多い。

そこでビックリ合わせをしてしまうと、まずバレる。

慌てずに、サワラが反転してしっかりフッキングするまで巻き続けるのが鉄則だ。

基本どおりにしっかりとサワラをフッキングにまで持ち込んだヨッシー、会心の1尾だった。

ポツリポツリとアタリはある。

見逃しは多々あれど、把握できた限りではこんな感じだ。

釣行の写真

投げて巻くだけで釣れるからだれにでもチャンスがある

東京湾でだれもが楽しめる健全なギャンブルとは?

9時15分 右ミヨシのお客さんとトモキがサゴシをキャッチ。

9時20分 ライターのタカハシゴーにアタリ。

9時23分 ヨッシー、バラシ。

9時32分 ヨッシー、バラシ。

9時35分 イチロウ、バラシ。

タカハシゴーに2回のアタリ。

9時36分 ヨッシー、サゴシ級をキャッチ。

右胴の間のお客さんも同サイズをキャッチ。

10時17分 右胴の間のお客さんがサゴシをキャッチ。

10時45分 トモキ、バラシ。

11時00分 ヨッシー、バラシ。

11時20分 ヨッシー、海面バラシ。

タカハシゴーにアタリ。

11時36分 ヨッシー、バラシ。

11時40分 右ミヨシのお客さんがキャッチ。

11時42分 ヨッシー、バラシ。

12時23分 タカハシゴー、シーバスを海面バラシ。

14時05分 ヨッシーとタカハシゴー、ほぼ同時にアタリ。

14時50分 沖揚がり。

だれかがアタリを出すとしばらく続き、パタッと止むことが分かる。

そして終盤にかけてアタリが減ってしまったことも。

この日は大潮で、干潮が10時半。

上げ潮に期待しつつ浦安沖へ移動したが、不発だった。

結局、船中10尾。

E2F取材班は、ヨッシーとトモキが2尾をキャッチし、イチロウとタカハシゴーは0尾に終わった。

「この釣りはクジ引きだから」とヨッシーは繰り返す。

「早巻きの中にポーズを入れて、食わせの間を作ったことがよかった……のかもしれないけど、そうじゃないかも(笑)。はっきりした正解が分からないんだ」

船着き場に戻ってから、ライターのタカハシゴーがタカハシゴー船長に、「釣れる人、釣れない人の差は?」と聞くと、「分かんないんッスよ」と即答だった。

「この釣りに関して言えば、腕の差ってほとんどないんじゃないかと思うんスよね~。確かにアタリが多い人は多いし、出ない人は出ない。でも、今回アタリを出せた人が次回はまったく出せない、なんてこともザラなんスよ。ヨッシーの言うとおりで、正解がないんス。船長としても同じです。昨日大釣りをしたポイントが、今日はすっからかん、なんてこともしょっゅうある。船長のポイント探しもクジ引きみたいなものだし、お客さんが釣れるかどうかも運次第。でも、こういうギャンブル性こそが、サワラ釣りにハマる方が多い理由じゃないスかね……」

やはりこの戦いは圧倒的にサワラが有利で、工夫やテクニックや経験や知恵がなかなか通用せず、神頼みなのだ。

だが、クジ引き、ギャンブルと言われるほど運要素が大きい、

ということは、逆に言えばだれにでもまんべんなくチャンスがある、ということでもある。

次回はタカハシゴー船長操船のもと、ライターであり永遠の初心者・タカハシゴーが10尾釣るかもしれないのだ。

「巻きスピードを変化させてみたり、途中で止めを入れてみたり、ブレードジグの波動もその日の食いに合わせて調整することも必要だけどね……。おれは波動が弱い順にバンブルズジグTG SLJ、ラスパティーン、バイトビーンズと3種類を使い分けてる。ブレードの大きさや形状も波動の大小にかなり影響するから、ブレードサイズは細かく調整するよ。ただ、どれが正解かは本当に分からないんだ。やってみるしかないし、そこが東京湾サワラゲームの面白さなんだけどね」

ヨッシーにサゴシ級1尾をもらったタカハシゴーは、刺身を食し、あまりのうまさに驚いた。

そして「これが自分で釣った魚なら、もっと……」と、次回へ思いを馳せるのだった。

東京湾のサワラゲームは、いくらハマっても一向に構わない、健全なギャンブルなのだ。

釣行の写真

アタリがなくてもあきらめずに巻き続けることが大事

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当日は40~50gのタングステン製ブレードジグでよく釣れた

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今年はサゴシ(サワラ の若魚)もよく釣れる

ヨッシーのメモリアルショット

ヨッシーの取材ではヨッシーを始め、取材班の皆さんがエナジードリンクやチョコ、フルーツなど持ち込んで撮影が一段落するとモグモグタイムに突入。

ヨッシーのお気に入りは鹿島一郎さんが毎回持ってくるチョコレート。

中でもパリパリとした食感がクセになる「紗々(さしゃ)」がお気に入りだ。

船宿インフォメーション

東京湾奥深川 吉野屋

03・3644・3562

◆深川吉野屋のサワラ船は秋から冬にかけての人気メニューで連日盛況。

サワラ船(第七吉野丸)の舵を握る高橋郷船長は東京湾のサワラ釣りを熟知しており、ルアー選びや釣り方などていねいに教えてくれるのでビギナーにもおすすめ。

気さくで親しみやすいから釣りをしていて分からないことがあればなんでも聞いてみよう。

◆備考=予約乗合、7時出船。ルアータチウオ、ライトアジへも出船

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隔週刊つり情報(2023年11月1号)※無断複製・転載禁止

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